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転勤を拒否した社員が敗訴。転勤拒否と懲戒解雇【解説】

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、転勤を拒否した社員が敗訴。転勤拒否と懲戒解雇というお話をしたいと思います。

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転勤拒否で解雇っていいの?

NECの子会社の元社員が会社の転勤命令を拒否した結果、解雇されたのは違法だという事で、解雇無効確認を求めていた訴訟がありました。事案としては、社員の男性が会社から関東への転勤を命じられ、転勤できないのであれば希望退職をするようにと言われました。その男性は持病を抱える子どもがいるため、転勤する事はできないと拒否したところ懲戒解雇されました。これに対して男性が解雇の強談として会社を訴えたというものです。こういったケースはよくあります。転勤命令をしたけれど、家族の事情など色々な事情で転勤を拒否した場合に、転勤できないのであれば解雇ですという事案はこれまでにも結構たくさんありますが、これはどうなのかというお話です。

転勤拒否の解雇は有効

今回の裁判例では、男性側が敗訴したので解雇は有効となったわけですが、転勤によって懲戒解雇になる場合として次のようなケースがあげられます。例えば、入社時に勤務地限定がない。そして、就業規則にも転勤命令OKという規則がある。また、頻繁に配転命令が出されていた。つまり、その人を狙い撃ちというわけではなく、大企業などはそうですが普通に転勤が行われていた。これらの場合、会社は労働者の同意なく転勤命令が出せるという風に裁判所は解釈をしています。会社の権利として転勤命令が出せるという事を前提として、
①業務上必要がない場合、②不当な動機である場合、③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合、つまり労働者側に我慢できる程度を著しく超える不利益がある場合ではない限りは解雇権濫用とはならない、解雇は有効だというのが裁判所の見解です。例えば、誰かをいじめる目的の場合や、反抗をしてきた社員に対して狙い撃ちをするという場合は不当な動機となります。また、特に配転する必要がないのに飛ばすという意味合いや、転勤させる事によってあまりにも不利益が生じるという場合以外は原則、解雇は有効だという事です。

最高裁の判断もある

今回のケースでは、家族の持病があるじゃないかと思われるかもしれません。これが通常甘受すべき程度の云々にあたるのではないかというところですが、長男の持病を考慮しても通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるとはいえないとされました。最高裁判例があり、家族を理由としているものについては、基本は解雇権濫用とはいえないとされています。裁判所の論理としては先ほどお話した通り、そもそも入社する時に勤務地の限定もないし、転勤命令があるという事は分かっていたはずだという事です。それを分かった上で入社したのであれば、拒否してはいけないでしょうというのが基本的なスタンスになります。
不当な目的がない限りは解雇権濫用にはならない、というところについてはぜひ注意をしていただければと思います。

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