Z/Xストーリー、アクティベート! 第18回 「上柚木綾瀬編7 闇に囚われし復讐者」
皆さん、こんにちは。GRRRです。
今回も綾瀬達の本編での活躍をお話ししていこうと思います。
前回のラストでレヴィーに取り込まれてしまった綾瀬。
世界が生まれ変わった後も、綾瀬はレヴィーの影響下にあり、その結果、彼女は旧世界以上の苦難の道を歩むことになります。
繰り返しになりますが、各キャラのストーリーの大まかな流れは、公式HPのおもな登場人物の軌跡を見ればわかりますので、そちらもご参照ください。
それでは、始まり!
1.絶望の幕開け
綾瀬を取り込み、世界全てを消し去ろうとする嫉妬感情体レヴィーと、そんな彼女を止めるべく立ちはだかった黒崎神門を中心としたゼクス使い達。
彼女達の激しい戦闘の果てに時空の歪みが臨界点に達した結果、世界は新生し、四年前の世界に巻き戻りました。
ブラックポイントが各地に突如として出現し、ゼクス達が現代世界にやってくる直前です。
その世界で綾瀬は、ゼクス達が出現する前までは以前と同じような人生を送っていました。
聡明で善良な両親が惜しみなく与えてくれる愛情。
従妹の双子姉妹である八千代とさくらとの交流。
幼少期の飛鳥との出会いと彼とのラッキースケベに巻き込まれつつも少しずつ仲良くなっていった遠き日の思い出。
ミッション系の小中学校でクラス委員として忙しく過ごす日々――。
そんなありふれた、しかしかけがえのない幸せの日々はまたしても――そして、以前よりも最悪の形で失われてしまいます。
ある日、家族旅行も兼ねて、奈良の遺跡の調査をする父親のもとに母親と共にやってきた綾瀬。
綾瀬達が奈良に滞在を始めてから数日後、奈良と和歌山の県境に白の世界のブラックポイントが出現。
そこから何人かの巨大な鎧を纏った異形の人類――ガーディアン達が出てきました。
ガーディアン達はそのまま周囲を巡回し始めます(おそらくは現代世界の様子の偵察のため)が、特に現代世界の住人達に危害を加える様子はありませんでした。
ですが、その異形の姿を見た現代人達は少なからず恐怖を抱き、それは綾瀬も同じでした。
その結果、惨劇が起きてしまいます。
まず遺跡の調査を行っていた綾瀬の父親と彼を迎えに行った綾瀬の母親が、突如起こった遺跡の崩落に巻き込まれて行方不明となってしまいます。
遺跡の崩落の原因は(この時は)不明でしたが、両親が生死不明になったことで半狂乱となった綾瀬は突然現れた巨人達――ガーディアン達が遺跡を破壊してしまったのではないかと考えます。
綾瀬がそんな考えに支配され、暗い感情を募らせていくと、突如、ガーディアン達が本当に暴れだしてしまいます。
理性を失い、〝嫉妬に駆られた獣のように〟狂って同士討ちを始めたガーディアン達の戦いによって、綾瀬達がいた村は遺跡諸共崩壊。
ガーディアン達はもちろん、多数の現代人達も犠牲となり、この事件は後に新世界における白の世界唯一の汚点とされる大惨事、「発掘村事件」と称されることになります。
ガーディアン達が激しい争いを繰り広げる中、綾瀬もまた憎しみに満ちた眼差しで狂乱する彼らを睨んでいました。
そんな中、他のガーディアン達からサー・ガルマータと呼ばれた一人のガーディアンが彼女に向かって突進してきました。
唯一正気のままと思しき彼を、綾瀬は憎しみに狂った思考のまま、両親が死んだ原因と思い込みます。
やがて、憎悪と嫉妬の思考に支配された綾瀬の精神は限界が来てしまい、気絶。
次に綾瀬が目を覚ました時、彼女は病院のベッドの上に横たわっており、そこで彼女が滞在していた村が壊滅し、両親も恐らく死亡してしまったと(おそらくは医者か自身の祖母から)告げられます。
両親の死に絶望する綾瀬は、そのまま旧世界同様に父形の祖母に引き取られました――が、その後の展開はまたしても旧世界とは異なっていました。
自身を引き取ってくれた祖母に対し、綾瀬は感謝の気持ちを持つ一方で、次第に厳格な教育方針をとる彼女に対して反発心を強めていきます。
そして――ある日、綾瀬は大きな屋敷で一人きりで過ごしていました。
誰かと一緒に過ごしていたような感覚はありましたが、それが誰だったのかがどれだけ考えても思い出せません。
明らかな異常事態でしたが、それ以上に綾瀬は最愛の両親がいなくなった孤独感に苛まれます。
どうして自分だけが孤独なんだろう。
どうして自分だけが幸せになれないんだろう。
どうして自分だけが将来の夢を思い描けないんだろう。
虚無感に支配され、己の境遇に絶望した綾瀬は、ブラックポイントが出現した二年後、京都の屋敷を離れ、横浜にある自身の生家を目指しました。
新世界では黒の世界のブラックポイントが関東の大半を呑み込むほどの巨大さとなっており、彼女の実家も消滅している可能性が高いことは彼女自身も理解していました。
旧世界以上の勢いで荒れ狂う黒の世界のゼクス達のテリトリーと化したことから、関東周辺が進入禁止の危険地帯と化していることも。
ですが、それでも綾瀬は最愛の両親との思い出に縋るために歩き続けました。
その道中で、黒の世界のゼクスに殺されるならそれでも構わないと考えながら――。
2.契約者との再会
しかし、どういうわけか綾瀬がどれだけ黒の世界のブラックポイントに近づこうと黒の世界のゼクスは出現せず、彼女はブラックポイントに到達してしまいます。
その事実を不思議に思うこともなく、綾瀬は黒の世界のブラックポイントに突入しますが、濃密な黒の世界のリソースに心身を蝕まれて倒れてしまいました。
綾瀬が朦朧としていると、人間より大きな何かが彼女に近づいてきました。
力を振り絞ってそちらに目を向けると、そこにいたのは豪華な装飾を身に着けた巨大な漆黒の豹。
遂に自身の目の前に現れた黒の世界のゼクスに、綾瀬は反射的に嘆願します。
「私を殺して……」
ですが、ズィーガーと名乗ったそのゼクスの返答はあまりに意外なものでした。
しかも、そんな素っ気ない言葉とは裏腹に、ズィーガーは綾瀬を背中に乗せると、そのままブラックポイントを脱出し、綾瀬を安全な場所まで運んでくれました。
そして、彼の背に乗って運ばれる中で、綾瀬の腕に今まで存在しなかった謎の道具――リング・デバイスが出現しました。
ブラックポイントから離れたことで、リソースの浸食から回復した綾瀬は改めて自分を見下ろすズィーガーを見つめます。
獰猛な顔立ち、鋭い爪と牙、見るからに凶悪そうな武装の数々。
彼が並のゼクスよりも遥かに強力な存在であることは、綾瀬にも直感的に理解できました。
――彼の力を借りれば、両親の仇のあのガーディアンを殺すこともできるのでは?
そんな言葉が綾瀬の脳裏に浮かんだ瞬間、彼女の心の中で強い復讐心が燃え上がりました。
綾瀬が自身のそんな思いを素直に伝えると、ズィーガーは一瞬、考え込んだ後、「ヒマ潰しに付き合ってやンよ」と返してくれました。
かくして、パートナーゼクスを手に入れた――あるいは再会した――綾瀬は近畿圏に帰還。
そして彼女は、己の憎悪の導くままに、手当たり次第にガーディアン達を襲い始めます。
あの事件の当時、精神が限界寸前だった綾瀬は自身を止めようとしたガーディアン――ガルマータの顔をはっきりと覚えていなかったのです。
綾瀬の行動は極端すぎる気もしますが、おそらくは自分の家族の死の原因となったガーディアンという種族全体を憎んでいたから、という理由も含まれていると思われます。
旧世界で《天使殺し》と呼ばれていた頃、自分の家族の仇であるガムビエルだけでなく、彼女に従って現代世界の住人を殺戮した他の天使達にも強い殺意を抱いていた時と同じというわけです。
尤も、根本的な原因は後述するある存在のせいなのでしょうが……。
一方で、綾瀬自身、どこか自身の憎悪に違和感があったのか、彼女達の襲撃から生き残ったガーディアン達は彼女のことを「迷いが見て取れる」とも評してもいました。
黒豹のプレデターを連れた少女のゼクス使いによって次々とガーディアン達が襲撃され、そのうちの何名かが惨殺されるという事件は瞬く間に白の世界や近畿圏の住人達の間に広まりました。
積極的に現代世界の住人達を守っていたことから、白の世界のゼクス達への信頼感は大きなものだったのですが、そんな彼らを害する存在の出現は、白の世界のゼクス達のみならず、現代世界の住人達にとっても恐怖の象徴だったようです。
いつしか綾瀬達は旧世界と似たような異名――《守護者殺し(ガーディアン・キラー)》と称されて恐れられるようになりました。
そんな世間の様子を気に留めることもなく、綾瀬はズィーガーと共にガーディアン達を襲い続け、やがてガルマータの直属の部下のゼクス、ケィツゥーを発見。
彼女からガルマータの居場所を聞き出そうと攻撃を仕掛けますが、あと一歩のところで逃げ切られてしまいます。
綾瀬は一度取り逃がしたケィツゥーの行方を追い、しばらくの探索の末に彼女の居場所を突き止め、そこへ向かいました。
ですが、そこにはケィツゥーのみならず、彼女のパートナーとなった元アイドルのゼクス使い、弓弦羽ミサキの姿がありました。
綾瀬はミサキの顔を見た瞬間、奇妙な既視感を覚えます。
彼女と会うのはこれが初めて。そのはずなのに――。
さらにケィツゥーがガルマータの無実を訴えると、綾瀬は強烈な頭痛と吐き気に襲われます。
突如の綾瀬の異変を心配するズィーガーと共に、彼女は捨て台詞を残してミサキたちの前から立ち去らざるを得ませんでした。
さて、一方、世間では当初は相争っていた赤の世界・青の世界・白の世界・緑の世界が互いに矛を収めて協力しあうことを約束。
四世界議会が発足されました。
四世界議会はすべてを敵に回して荒れ狂う黒の世界への対処を最優先としつつも、各世界の問題も協力して解決することを取り決めていたことから、現在、白の世界の領域を騒がしている《守護者殺し》を指名手配します。
結果、それまでガーディアン達を襲う側だった綾瀬達は逆に他のゼクス達から襲われる立場となってしまいました。
そんな中、綾瀬とズィーガーは不意に旧世界での記憶を思い出します。
凄まじい量の情報を思い出し、意識が混濁しつつも、旧世界と新世界の違い――綾瀬の両親の死亡した経緯やズィーガーとの出会いの違い、そして飛鳥と出会ってないことなど――を認識する中、綾瀬はさらなる恐るべきことに気づきます。
自分の中で蠢く、自分ではない自分の存在を。
3.軋むココロ
嫉妬顕現体レヴィー。
旧世界にて綾瀬を取り込むも、神門達の妨害によって消耗し、世界の破滅に失敗した彼女は、枢要大罪レヴィアタンを依り代として新世界に顕現した後、密かに綾瀬の心の中に潜り込んでいたのでした。
レヴィーはあらゆる時空で不幸な結末を迎えた綾瀬の嫉妬心が星界という世界で集まった結果、誕生した存在です。
再録された「セカイを穿つ〇の△撃」サイクルにてレヴィーの中に集積された各色の未来の世界で綾瀬が辿り着くバッドエンドの様子が窺えます。
赤と青は両親、白と黒は飛鳥、緑は八千代とさくらに関連した内容になっていますね。
そのように不幸な結末を迎えた綾瀬の想いが蓄積されたレヴィーは、様々な事件や脅威を乗り越えて融和の道を進みつつあった世界――本編の旧世界の存在を知ると、嫉妬に狂いました。
平穏な道を歩み始めた世界を怨み、何よりも自分と同じ存在でありながら一人の少女としての幸せを手に入れようとした綾瀬を彼女は憎み、嫉妬したのでした。
だからこそ、彼女は旧世界にて真っ先に綾瀬を襲撃し、彼女に負の感情を注ぎ込んだうえで取り込んだのです。
そして、新世界にて綾瀬に取り憑いたレヴィーは世界に向けて嫉妬感情を放って、負の感情を高めることで自身の力を取り戻そうとしていました。
新世界で黒の世界が過剰に敵視されるのもそれが理由です。
実際、現代世界の人々やゼクス達の嫉妬心や敵意が膨れ上がりつつあるのを感じ取っている人物達もいます。
旧世界で綾瀬が共に行動したこともあるこちらの魔人もその一人。
実際、新世界となってから、異常に強大となった黒の世界の脅威もあり、レヴィーの目論見は成功し、世界中で強まる負の感情を吸収することで彼女は力を取り戻しつつありました。
旧世界をも上回る嫉妬心を集めたら、世界を全て消滅させる――。
綾瀬の心中でレヴィーはそう宣言します。
一方、レヴィーの存在に気づいた綾瀬は愕然とします。
旧世界での飛鳥達との交流やニーナ達との二度の決闘。
それらを経て、綾瀬は復讐者としての生き方に区切りをつけた――はずでした。
それでもなお、彼女の心の中にはなおも嫉妬心や復讐心が残っていたのです。
動揺する綾瀬に対し、レヴィーはさらに残酷な真実を告げます。
この世界で綾瀬の両親が死亡する原因となった遺跡の崩落。
あれは綾瀬自身が無意識のうちに放った不可視の斬撃――虚のさざなみが原因なのだと。
さらにはその直後に起きたガーディアンの暴走も綾瀬が爆発させた嫉妬感情によって精神が汚染されたから。
そして、ガーディアン達の暴走によって村も遺跡も完全に壊滅し、綾瀬の両親は死亡してしまった――。
あの惨劇、発掘村事件が起きたのは全部全部綾瀬のせい。
そうレヴィーは嘯き、嘲笑します。
実際、綾瀬が無意識のうちに虚のさざなみを放っていた場面は他にも多々あり、反発心から自身の祖母を消し去ってしまった(綾瀬が気づいたら京都の屋敷で一人暮らしをしていたのはこのためです)他、黒の世界のブラックポイントに向かっている際にも自身に近づく黒の世界のゼクス達をことごとく消滅させていたそうです。
しかし、前者に関してはこれまたレヴィーが綾瀬に悪意を吹き込んだのが原因という可能性もありますが……。
レヴィーが悪意と嫉妬を込めて伝えた真実に綾瀬は絶望します。
最愛の両親が死んだ――いえ、殺してしまったのは自分だった。
しかも、何の罪もないガーディアン達を暴走させて惨劇を引き起こし、その後も身勝手な勘違いからは何人ものガーディアンを手にかけて――。
前世の《天使殺し》として多くの天使を傷つけ、殺してきた記憶と合わせて、綾瀬は自身の罪深さに打ちのめされます。
一方、同じく旧世界の記憶を取り戻し、レヴィーの存在を知ったズィーガーも少なからず動揺します。
闘争本能のままに他者を殺すことに躊躇いはないズィーガーですが、それがレヴィーの思惑通りというのは彼にとっては面白くない事実でした。
なにせもともとは黒の世界で魔人達の見世物にされていた事を屈辱に思い、そんな状況を変えるために自身に覚悟を示した綾瀬の契約に乗ったのですから。
ですが、現状に苛立ちを覚えても精神体となって綾瀬に取り憑いているレヴィーを排除する力がズィーガーにはありませんでした。
最悪の時――完全に綾瀬がレヴィーに乗っ取られるようなことがあれば、今度こそかつての契約通りに俺様がお前を殺す――。
ズィーガーは苦々しい思いと共に綾瀬にそう告げました。
無遠慮な、けれど自身のことをちゃんと理解してくれているパートナーゼクスの言葉に、どうにか綾瀬は落ち着きを取り戻します。
レヴィーの悪意によって絶望の淵に立たされた綾瀬にとって、ズィーガーの存在が唯一の心の支えでした。
ですが、時間が経つにつれてレヴィーはどんどん力を取り戻し、いずれは綾瀬を再び取り込んで復活することは目に見えていました。
ズィーガーに契約を果たしてもらう時は、そう遠くないかもしれない。
そう綾瀬が考えていると、突如、彼女達の前に白の世界のゼクス達の一団が立ち塞がります。
ばらばらの種族で構成されたその一団はギルド"暁"と名乗ると、《守護者殺し》である綾瀬達を討伐すると宣言し、その手の武器を綾瀬達に突きつけました。
これよりしばらく前、四大天聖の座をガムビエルに譲ったガブリエルが、腕利きのギルドとして名を知られていた"暁"に、《守護者殺し》の討滅クエストを依頼。
そのクエストを受注した彼女達はさっそく、《守護者殺し》――綾瀬達の捜索を始め、その末に彼女達を発見したのでした。
余談になりますが、白の世界でギルドシステムが作られたのは旧世界の終盤だったのですが、新世界に様々な想いや絆が持ち越された結果、こちらのシステムも前倒しして作られたようです。
自分達を倒すべく現れたゼクス達の一団にズィーガーは興味をそそられましたが、綾瀬の状態がまともでないこともあり、戦いを楽しむような気にはなれませんでした。
それ以上に深刻だったのが綾瀬で、ギルド“暁”に自身の罪を糾弾されても、それに言い返すことはできませんでした。
なにせ、レヴィーに悪意を吹き込まれたとはいえ、ガーディアン達を見つけては容赦なく攻撃し、殺害してきたのは綾瀬なのですから。
ギルド“暁”の面々も綾瀬達の様子がおかしいことに気づいたようですが、それでも彼女達を捨て置けないと攻撃を始めます。
一方、これ以上、誰かを傷つけるつもりのない綾瀬は逃走を決意。
綾瀬の選択に頷いたズィーガーは五体(うち一名がセイクリッドビーストと共に戦う人間の少女なので若干語弊がありますが)のゼクスで構成されたチームによる、止めどない連続攻撃をいなしつつ、綾瀬と共に戦場を離脱しました。
当然、ギルド“暁”は追撃してきましたが、綾瀬達はそれもどうにか振り切ることに成功します。
――自身の破滅を予感し、罪深い己の死を望みながらも、逃走による生存を選ぶ自分の矛盾に悩みながら。
4.時空を超えた再会
ギルド“暁”の追撃から逃げた末に綾瀬達が辿り着いたのは、大阪城の公園前の広場。
旧世界では魔人と化した大和、憤怒の神祖の魔人サタンが一時的に居城とし、後に彼の圧倒的な力によって破壊されてしまった大阪城でしたが、時間が巻き戻り新世界になったことで、元のたたずまいを取り戻していました。
また、この時は大阪では珍しく積雪があり、広場にはうっすらと雪が積もっていました。
綾瀬が広場にあるベンチの一つに座って息を整えていると、誰かが自分達に近づいてきました。
彼女がそちらの方へと視線をやると、一人のガーディアンがゼクス使いと思しき男性と共にこちらへと近づいてくるのが見えました。
ですが、綾瀬達はそのガーディアンの気配が今まで自分が襲ってきた者達と異なること、そして、身に覚えのある気配を纏っていることに気づきます。
そして、ゼクス使いの青年が見覚えのありすぎる人物であることにも。
天王寺飛鳥。
綾瀬にとっては旧世界で初めて戦いで敗北した相手であり、その後も何かと因縁のあった相手――そして、心のどこかで再会を待ち望んでいた人物です。
ならば、彼の隣にいるガーディアンの正体は――。
ズィーガーもまたガーディアン、いいえ、ガーディアンの振りをしている人物の正体に気づきました。
クソ天使の匂いがする、とズィーガーが指摘すると、そのゼクスはまばゆい光を放って本来の姿――純白のドレスに身を包んだ天使の姿に戻りました。
誇りのフィエリテ。
綾瀬達と同時期に旧世界の記憶を思い出した飛鳥達は、レヴィーに取り込まれた綾瀬を心配して彼女の行方を追っていたのでした。
フィエリテがガーディアンの振りをしていたのも、《守護者殺し》である綾瀬を誘い出すためのものです。
互いに旧世界のことを覚えていることを確認すると、早速、飛鳥が本題――レヴィーについての話を切り出してきました。
自分を救えるつもりなのか、と冷たく飛鳥を睨みつけつつも、綾瀬は彼らにこの世界で自分が何をしてしまったのかを説明します。
自らの両親すら虚のさざなみに巻き込み、多くの罪なきガーディアン達を襲った罪深き過去を。
罪悪感に押しつぶされ、自分は人として終わっていると自嘲する綾瀬。
飛鳥は綾瀬の自虐的な考えは否定しつつも、罪は贖わなければいけない、とも考えており、新世界でのガムビエルについて言及しています。
旧世界では綾瀬の両親をはじめ、多くの命を奪うも、綾瀬達に討ち果たされてからは善良な存在へと転生し、罪を償うことを誓った彼女は、新世界では立派な四大天聖となった。
そうフィエリテから聞かされた綾瀬は、今更ながら旧世界終盤のガムビエル――ガムビエルちゃんの気持ちがわかったと呆然と呟きます。
ですが、今の綾瀬にはかつてのガムビエルちゃんのように生きて過去の償いをするような気力は起きませんでした。
もしレヴィーに完全に乗っ取られてしまったら、今度こそズィーガーにかつての誓いを果たしてもらう――。
不服そうなズィーガーにもたれかかりながら綾瀬が力なく呟くと、飛鳥とフィエリテが綾瀬の手を取りました。
冷え切った細い指と手の平を包む彼らの温かさとまっすぐな言葉――今度こそ綾瀬ちゃんを助けに来た――に頬を赤らめて動揺しつつも、綾瀬は彼らの手を振り払います。
自分が今も生きているのは自分ごとレヴィーを封印するような方法を探すため、と説明します。
自分達を封印する当てがないなら、やはり自分が死ぬしかない――そう言いかけた綾瀬の言葉を飛鳥が遮り、自分に考えがあると切り出します。
綾瀬は飛鳥の考えを聞こう――としたところで、自分の中で不穏な何かが蠢くのを察します。
それがなんなのかを察した綾瀬が、飛鳥達に警告を与えた直後、虚のさざなみが飛鳥達を襲いました。
突然の攻撃に、さすがに飛鳥達も驚いたものの、綾瀬が詳しく説明するまでもなく彼らもすぐに状況を察しました。
果たして、飛鳥の怒号に応えるようにレヴィーが姿を現し、綾瀬を後ろから抱きしめて、全てを嗤いながら、呪詛を振りまきます。
綾瀬を解放しろ、という飛鳥の訴えを無視して、レヴィーは旧世界での最後の戦い――黒崎神門を始めとした青の世界に訪れていたゼクス使い達との決戦を思い出して忌々し気に吐き捨てました。
彼らに力を削られなければ、簡単にセカイを壊せたのに、と。
休息が終わったら今度こそセカイを滅ぼす。
そう言って、レヴィーは消え去りました。
最後に飛鳥とフィエリテを悪意のこもった視線で睨んでから――。
残された綾瀬は、改めて自分がレヴィーに憑依されている状態について飛鳥達に説明します。
レヴィーは自身に憑依しており、時折、先ほどのように姿を見せるものの、普段は完全に気配を消していること。
一方で、レヴィーが姿を消している間は憑依対象である綾瀬とある程度、切り離された状態となり、その間は綾瀬達の行動や言動を察することができないこと。
しかし、レヴィーがその気になれば簡単に綾瀬の体のコントロールを奪えること。
そして、徐々にレヴィーが姿を現す頻度が増えつつあること――。
もう残された時間は少ない。
そうズィーガーが告げると、飛鳥は綾瀬から嫉妬心をなくせばレヴィーを追い出せるのではないか、と言い出します。
あまりに気楽な発想、といぶかしみながらも、綾瀬は飛鳥に自分の嫉妬心をなくすための具体的な案があるのかと問いかけます。
すると、飛鳥は満面の笑みを浮かべてこう言いました。
「綾瀬ちゃん。僕とデートしよか!」
「…………は?」
5.次回に続きます
ここまででだいたい第44弾から第47弾までの綾瀬の物語です。
レヴィーの悪意に振り回され、新世界でかつて以上の血塗られた道を歩む羽目になった綾瀬。
ですが、そんな彼女にまたしても飛鳥達が手を差し伸べてくれました。
飛鳥達との再会の果てに待つ結末は果たして――
――いえ、その結末は、もう明かされていますね。
綾瀬と飛鳥が主役の物語、『嫉妬のBADEND』は既に公式ホームページで公開されており、完結済みです。
詳しく内容を知りたい方はこちらをご覧ください。
上記の通り、既に公式ホームページに綾瀬達の詳細な物語が記載されているので、自分がまとめる必要はあまりないかもしれませんが、それでも次回は嫉妬のBADENDの内容をnoteでまとめようと思います。
それではまた次回!
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