VOD配信におけるデジタルマーケティングの今後
こちらの記事は、デンマーク、コペンハーゲンに本社を構える映画、VOD作品のデジタルキャンペーンサービス、プラットフォームを提供するGruviのブログの翻訳(許可済み)をベースに独自に日本の状況も追加してお届けしております。
オリジナル記事
劇場公開作品における新型コロナウイルスの影響
春休みやGW作品のほとんどが、緊急事態宣言およびコロナ蔓延の予断を許さない状況により、公開延期となり、果たして、本当に夏以降、劇場で公開されるのかなんとも心配な状況が続いております。あれも、これも観たかったのに!やむなし。はい、人命、医療、社会第一です。
外出自粛が続く中、月額定額の動画配信がニーズが高まっています。定額サービスの魅力は過去の作品も含め、見切れない作品ラインナップ数ではないでしょうか。
一方、劇場公開を想定していた最新作、公開中の作品などに関して、一部の配給会社では、TVOD (Transactional Video Demand、視聴作品毎に課金されるモデル)に早々に踏み切るケースも出てきました。時間はある!という人も多い中で、定額サービスに加え、最新作をいち早く鑑賞できるTVODにも、今後、需要が発生し、TVOD配信の為のマーケティング手法もより進化していくのではないでしょうか。
GEM Partners株式会社が独自に集計、推計値として発表したデータ見ると、映画館のチケット販売数推計は壊滅的な様子が伺えます。現在、緊急事態宣言が全国に広がっておりますので、GWあけ、状況によってはそれ以降もこの状況が当面続くことを覚悟する必要がありそうです。
VOD先行公開へシフトする映画業界
日本では、3月6日公開の映画『Fukushima 50』が急遽、4月17日より期間限定で有料配信へ踏み切りました。
世界ではユニバーサルやワーナーが公開まもない作品をiTuneやAmazonでのTVOD配信を開始しました。
VOD公開におけるデジタルキャンペーンの課題
劇場公開の際に、SNSやオンライン広告を積極的に活用することで、公開作品に興味を示しそうなオーディエンスのデータを収集、活用している配給会社も多いと思いますが、VOD配信(販売)のキャンペーンに関しても、やはり、作品に興味を示しそうなオーディエンスデータの活用は重要になります。劇場公開時に構築したオーディエンスデータがある場合はそのデータを是非、活用して下さい。もし、これまで、あまりデジタルチャネルを活用してない場合はこの機会に、是非、VOD公開作品の宣伝戦略の中心にデジタル活用を据えて、オーディエンスデータの構築を進めてみてはいかがでしょうか。
ポーランド配給会社、Gutek Film社の事例
2019年カンヌパムドール賞及び2020年アカデミー賞最多4部門を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』や『ミッドサマー』など多くの作品ををポーランドで配給しているGutek FilmがGruviのマーケティングプラットフォームを活用して実施したVOD販売キャンペーンの事例を紹介したいと思います。
概要
配給会社:Gutek Film
作品:『パラサイト 半地下の家族』や『ミッドサマー』など6作品
配信先(TVOD):Cinema.Pl / VOD.Pl(ポーランドのTVOD配信プラットフォーム)
オーディエンスデータ:Gruvi カスタムオーディエンス(劇場公開時に収集したオーディエンスデータなど含む)
チャネル:Facebook (カルーセル広告)、他
期間:2020/3/18から約2週間(全体予算を2つのTVODプラットフォームに均等に配分しパフォーマンスを比較)
結果
(+)キャンペーン全体を通して、平均CVRは26%となり、通常の劇場公開作品キャンペーンの66%の予算で概算で3倍の効果を得ることができました。(チケット料金と配信課金の分配などは考慮していないグロスベース)(+)キャンペーン開始後、5日間に350ユーロ使用して、平均獲得単価0.13ユーロにて、2,596トランズアクション(販売)を記録
(+)キャンペーン開始5日間でCimema.plは3倍、VOD.plは2倍のセールスを記録(2月の連続した5日間との比較)
(-)今後の課題として、VOD側に配給会社(Gutek Film)のトラッキングコードを埋め込むことで、VODに依頼をしなくてもトランズアクション数、販売数がほぼリアルタイムで確認できるので、今後、トラッキングコードの連携が求められることになるでしょう。
結果詳細はオリジナル記事を是非、ご参照ください。
コロナで変わる?ウインドウ戦略
コロナ蔓延による社会危機は、映画のウインドウ戦略(劇場公開が先行し、VOD含む他のプラットフォームで順次どのように配信をしていくかなど)を根底から変えることになるのでしょうか。
仮に夏以降、劇場に映画が戻ってきても、コロナ以前と同じように観客が戻ってくるにはもう少し時間がかかる可能性が高いと業界では懸念されています。
映画やコンテンツを製作、配給する各社は今後は劇場と同じようにVODプラットフォーム上の販売戦略も早い段階で戦略的に検討、実験を続ける必要があるでしょう。
デジタルチャネルを劇場公開作品宣伝と同じように活用し、オーディエンス発掘、リーチからコンバージョンまで、ワンストップで提供するプラットフォームのニーズがますます重要になってくるのではないでしょうか。
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