マウスパッドの中間層の違いとオススメ
こんにちは、現在ガラスマウスパッドと布マウスパッドの開発、研究を進めております代表の織衛です。
現在弊社では布マウスパッドの研究開発を行っており、それによって得た知見と感覚をお伝えするため、この記事を執筆しております。
今回は布マウスパッドの中間層と現在のオススメを話していこうと思います。
なお、今回の記事で数値上のデータなどは取り扱わず、筆者本人の感想や
開発元が出している資料を参考にしてお話していきます。
前提
今回の比較検討する中間層の種類と何を比較していくかのお話をします。
サーフェスについては今回生産を委託予定である工場にある最もコントロールタイプの表面を選んでいただきました。
すべての中間層に同じサーフェスを採用しております。
また、硬度については各素材で最も柔らかいものを指定
中間層リスト(全4種)硬度測定 TypeA統一 全4mm採用
NR(天然ゴム)硬度21
Slim Flex 旧Poron (マイクロセルポリマーシート) 硬度21
TXW(正式名称不明)炭素繊維配合発泡ポリマーシート 硬度21
SCR(低温環境対応ウレタンゴム)硬度36
比較リスト
採用コスト
性能
滑走感覚
NR(天然ゴム)
まず一番最初は言わずとしれたNR(天然ゴム)の解説を行います。
おそらく、最もオーソドックスで最もマウスパッドの中間層素材に採用された材質だと思われます。
代表されるマウスパッドは様々ですが
QcK Heavy
Vaxee PA
G640
などが挙げられます。製造の際の問題点(不均一性など)の研究も進められ現代では有用な1つの素材だと思われます。
硫化の際に使う硫黄の量により弾力性を調整でき、添加剤でその性質を変えることのできる比較的、自由度の高い製品です。
採用コスト
採用コストとしてはSlim Flex、TXWより安く、SCRより多少高いといった
イメージとなります。
性能
添加剤の発達や製造方法の確立などにより、場合によってはSlim Flex、TXWと同等の性能、品質を発揮する場合もありますが、工場や製法により品質のバラつきが起こりやすいものでもあるため手放しで良いと言えるものではないと思われます。
また、布との相性は他の素材と比べても選ばずとも良い傾向にあります。
滑走感覚
今回はNRを比較対象として置きます。
Slim Flex、TXWと比べると滑走速度は早く感じます。
沈み込みも2種と比べると硬いが反発力は強いです。
総評
マウスパッドを作る場合には比較的安価で手軽に、様々な硬度のものが作れると思われますが、研究が進んでいることから製造に対しての知識量も必要な素材となります。
(中の人は高校化学からゴムのことを学び直してます。)
Slim Flex 旧Poron
(マイクロセルポリマーシート)
2つ目は国産マウスパッド、様々なFPS世界大会でも採用実績がトップレベルのArtisanが採用したことにより様々なメーカーが採用し始めた
Slim Flex 旧Poron(マイクロセルポリマーシート)の解説となります。
※この記事内では『Slim Flex』と呼び方を統一します。
Slim Flexは2003年にイノアックから開発生産、販売が開始されたマイクロセルウレタンシートとなります。
(開発生産自体はもう少し前からかもです…イノアック企業情報参照)
4Gamerのインタビュー記事曰く2010年頃より目をつけていたようですね。
個人的には零「橙」が発表され、販売された辺りからSlim Flexという素材に注目が集まったイメージです。
採用コスト
ぶっちぎりで高いです。
現在私の会社で開発を検討しているマウスパッドの中でもぶっちぎりで採用コストが高い素材となっております。
NRやSCRのコストの約2~3倍ほどです。
性能
総合評価的には採用コストに見合うほどの性能をしています。
厚み精度、低圧縮残留歪、高シール性、高エネルギー吸収、さらに素材配合によって様々な仕様に対応できる柔軟性
確かにコスト無視で高価格帯のマウスパッドを作れるなら私も採用します。
滑走感覚
NRよりも沈み込みが大きく早くブレーキ感が強まります。
TXWと比べるとあまり違いが感じられないが沈み込みからの復元がTXWよりも早く安定している。
総評
Artisanが採用したことによりマウスパッドの一大素材へと有名になったイノアック社のSlim Flex。
性能も他の素材と比べても群を抜いて高性能です。
また、現状イノアック社が管理販売していると思われるため、品質も一定に保たれ、比較的手放しでもマウスパッド品質のブレが発生しづらい傾向にあります。
ただ、やはりコストが段違いに高いので高価格帯マウスパッド以外での採用はかなり難しいところです。
また、その性質上フラットパッケージ以外の採用が難しいため、パッケージコストも上昇します。
TXW(正式名称不明)
炭素繊維配合発泡ポリマーシート
ここ最近、中国でSlim Flexの代わりに採用が多く見られるようになった素材です。
底面がカーボン調で中国製の場合高確率でTXWだと思われます。
正式名称等はあまり筆者も把握できておらず工場の話を参考にしてお伝えしていきます。
(ここだけかなり内容が薄いです…あと内容も間違いがあるかも)
採用コスト
Slim Flexより比較的に安価でNRやSCRより高価な素材となります。
性能
柔軟性はSlim Flexと同等でありますが圧縮残留歪、高シール性などは多少劣ると思われます。
しかしながら安価で性能が似ている以上、Slim Flexの代替案として検討する価値は大いにあります。
滑走感覚
基本的にSlim Flexと同じですが4mm厚での机の底打ち感が強く感じる。
ブレーキ感はSlim Flexより上だと思われます。
総評
TXWはその性質上Slim Flexが対抗馬となるため、ユーザーにとってはかなり厳しい意見の素材になる可能性がありますが、これはこれで良い製品ができるため採用する価値のある素材となります。
しかしながらSlim Flex同様にロールパッケージの採用がかなり難しい(巻き癖など)ためその分のコストが引き上がります。
SCR(クロロプレン)
ここ最近マウスパッドに採用され始めたSCRベース
正式にはCR(クロロプレンゴム)とSBR(スチレンブタジエンゴム)の混合したものがSCRと呼ばれます。
SCRは主に潜水服、サーフスーツ、手袋やスポーツおよび医学の保護付属品等によく採用されるゴム系の製品となっております。
代表作は
Wraith Esports Spirit of Aim
Musashi Void V2
が挙げられます。
採用コスト
前述したTXW、Slim Flexと比べると安価な製品となります。
NRが対抗馬として挙げられると思われます。
性能
潜水服やサーフスーツなどで採用されていることもあり、耐久性はかなりあります。
しかしながら、現状のSCRベースは硬くマウスパッドの素材としてはサーフェスに採用される布を選ぶ製品となります。
SCRと噛み合った素材でできたマウスパッドであれば、安価で高品質なマウスパッドになることが多いです。代表作はSpirit of Aim Hybridモデルがそれに該当します。
サイズアップにより底面のグリップが少なくなるのが現在の課題かと思われます。
滑走感覚
硬度がほかよりも硬いため、他3種よりもブレーキ感がなく、コントロールタイプがバランスタイプに近づくと感じるため採用は見送るレベル。
同じサーフェスでも全く違った印象を受ける中間層である。
総評
SCRはその性質上硬い中間層になることが多く、それに伴い表面の素材選びによって粗悪品にも良品にもなる難しい素材であります。
安易に安いからと言って開発に採用する製品ではなく、SCRを使いたいという断固たる意志がない場合は採用を見送っても良い製品だと思われます。
しかしながら、噛み合った際の製品はかなり良いものができるため、研究が進み、潜在性能が発揮されれば、かなり安価で良い製品が出来上がります。
全体総評
今回はNR、Slim Flex、TXW、SCRの比較した記事を執筆しましたが、私個人の意見をあげるとすると
中間層に採用された素材だけでそのマウスパッドの一時的評価をするのは意味のないことだと感じました。
ボトムの滑り止めについてもSlim Flexと比べるとたしかに弱いと感じるものもありますが、それでも通常使用には問題がなく、正直印象操作されているなと言う感じです。
また、採用する布によって中間層も使い分けることが大切なのだと気付かされる比較検討だったと私は思います。
そのうち、オフラインイベントが開催されて参加できたときにこのサンプルを展示できたら良いなと思います。
(6月のゲバザで忘れてなければ持っていこうかな)
それではまた気が向いたときに記事を投稿するかもしれません。
良いゲームライフを~