40.2
流行病に初めて罹患した。
こんなに日々子どもたちと触れ合ってきて感染リスク1番高いと気をつけてきたけれど、まさかまさかの親戚からもらってしまった。
40℃近い熱を出すと決まっておじいちゃんがエスモール(生まれ故郷にある小さい商業施設、ゲーセンもある)に連れていってくれる夢を見る。となりの駐車場はなんだか斜めっていて、いつ崩れるのか心配になる。
いつもの、革の使い込んだ小銭入れをジャラジャラさせて、お金をくれる。化石を掘るゲームをやる。田舎の訛りでゲラゲラ子どもみたいに遊んでるおじいちゃんと私と弟。長椅子に3人ぎゅっと座って(私は片足はみ出してる)、ひたすらにメダルゲームをする。道中は山道でクラクションを何度も鳴らして猿をビックリさせてみたり、しょうもない話でゲラゲラ笑う。山の麓で絶対におじいちゃんはコカコーラの缶を買う。それと、緑のガムをいつも噛んでいる。その組み合わせの匂いが、未だに鼻腔が覚えている。
眠くなると急に山道の端っこに車を寄せて、みんなでお昼寝。いびきが地響きよりうるさいおじいちゃんのせいで眠れない。ぼんやりした所で急にリクライニングを起こして、行くぞ!と家に帰る。山道に、ワラビ、タラの芽、ワサビ……があると言うけどよく分からなかった。あの頃の私は全部草に見えていた。
そんなおじいちゃんが他界してからもう8年も経つ。明るくてスーパーマンみたいな、足が早くて県大会入賞しちゃうようなおじいちゃん。朝5時にほうきで掃除を始めて、夜はビールちょこっとで真っ赤になってテレビの前で寝るおじいちゃん。
いつも熱の時は励ましに来てくれているのだと思っている。おじいちゃんとの記憶は全部キラキラしている。初めて見るもの触るもの、全てに父ではなくおじいちゃんが居た。
このほろけおんば、と聞こえてきそうなので回想はここまでにしよう。あとおんばじゃなくてめっこい孫だろ。
おじいちゃんの遺影の前にはビール…と、やっぱり缶のコカコーラを置いている。糖尿病だった癖に。空では関係ないから好きなだけ飲んでくれ。しばらく人生楽しんだらお土産話持ってそちらへ向かうから。こっそりパチンコ打ってたのまだおばあちゃんにバラしてないから貸しだからね。
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