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懲戒解雇に伴う退職金の全額不支給。最高裁は適法と判決【弁護士 解説】

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、「懲戒解雇に伴う退職金全額不支給 最高裁は適法」というお話をしたいと思います。

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懲戒解雇に伴う退職金全額不支給は適法判決!

懲戒解雇に伴う退職金全額不支給を適法とする最高裁判決が出ました。以前もご説明したとおり、最高裁の判決は非常に重いものであり法律と同じような効力があります。ですので、今回はこの判決について少しご紹介させていただきます。

サラリーマンの方などは退職金というものがあり、退職時には多額の退職金がもらえるかと思います。では、そもそもなぜ退職金はあるのでしょうか。
退職金にはさまざまな性質がありますが、まずは勤続報償の意味合いがあります。これは長く勤めてもらったことによるボーナス的な面です。また、賃金の後払い的な性格もあります。本来であればその場で渡すべきである賃金を少しずつ積み立てておいて退職時にまとめて支払うわけです。さらに退職後の生活保障としての性質があります。

退職不支給の問題点

では、たとえば従業員が何かしらの懲戒規定にかかわるようなことをしてしまい、懲戒解雇つまりクビになってしまった場合に退職金の不支給はできるのでしょうか。
勤続に対するボーナス的な意味合いだけであれば「懲戒解雇になるようなことをしたんだから退職金は全額不支給だ!」としても問題がないように思えます。しかし、退職金には賃金の後払い的な性格もあるため、「もらえていたはずのものを積み立てていたのだから全額不支給はおかしい!」ともいえるわけです。

今回の事例はどのようなものだったのかというと、公立学校の教師である公務員が飲酒運転による自損事故を起こしました。これに対し懲戒免職処分および退職手当はすべて支給しないとする処分が下されましたが、退職手当全額不支給はおかしいということで訴えたわけです。
これに対し最高裁判決では「本件支給制限処分は、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したものとはいえず、適法」とされました。結論としては、「全額不支給でも仕方がないよね」ということです。

今回のケースでは原告の起こした事故の態様の悪質性がポイントとなりました。社会的にも厳しくなっている飲酒運転による事故であった点に加えて公立学校の教師という公務員の立場からその信頼や公務の遂行への影響が指摘されました。これらのことから社会通念上、裁量権の範囲を逸脱したものとはいえないとしたわけです。

民間企業の場合も一緒?

では、公務員ではなく民間企業の場合はどうなるのでしょうか。懲戒解雇になったからといって退職金全額不支給にできるのかというと、民間企業の場合はもう少し厳しいかと思います。やはり退職金には賃金の後払い的な性格や功労報償的性格があります。とくに賃金の後払い的な性格の場合、本来は支払わなければいけなかったことを考えると、永年の功労を抹消するほどに重大な事由があったかどうかがポイントとなります。犯罪行為や他人に物理的な損害を被らせた場合などがない限り、全額不支給は難しいかと思います。

ただ、いずれにしても全額不支給を決定するだけの重大な事由があれば適法だと最高裁が判決を出したことはかなり意味があるので、この点は覚えておいていただきたいと思います。

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