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フィットネス業界へ進出

新しい職場はフィットネス業界で、日本でグループフィットネスプログラムを販売していた外国企業に入社した。

もともと、販売代理店を通じて日本で展開していたブランドだったが、代理店ビジネスの不振により、そのブランドは顧客からの支持を失いかけていた。

顧客の中には、代理店の評判の悪さからブランドを手放す動きも出ていた。

そのため、会社は代理店契約を解約し、日本市場に直接参入するというスタートアップ的な試みを開始したのだ。

私が入社した時の営業チームはまだ1人しかおらず、あと2名の営業を募集していた。私はその一人に選ばれた。

当時、従業員は20名にも満たない小規模な会社だったが、もともとそのブランドに関わっていたメンバーが代理店から転職してきていたため、会社はある程度回っていた。

私がこの会社を選んだのは、何と言っても採用時のジェネラルマネージャーの人柄と仕事力に魅了されたからだ。

ニュージーランド出身の彼は、非常に優れた経営手腕を持ちながらも、社員一人ひとりを大切にするケアの仕方が見事だった。

日本ではこうしたバランスを取れる経営者は非常に稀で、数字にこだわるあまり、社員を顧みない上司が多い。

結果が出ているうちは外部からも「うまくいっている」と評価されるが、実際に働く社員たちは、心身ともに消耗していることが少なくない。

そのGMは、シンプルで分かりやすい指示を与え、時には仕事の楽しさも教えてくれた。

例えば、金曜日には4時からハッピーアワーが始まり、オフィスでお酒を飲みながらリラックスして週末を迎える。

彼は「今を楽しむことが大事だ」と言い、仕事が終わっていなくても「月曜にやればいい」と笑顔で言ってくれる。

それが彼の仕事哲学であり、私も非常に好感を抱いた。

しかし、良いことは続かないもので、そのGMは私が入社した翌月末には退職することが決まっていた。

彼が退職することは知らされており、新しいGMもすでに採用されていた。

しかし、その新しいGMは、まったく仕事ができない人物だった。日本市場を理解しておらず、顧客とのコミュニケーションも苦手だったため、営業に同行させても顧客は困惑し、次第に信頼を失っていった。

元GMも彼の無能さに呆れ、ついには社員に愚痴をこぼすほどだった。

やがて元GMが退職し、新GMが陣頭指揮を執ることになったが、ここから事態はさらに悪化した。

新GMは、小さな会社にもかかわらずレイオフを開始し、まずは派遣社員を切り始めた。

派遣会社を通さずに直接本人に契約更新はしないと伝えるなど、非常に不適切な対応が続いた。

その後、グローバルチームから有能な社員が日本に派遣されたが、新GMはその彼女を帰国させ、監視役を排除した。

次に、ターゲットになったのは私たち営業チームとマーケティング部門だった。

新GMの能力のなさに業を煮やしたグローバルの営業統括副社長が、日本で顧問を務めていた人物に身辺調査を依頼し、私たちはその調査に協力することになった。

私とマーケティングの女性社員が中心となり、彼のミスコンダクトを報告するための書類をまとめ、顧問に提出した。

副社長は激怒し、GMと顧問をそれぞれ1対1で面談させた。

面談後、数日して本国から人事部長が来日し、GMの処遇が決まることとなった。

ところが、驚いたことに、会社の判断は「GMは被害者であり、彼を貶めようとしたチームが悪い」という結論だった。

私たちは、本部の指示に従って行動しただけだったが、結局、集団でGMを追い出そうとしたとされ、私たちが悪者にされてしまったのだ。

 その後、営業部長として新たにGMの前職で部下だった人物が入社した。

彼は私たちに解雇の話を持ちかけるようになり、まずはマーケティングの女性社員がターゲットにされた。

彼女は、突然会議室に呼び出され、「本日をもってオフィスに来てはならない」という通達を受け、そのまま帰宅を命じられた。

そして、次にターゲットになったのは私だった。

営業チームではアカウントのシャッフルが行われ、私の担当していた大きなアカウントは他の営業に割り振られ、私は小さなアカウントのみを担当することになった。

さらに、毎週の1対1のミーティングで解雇を迫られ、パフォーマンスが低いという理由でPIP(業績改善計画)を発動されることになった。

PIPでは、6つの厳しい条件が課され、それをクリアしなければ解雇というプレッシャーがかけられた。

私は必死に働き、土日も休まずにフィットネスジムへ100件の電話をかけ、何とか1件のアポイントを取ることに成功した。

3ヶ月間、そのノルマをクリアするために努力を重ね、最終的には3つの条件を達成したものの、依然として解雇を迫られ続けた。

しかし、パフォーマンスが上がっている以上、すぐに解雇とはいかず、さらに3ヶ月の様子見という形になった。

その後、営業部長が体調を崩して3ヶ月間休職し、GMが部長の業務を兼任することになった。

その間、私たちは少しだけ心理的に楽になったが、部長が復帰してから再び圧力がかかるようになった。

だが、彼は1か月も経たないうちに退職し、その後、GMが再び指揮を執ることとなった。

私がようやく営業から異動して新しい部署での仕事を始めることが決まったとき、突然人事から「給与が10%下がる」という通知を受けた。

話が違うと抗議したが、結局、営業に戻ることもできず、辞めるしかない状況に追い込まれた。

さらに、GMが退職するという通達が出され、彼もまた会社を去ることになった。

こうして、私の新しい職場での波乱に満ちた経験は幕を閉じた。

外部から見れば、すべては単なる組織の変化に過ぎないかもしれないが、内部にいた私たちにとっては、まさに戦いの日々だった。

そして、結局のところ、最も大きな問題は、トップに立つ人間がどれだけ会社や社員を大切にできるかにかかっていることを痛感した。

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