危機契約と学園アイドルマスターのMV感想
アークナイツ
アークナイツは現在危機契約中。
デイリーミッション200等級も恒常ステージ630等級までクリア。デイリーでもメンズナイツで200等級までやったので暫くお休み。
山海ステージは下に盾兵を置くルートにして、上はトターとパッセンジャーとイーサン、下ルートはマウンテンムリナールで一番下ルートを対応し、盾兵が構えている後ろにエーベンホルツを置いてエリート敵対策。
監獄ステージは1ブロで高火力を出せるオペレーターが適任だと思ったのでチョンユエを。後ろにヘドリーで蓋をしておいて治療はルーメン。囚人の攻撃を止める嫌がらせ要員にアとノーシスのスタン&凍結コンビを設置し、右上の弓兵と術師はマウンテン。ジェッセルトンは超強化しても流せばいいのでさようなら。
恒常ステージはメンズナイツでやれる気がしなかったので高台軸に。最初ホシグマやムリナールを使っていたんだけれど見るルートが滅茶苦茶多かったのと頻繁に崩壊して心が折れた。
高台に設置できる数が限られているので編成を圧縮できるドロシーが核。あとは厄介な種連中対策にイフリータとアルトリアとイネス。ケオベは装甲車担当。多分始めてアークナイツの攻略でゲーム速度[×1]にしてプレイした。二度とやりたくない。
学園アイドルマスター
最近リリースされたアイドルマスターの新作アプリ『学園アイドルマスター』を始めた。思ったよりリリースが早くて面食らったけれど
「ローグライク系のカードゲーム」というのが思いの外楽しく、戦略性がありつつも周回のストレスがあまり無くて繰り返し遊んでる。
そんな学園アイドルマスター、リリースされる前にアイドル全員のソロ曲とMVが公開された。かなり力が入っている力作ぞろいでどれも凄まじいクオリティで、かつ今までアイマスに関わっていなかった有名コンポーザーだらけ。6/10現時点で100万再生している楽曲が6曲、200万再生している楽曲が2曲と既に注目度は抜群。
そんなわけで自分も聞いてみて、特に心に刺さったMVを書いておきたい。
評価基準
ソロMVの評価基準は以下の通り
①楽曲の良さ(歌声、歌詞含む)
②MVの良さ(見栄えとかストーリー性とか)
③プロデュースコミュとのリンク
①は文字通り楽曲、歌声の良さ。学マスアイドルはほぼ全員が新人声優が担当しているらしく、歌声に関しては完全未知数。代わりに楽曲は国内外の有名コンポーザーが担当しており、一定以上の楽曲である保障がされているため、そこに彼女たちの歌声が入った時の化学反応がどうかが気になるところ。
また最初のソロ曲はアイドルの名刺のようなもので、大事な大事な第一印象を決めるものだから、「楽曲からアイドル像が見えてくるか」「一発目の視聴時に刺さるか」も重要なファクターだと考えている。
②MVの良さは①、③にもつながるが、とりわけ「見てて面白い映像か」「ストーリー要素」に注目。
MVといっても千差万別あり、これまでのアイマス作品のMVといえばもっぱら3Dモデルを活用したDANCE&LIPが殆どであった。今回はかなり貴重な形(というよりほぼ初?)でアイドルによってまるっきり異なるものの、アニメ映像的な仕上がりになっており、3Dモデルよりも多様な表現を使うことが出来る。であればこそ、ハイクオリティで見て楽しい作品であるほど嬉しい。極論MVなんて1枚絵に歌詞字幕を付けるだけでも成立するが、余程文字アニメーションやフォントに工夫を凝らさない限り映像としては面白くない。目で見て楽しめるかというのはシンプルながら非常に重要だと思う。
もう一つ挙げたのが「ストーリー要素」。歌詞を踏襲したストーリー・ドラマ仕立てなMVというのも非常によく見られるスタイルで、リアルアイドルやアーティスト、なんならアニメのOPやEDなんかもそう。音楽+映像となればむしろあるのが圧倒的多数(な気がする)だ。
①の中で挙げた「楽曲からアイドル像が見えてくるか」とも重なるが、映像内でのアイドルの動きや演出から読み取れるものは多ければ多いほどいい。ましてやそれがこれから触れるアイドルの個性であれば尚の事。
私が大好きな漫画家・松井優征先生の言葉だが「必要なコスト(時間・労力)に対して内容が濃いと脳が喜ぶ」というのがある。たかが3分、されど3分。カップ麺を作る程度の時間であるけれど、その中で壮大な物語が始まる予感であったり、アイドルの持つ夢への情熱や抱えている問題を垣間見ることが出来ると、ただ可愛く踊っているだけのMVより遥かに満足度が高く、アイドルへの興味も強まると思う。
③の「プロデュースコミュとのリンク」。一部アイドルが顕著だが、意味深な演出や不穏な歌詞がMVにあり、「どういう意味だろう?」とプロデュースするフックになっている。TRUE END後に改めて見ることで「答え合わせ」をすることが出来、感動というかカタルシスというのだろうか、「この歌詞はそういうことだったのか!」「この演出はプロデュースコミュのあの部分だ!」と中々言葉で表現するには難しいが、ただ攻略してエンディングを迎えただけではない快感を脳で感じられた。「予想していたのと違う!?」と意外性があってもまた面白い。
これまた松井優征先生の話で申し訳ないが、初連載作品の「魔人探偵脳噛ネウロ」は至る所に伏線がちりばめられており、通しで読んだときは勿論最初から読み直したときに初見では気が付かない伏線や布石に気が付くことが出来、何度読んでも楽しめる作品だった。
楽曲のMVでも一度見たときに気が付かなかった部分がコミュを通して二週目、三週目として見たとき、①②も合わせて気づきが多いと脳がとても満足し、クリアした達成感も相まって忘れられない体験になると思う。最近の言葉で言えば「脳が焼かれる」経験だろうか。
そういうわけで、実際にMVを見て、TRUE ENDをクリアして、再度MVを見たうえでの自分のMVの評価をまとめる。
あくまで個人的な、大部分が主観に基づく評価なので決して鵜吞みにせず、自分で見たならばその評価を、まだ未視聴・未プレイであれば実際に経験してみることをお勧めする。他人の評価の評価ほど無意味なことは無い。
■『Luna say maybe』 月村手毬
ソロ曲MVで個人的No.1を選ぶならこれ一択。そのくらいすごかった。
月村手毬の『Luna say maybe』。所謂"青の系譜"と呼ばれるポジションで情報解禁から気になっていたアイドルではあったが、楽曲を担当するコンポーザーがあの「美波」さんということで更に期待したのと同時に自分の中でハードルが物凄く高くなっていた。
①の楽曲面について、衝撃だった。自分の中での"美波曲"と言えばガナリを含む力強いボーカルだったり、軽快ながら時には激しいサウンドで心の叫びを表現するものだと思っていたが、とにかくこの楽曲は音の重ね方が尋常じゃない。楽曲の概要欄を見て貰えば分かるように、とんでもないビッグバンドで演奏されている。
音楽の素養がまるでないので素人同然の感想にはなるが、ロックを下時にしながらこれでもかとストリングスやホーンを歌声を殺さんばかりに重ね合わせて、かつ要所要所ではエレキやハンドクラップによる印象的な音の足し引きをする辺り、今までのアイドルマスターには無い音作りをしていると感じた。
これが更に③にも少し重なってくるのだが、月村手毬というアイドルはとにかく不安定で感情の波が激しく一時も目を離せないようなアイドルだ。そんな彼女の心情を代弁するかのように、音がどんどん顔を出してくる。お気に入りはサビの『どうか、正真正銘のこの思いを 聴いて 私、全⾝全霊で歌うから』『君に半信半疑なそぶりして 心 空回り遠回り』の部分とCメロの『震える背中を君に預けて この運命的出会いは』の部分だ。
前者は彼女の歌声をかき消さんとばかりに音の波が押し寄せ、後者は今まで強く主張してこなかったエレキギターの音が彼女の歌声にしっかりと寄り添っている。
1番は歌詞の内容的に彼女がかつて所属していたユニット『SyngUp!』の時の出来事だろうが、2番以降は本編であるプロデューサーとの出会い、そしてラスサビはライブシーンだろう。歌詞と余りに多すぎる音は、1番では同じ夢を追いかけようと誓った『SyngUp!』とのすれ違い・諍いによる荒れていく心を、2番では彼女がプロデューサーとの出会いで自分を変えられるかもしれないという希望と、過去の失敗からまた同じ過ちを繰り返してしまうかもという不安、そしてそれを押し殺して張った虚勢、何も変われていない自分への絶望、それでもあきらめられないアイドルへの夢と極めて複雑な感情にあったと推測される。実際ここら辺はプロデュースして見て欲しいが、自分はTRUE END後に見て一番心に刺さった箇所だ。
そして『震える背中を君に預けて』の部分は非常に分かりやすい。アイドルマスターの伝統として、プロデューサーはアイドルの背中を押してステージに送り出している。②にも重なるがこの部分で月村手毬の背中が映されラスサビではライブシーンへ移行するのだが、直接的に描かれていなくともここでプロデューサーが舞台袖にいてくれるのは間違いないだろう。中等部トップだったとしても未だに不安は確実にある。元々ユニットでメンバーに助けられていた負い目を持っていながら、今度はソロでの初めてのライブだから当然。
でもプロデューサーとの活動を通して、この人には自分を託してもいい、本当の自分を曝け出してもいいと強い信頼を持っているからこそ『震える背中を君に預けて』が出てきたのだろう。
ステージ上では一人でも心の中にはプロデューサーという支えがある。その『運命的出会いは』エレキギターの音で表現されていると自分は解釈した。
そして何より①②③全ての要素を持つのが『あのね。』『あのね、』だ。
歌い出しの箇所、タイプライターで打ち込まれて月村手毬の口から出てきた『あのね。』は句点で区切られ、無数のエフェクターでゆがめられて文字とは認識できない状態になっている。
月村手毬は極めて口下手で、本心とは異なる言葉を出す。理由はリリース前から明かされていたが、他人に対して臆病で怖いから攻撃的になって自分を守るためだという(チワワなんて言われ方をしていた)。
であればこの『あのね。』は誰かに話しを始めようとしたが結局うまく言葉に出来ず、終わってしまったということだろう。1番で中等部のユニット『SyngUp!』の崩壊が示唆されて要るのは前述の通りだが、もしかしたら彼女はあの時、ちゃんと言葉にできていればという後悔があり、それがまた言葉を紡ぐ際の障害となり、エフェクターとして現れている用に思う。
ラストの『あのね、』は読点で終わることからまだ続きがあることを示唆しており、MVでも全てのエフェクターがロックされて真っすぐジャックが伸びていく。その先は分からないが、彼女自身が嘘偽りない言葉を『聴いて欲しいの』だろう。アイドルとしての失敗と挫折、そこからプロデューサーとの出会いを果たして再起し、ライブの成功を通じてようやく自分の言葉に、心に自身を持つことが出来、月村手毬自身の言葉が出てきたのだと思う。
この部分については月村手毬役の小鹿なおさんや、コンポーザーの美波さんも注目して欲しいポイントと挙げているので、是非皆にも見て欲しい。
最後に。
月村手毬は非常に誤解されやすいアイドルだと思う。プロデューサーがプレイして最初に見かけるのはかなり刺々しい口調の手毬だろうし、プロデュースしていくと厄介な問題児であることを実感すると思う。
ただ、
間違いなく「ダメな子」ではあるけど「悪い子」ではなく、
刺々しいのも自分を守る虚勢かつ威嚇であり、
本性は結局のところ甘えん坊で美味しいもの食べていたくて、
本当は毎日のレッスンも嫌で嫌でしょうがない怠け者で、
なのにそんな自分が嫌いで変えたくて、
来る日も来る日も休まず努力もちゃんと続けてきていて、
そうして磨き上げられた歌声は紛うことなき本物で、
信頼している人には良いカッコ見せようと張り切りすぎちゃって、
どこまでもひたむきにアイドルに憧れている、普通の女の子である。
これだけはどうか忘れないで欲しい。
■『光景』 篠澤広
アイドルでありながら病的なまでの細さと、とてもじゃないがアイドルやれるとは思えないか細い声でリリース前から話題になっていた篠澤広のソロ曲は『光景』だ。
単純に自分が彼女に興味を持ったのは「出身:秋田県」であったからで、申し訳ないがコンポーザーの『長谷川白紙』さんは存じ上げておらず、この歌声ではどんな歌であっても難しいんじゃないかと思っていた。
ただ気になったのはコメント欄で見かけた「ブラジル人ですが、ブラジル人が参加していて驚きました」というもの。どういうことだ?と調べると『アルトゥール・ヴェロカイ』という世界的巨匠で、リオデジャネイロパラリンピックにも関わっているという超大物。いったいどんな縁で彼を呼び込んだのか???? 秋田出身の設定だから桜庭和志とかそういう????というクソみたいな理由が浮かびましたが当然関係なく。というより彼が参加しているから楽曲は素晴らしいという判断も愚かしいので一旦頭から切り離す。
『光景』について、これは①の面で言えばボサノヴァ、ブラジリアンジャズ、ラテンジャズといった感じであまりアイドルマスターでは見られないタイプの楽曲(ジャズアレンジ、ボサノヴァアレンジCDはあった)で新鮮な印象を受けた。浮遊感のあるつかみどころのない彼女らしいフワフワした歌声と音で、壮大な楽曲ながら不思議と優しい気持ちになれる楽曲ではあるものの、リズムやメロディが意図的に崩しているのか、弱弱しいボーカルと相まって軸が無いように感じ、特筆するほどではないかなあと思っていた。
2:32までは。
無数に伸びた選択肢のツタの一本のうち、光り輝く先端に広が触れると、現れたのはSSR衣装にもなっている彼女のアイドル衣装。
この瞬間、堰を切ったように怒涛の音が鳴り響く。それと同時にMVでも大暴れ。これは言葉で説明するのが難しいので実際に見てくれという他ないのだが、「アイドルとの出会いが篠澤広に衝撃を与えた」「アイドルの選択肢を選んだ日から怒涛の毎日が始まった」というように解釈した。
③とリンクするが篠澤広は天才だ。身体能力はからっきしだが14歳で既に大学を飛び級合格しており、しかも国内ではなく海外の大学を。無数の選択肢の中に将棋の駒等があるが、彼女が面白そうと挑戦して、その先にツタが伸びずに途切れているのを見るに早々に窮め尽くし、そして満足せずに終わってしまったのだろう。
彼女が求めているのは「刺激」だ。コミュを見ると分かるが、彼女はリリース前にクソみたいな語彙で「ドM」と表現されていたがそんなことは無い。彼女は天才が故に何をやっても張り合いが無く、周りに期待されたことをこなしても"出来てしまう"。周りの期待に応えたところで彼女自身は何も楽しくなかった語っている。
では彼女が出会ったアイドルとはどうか? ここで想像してみて欲しいのだが、アイドルの寿命は何年だろう? かつて日本を席巻したAKB48は今でも毎日のようにテレビで見るだろうか? デビュー1年で紅白出場を果たした欅坂46は今どうなっただろうか? ももいろクローバーZやモーニング娘の現在のメンバーを果たして何人が答えられるだろう。アイドルというものは人気を維持するのは極めて困難で、生半可なことではないというのは、アイドルにさして興味のない人間でも察せられる。
"だからこそ"彼女はアイドルを選んだ。常に不安定で決して安寧が得られない過酷な世界。MVで、アイドルを選択した瞬間、篠澤広の体はバラバラになり、あちこち飛び回り、再構築してはまた散らばるを繰り返している。
"私"が滅茶苦茶になるかもしれない、それこそが篠澤広の理想の世界だ。それを表現したのが『光景』だ。
自分はそう解釈した。
■『Fluorite』有村麻央
カッコいい王子様系アイドルにあこがれる有村麻央のソロ曲。リリース前の話題だと結構強かった印象がある。
コンポーザーは『moe shop』という方で、ごちらも存じ上げないのだがEDMの本場フランス出身のアーティストらしく、EDMというジャンル自体は好きなのでちょっと楽しみにしていた。Aviciiくらいしか知らないけど。
①楽曲について。トップクラスに好きな楽曲だ。ジャンルがどれ(EDM? エレクトロハウス?)なのか分からないが、『繰り返し聞きたくなる楽曲』してかなりの高得点だ。とにかく聞いてて耳が気持ちよくノリノリになれる楽曲というのはそれだけでプレイリストに入れる価値がある。
一応楽曲のジャンルとしてはバラードも好きなのだが、歌い手の感情が壮大なメロディーと合わさって襲い掛かるので、聴く側もそれなりに構える必要がある。超大作映画を見終わってスタッフロールが終わり、落ちていた照明が戻ってきたときふっと思い出したように大きく息をした経験はないだろうか? 気持ちとしてはあんな感じ。面白いけれどもそれなりに体力が必要。
かといって『Fluorite』は内容が薄いかと言われるとそんなことは無い。むしろ最後から最後まで乗り続けられる心地いいリズム、後ろを支える重低音、王道を外さないサビの進行と最後まで外さない。
浅い知識でこねくり回してしまったが、百聞は一見に如かず、ならぬ一聴にしかずだと思うので一度聞いてみて欲しい。
『Fluorite』でメインに語りたいのは歌詞とMVの部分。最初の評価基準で書いたが、これはどういう意図だろう? と思わせる歌詞やシーンが『Fluorite』の各所にある。
まず1番サビ終わりの『怖がらないで見せてよ』の部分だ。
更にこの部分を示唆する歌詞が実は冒頭にあり
『理想とは違う現実濁り出して 大切なものまで見えなくなる前に思い出して』
とある。
TRUE ENDを見てから改めてこの歌詞を見たとき、有村麻央の抱えている問題点を端的に示していると感じた。もう答えを言っているようなものだが、有村麻央は理想を追い求めるばかり現実が見えなくなっており、大切なもの、本当に自分のなりたいもの、理想、本質、その他あらゆるものが見えなくなっている。
しかもこれが結構根深い問題に思う。ただでさえ他のアイドルと比べて聡明で良識があるが故に、一度考えが凝り固まってしまうと中々解きほぐせない。ましてや3年生で卒業を待つのみというタイムリミットすらある。さらに彼女は一度劇団の子役時代での成功を経験しているが故に、そこに縋っているような節もある。極論、理想を抱えたまま死ぬか、否かという状況ですらあるのだ。
彼女は必死で自分の中にある、理想と異なる現実の自分を押し留めようとしている。でもヒビの大きさは既に両手ではどうにもならないくらい大きく、漏れ出る光はそれが徒労であることを示している。
さて麻央はどうなるのか。
2番はシーン毎に見ていきたい。というかスクショ連発するので一旦MV見てきて欲しい。
有村麻央は、もう一人の自分である、可愛らしいお姫様を解き放つことを選んだ。
無理をして必死に必死に抑えつけるのを止めて、受け入れることを選んだ。決別ではなく手を取ることを選んだ。
彼女は自分の抱える問題を解決するために、勇気ある決断をした。
有村麻央は3年生。もう卒業を目前に控えている。
しかし彼女はここにきて、ようやくスタート地点に立てた。
王子様な麻央、お姫様な麻央、いろんな麻央が中にいる。
中に含まれる物質と、差し込む光の波長によって多種多様な輝きを見せる
蛍石(Fluorite)の様に、麻央はこれから沢山の光と輝きをを見せてくれるに違いない。
■『Tame-Lie-One-Step』 紫雲清夏
茶髪、ピアス、腰に巻いたカーディガンともはや教科書通りのギャルである紫雲清夏の楽曲。親友である葛城リーリヤとともに初星学園の門を叩いたものの、レッスンもサボり気味であまりやる気がなさそうに見える……という彼女。
楽曲を含め、彼女は紹介動画からそこかしこに闇が顔を覗かせていた。
『あんたに、あたしの何が分かるの』と怒気を含む声が聞ける紹介PV。
『受け入れたうえで、嘘を付くの』と意味深な言葉を発するかわいい集。
1年以上前から存在し、ある日を境に投稿が止まったインスタアカウント。
普通のギャルアイドルと見せかけて、どこか異質な、不穏な空気を常に纏っているのが紫雲清夏だ。
『Tame-Lie-One-Step』を聞いてみると、2ステップ系の楽曲で、ダンスが得意な彼女らしくリズミカルでノれるタイプの歌だ。曲自体は何度聞いても飽きない曲なのだが、彼女の場合はとにかく歌詞が不穏。
上の評価基準で
と書いたが、ぶっちゃけこれは『Tame-Lie-One-Step』を書くために入れたまである。
歌詞を見ると、明るく陽気なギャルにしては余り似つかわしくない言葉が並ぶ。
『後ろ姿見つけては 諦めるための reason 探してもう最初から Give it up』
『I wanna say 未完成 ただ見てるだけの亡霊』
『報われなかった過去があるから 臆病になったかも?』
『間違いだらけ? 何が幸せ?』
『いつか見た夢 背伸び 伸ばす手 届いたって疲れちゃうな』
所謂ギャル系のアイドルと言えば、ASで言えば星井美希、シンデレラで言えば城ヶ崎美嘉や大槻唯や藤本里奈、ミリオンで言えば所恵美が思い浮かぶが、彼女たちの歌はギャルらしく底抜けに明るく楽しい曲だったり、純情な面をのぞかせる可愛い面だったり、あるいは嫉妬心を覗かせるシリアスな曲だったりはある。
ただ紫雲清夏の場合どれにも当てはまらない。初星学園に入学してこれからだというアイドルの歌に『諦めるための reason~』なんてフレーズが普通入ってくるだろうか? インスタアカウントを見れば必死に猛勉強して、試験をパスするために相応の努力をしていることは明らかだ。
なのに諦める理由を探して、最初からGive it up。直訳で"諦めろ"。
続く『ただ見てるだけの亡霊』。オカルト系のアイドルはいるにはいるが、この場合の亡霊は間違いなく未練を抱えたまま死んでいったことを比喩している。流石に死んだというのは彼女の中で死んだも同然のような状態、放心状態というか前述の諦めから無気力状態にあったことを意味していると思う。
『報われなかった過去があるから 臆病になったかも?』は直球で彼女の過去になにかがあったことを示唆している。彼女は元々バレエで世界に羽ばたいたことのある子なので、恐らくそれ関係だろう。
『間違いだらけ? 何が幸せ?』はここまで来ると説明不要だろう。自分の人生は何が正しくて何が間違いだったのか、何が幸福で何が不幸なのか、曖昧になって苦悩している。
『いつか見た夢 背伸び 伸ばす手 届いたって疲れちゃうな』は最後の最後、サビの直前に来るのでまたニュアンスが多少違うがやはり夢を叶えられそうでも、疲れちゃうというのは夢を追うことそのものに辛さを感じているのかも知れない。
この歌詞を見ただけでも紫雲清夏という存在が気になって気になってしょうがなかった。こんなに明るく楽しげに歌っているのに、本人は毎日を陽気に過ごしているのに、歌詞が余りにも乖離している。是非その耳で聞いてみて、気になったら彼女のプロデュースをしてみて欲しい。
②のMV部分について言うと、余り派手ではないが好きな仕掛けがある。歌詞の部分で散々不穏な部分を取り上げたが、勿論これは紫雲清夏が前向きになって一歩目を踏み出す歌であることに違いない。それを象徴しているのはやはり下のシーンだろう。
そしてもう一つ。サビ直前に毎回表示される演出がある。
順を追っていけば分かるように、コンティニュー画面の文字が変わっている。
『Are You Ready?』- 準備はいいですか?
『Try Again?』 - もう一度やりますか?
『Continue?』 - 続けますか?
ゲームをやったことがある人なら分かるようにコンティニュー画面なんて毎回同じなのが当たり前だ。そこに意図がない限り。
ではこのシーンの意図はなんだろう? と考えた時、紫雲清夏が自問自答しているシーンかなと思った。
準備はいいですか? 初星学園に入学し、プロデューサーがついて、アイドルになる準備は出来ていますか?
もう一度やりますか? 彼女の抱えているものはプロデューサーではどうしようもない問題だ。アイドル活動に置いて非常に重要なダンスの障害になるもの。それでももう一度踊りますか?
続けますか? 挑戦して、もう一度踊ってみて、きっと上手くいかなかった。それでも諦めずに続けますか?
彼女は全てのコンティニュー画面で一度もカーソルを動かすこと無く迷わずYESを選択している。これからも止まらず一歩ずつ進んでいくことを選んでいる。
③のコミュのリンクについて。これがまた面白いくらい楽曲名とリンクしている。
『Tame-Lie-One-Step』は英語で構成されている。One-Stepは今更調べなくても分かるが、Tame-Lieは余り見かけないフレーズだ。そこで翻訳機に掛けてみると『嘘を飼いならす』と出る。この意味は親愛度8で明らかになり、面白いことに紫雲清夏の考える自分らしいアイドル像にも繋がるので是非見て欲しい。
また英語で構成されているがTameは意図的にローマ字読みで"ため"と読まれている。(通常はテイム)。つなげて読むと躊躇いワンステップ。音で聞くと『躊躇いは捨て』とも聴こえる。非常に面白い言葉遊びが仕組まれており、ダブルミーニングにもトリプルミーニングとなり、プロデュースコミュにリンクしていく。
更に繋がる内容があるのだが、学園アイドルマスターで一つの壁となる『プロで評価A+を達成する』ことで見られる親愛度10コミュとかなりリンクしている。しかし条件がTRUE ENDよりも遥かに難易度が高く、多くの場所でネタバレに配慮されているので自分もそれに則り、直接的なものは書かない。
ただキーとなる言葉は全てサビの歌詞にあるので頭に入れておいて欲しい。
『明けない夜を終わらせて』
『今までの私にさよならね』
『これからの私もよろしくね』
以上。
思ったより長くなってしまったので、他のアイドルのは気が向いたら書く。
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