PTAの会議の全会一致主義に反対。
PTAの決議は「全会一致」じゃなきゃダメ? 〜ビジネス感覚を取り入れる重要性〜
最近、PTAの会議に参加していると、「全員が賛成するまで保留」「なんとなく反対している人を納得させるまで休憩できない」といった光景をよく目にする。周りを気遣うのは大切なことだが、時間がかかるうえに、本当に納得して合意したのかどうか疑わしいケースも多い。まるで子ども同士のケンカで「とりあえず“ごめんね”と言っておきなさい」とやらされる光景を連想させることさえある。
今回は、こうしたPTAの「決議の取り方」について、ビジネス感覚を取り入れることの重要性を考えてみたい。限られた時間と人的リソースで成果を出すにはどうすべきか。まずは結論を箇条書きにまとめたので、ざっとご覧いただきたい。
この記事の結論(ポイント)
全会一致は理想であって、必須ではない
「なぜ反対しているのか」を論理的に整理し、必要に応じて切り捨てるリーダーシップが必要
リーダー(会長・副会長)こそが最終的な方向性を示し、決断を下す
一見“熱心”に見える説得行為も、場合によっては組織の停滞を招くリスクがある
1. PTA会議の「全員賛成」至上主義
PTAの運営では、役員や担当者が独断で決めるより、皆で話し合って決議を取ることが多い。ただし、多数決が行われる場面でも「全員が賛成しないと進めない」という暗黙が事実上の前提になっているケースを見る。
背景の多様性
PTAは保護者も先生も、年齢も職業も考え方もまちまちだ。全員が同じ温度感や意識レベルで議論に臨んでいるわけではない。これだけ背景がバラバラだと、意見が完全に一致するほうが不自然に思える。そもそも、特に公立小中学校だと「住んでいるところが近いだけ」という理由で集められており、親の収入や偏差値・価値観や地元への想い、子供への投資額などが全く違う。「全会一致」に固執すると何が起こるか
反対意見を持つ人が現れたら、会長や副会長が延々と説得し続ける。その話を聞いている周囲は「そろそろ終わらないかな」と思い始める。結局、意見が平行線をたどる中、「あなたが折れてくれないと話が進まない」「もう時間もないから、いい加減にして」といった空気感が漂う。
すると、反対していた人は渋々「じゃあ賛成に回ります」と言う。会長・副会長としては「これで全会一致!」となり、めでたしめでたし…という形だけの合意で終わってしまう。形骸化した合意は、結局は不満や不信感を残す
子ども同士のケンカを無理やり仲直りさせる「大人の都合」と同様、「とりあえず賛成しろ」と迫るのは、後でしこりを残しやすい。「なんだか納得いかないけど、周りに迷惑かけるのも悪いし…」という感覚のまま本当に賛成したとは言いづらい。大抵の場合は委員会内に持ち帰って「いやー。あれは無い」みたいな愚痴を言っている。
2. なぜ「全員賛成」にこだわるのか
全会一致で決まれば、一見「皆ハッピー」で良いように思える。しかし、PTAのように多種多様な人が集まる組織で、全員が本当の意味で賛成することはあまり現実的ではない。
「協力してくれる人」を大事にしたい気持ち
PTAはボランティア要素が強い活動だ。そのため、関わってくれる人を大切にしたい、嫌な思いをさせたくないという気持ちはよくわかる。しかし、その善意が結果として「いち意見がすべてを止める権限を持つ」という歪な構造を生む危険性もある。「やりすぎる説得」が組織を動かなくする
説得には多大な労力と時間が必要だ。しかも、完全に納得してもらえる保証はない。リーダー層が必要以上に粘って説得し続けると、会議が進まないどころか他の案件の時間も削られ、本来やるべき作業がおろそかになる可能性もある。
3. ビジネス感覚を取り入れるメリット
では、ビジネス感覚を取り入れるとはどういうことか。企業の会議やプロジェクト運営では、「全会一致」にこだわりすぎず、最終的な責任者が方向性を決めることが多い。これはPTAにも応用可能な考え方だ。
ただ間違えてはいけないのは、【「独裁をしろ」「少数を問答無用で全部切り捨てろ」ではない】という点。
反対意見の「理由」をまずは整理する
説得が必要な場合でも、「どこが不安なのか」「何が理解できていないのか」を明確にするだけで議論は進めやすくなる。表面的に賛成を強いるのではなく、論点を洗い出してから「この部分は説明不足でしたね」「ここは予算の範囲外なので難しいです」と、一つずつ対処する。最終決断は責任者が行う
会社であればプロジェクトマネージャーや部署の長が決断するように、PTAなら会長・副会長が最終責任を持つしかない。「意見を切り捨てる」というと聞こえが悪いが、反対意見を吟味しても組織全体にメリットが薄ければ、思い切ってゴーサインを出す決断力が必要だ。反対意見の人を必要以上に説得しない
「全会一致」を理想とするのも大事だが、それよりも「大多数が納得できるのであれば進める」という判断も必要。どうしても納得しない人は一定数出るものだが、だからといって全体が止まるよりはマシだと考えるのがビジネスでの常套手段でもある。
「反対意見を拒否すると協力してくれなくなる」と思いがちだが、実際は
反対意見を受け入れると賛成側の協力を失う
反対を説得して賛成に回してもどのみち協力は得られない
ことの方が多い。どこまでいっても「どっちを取るか」でしか無い。
また、ある時拒否したら「前回は我慢してもらったので今回は受け入れます」というようなバランスの取り方もありだろう。(ずっと否定だと完全離脱されますからね。)
4. 決定権の所在が明確になると起こる良い変化
意思決定が早くなる
会長や副会長が「決断は任せてもらう」と宣言し、かつその役割をしっかり果たしていれば、会議で迷走することが減る。組織内のモチベーション向上
人によっては「強引な決め方は嫌だ」と思うかもしれない。だが、一方で「無駄な会議が長引いて帰れない」「進捗ゼロでストレスが溜まる」状態はもっと嫌だと感じる人も多い。適切にリーダーが舵を取ってくれることで、ほかのメンバーは自分の作業に集中できるようになる。柔軟な運営がしやすくなる
「PTAってこうあるべき」という固定観念が強いと、全会一致至上主義に陥りやすい。しかし、ビジネス感覚を取り入れることで「できる範囲で最適解を探り、ダメなら次の案に切り替える」柔軟性を持ちやすくなる。
5. 全会一致が真に機能するケースは?
全会一致がまったく意味をなさないわけではない。参加者のバックグラウンドが似通っていたり、ある程度の方針に共感できる人たちだけで構成されている場合は、スムーズな合意形成が期待できる。しかし、多様な保護者が関わるPTAでは、その前提がすでに成り立たないケースが多い。
意思疎通がしやすい少人数のタスク
たとえば、広報委員会や会計担当など、少数精鋭で動くチーム内では全会一致を取り入れても時間がかからず、メンバー同士の信頼関係が高まるメリットがある。主旨やビジョンを共有できている場合
「このイベントは子どもたちの安全のために必要だよね」という大前提が全員の共通認識として揺るぎないなら、自然と全会一致に近い形で決まることもある。
6. おわりに
PTAはあくまで「ボランティア要素の強い活動」だが、だからこそ無責任に引き伸ばされる会議や形だけの合意は、関わる人たち全員を疲弊させる原因にもなる。リーダーである会長・副会長が、ビジネス感覚を持ち込み、議論のポイントを論理的に整理しながら素早い決断を下せる体制をつくることが何より重要だ。
全員が納得できないなら進められない → この思考を一度リセットしてみる
本当に気遣うべき相手は誰か? → 長引く会議で疲弊している大多数か、それとも納得できない少数意見か
反対意見を拾いつつも決断はリーダーが行う → 結果を受け入れてもらうためには、普段からコミュニケーションを工夫する
PTAが「決められない組織」になるのは、とても惜しいことだ。子どもたちのための行事や活動を活性化させるには、速やかな意思決定と行動が欠かせない。全会一致を理想とするのではなく、合意形成のプロセスを改善し、リーダーが責任を持って舵を取る仕組みを再検討してみてほしい。そうすることで、より効率的に、かつ納得感のあるPTA活動が実現できるはずだ。