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善悪の二元論を超える視点──『DD(どっちもどっち)論』

複雑な世界への新しいアプローチ

『DD(どっちもどっち)論』は、現代社会で頻発する複雑な問題を、単純な善悪の二元論で片付けるのではなく、対立する両者の「善」を見つめ直す視点を提案する一冊です。本書を通じて、「正義」を振りかざして対立を煽る社会の風潮や、問題解決が進まない根本的な理由を深く考えさせられました。

著者は、善悪を二分する思考が人間の本能的な傾向であると指摘し、その限界を明らかにします。特に、DD的な視点を持つことがいかに重要であるかを、具体的な事例や国際問題を通じて示している点が非常に印象的でした。


印象に残ったポイント

1. 「善悪二元論」の危険性

善悪を簡単に二分する思考は、脳のエネルギー消費を最小化するために発達した本能的な仕組みです。しかし、現代社会が抱える問題は単純な構図では捉えきれない複雑さを持っています。本書では、ウクライナやガザなどの国際問題を例に挙げ、双方が「正義」を主張する状況では、善悪の二元論が対立をさらに深刻化させることを指摘しています。この視点は、私たちが情報を消費する際に必要な「冷静さ」を思い出させてくれます。

2. DD的思考の重要性

DD(どっちもどっち)とは、両者の言い分や立場を理解し、単純に片方が「悪」だと決めつけない視点を指します。例えば、SNSでの論争やメディアの報道が対立を煽りがちな中、本書の提案するDD的思考は、問題を冷静かつ客観的に捉えるための有効な手段として響きました。

3. 「正義」の誘惑とその裏側

本書では、特定の立場が「正義」を掲げることで、逆に対立や分断を深めるケースが多いことが描かれています。例えば、「紙の保険証残せ」という主張に隠されたエセ正義の構図や、「地獄とは、他人だ」とする皇族の結婚騒動の例は、私たちが正義と感じるものを鵜呑みにせず、背景を探る視点の重要性を教えてくれました。

4. よりよい未来を考える視点

Part3以降では、社会の未来をより良くするために必要な視点が示されます。若者が「苦しまずに自殺する権利」を求める国の事例や、SNSがもたらした「地獄」の現実は、現代の社会問題を考える上で避けては通れないトピックです。特に、「SNSはみんなが望んだ地獄」という一節には、便利さを追求した結果生まれた弊害への考察が深く詰まっていました。


感想と学び

『DD(どっちもどっち)論』は、社会問題を単純な善悪の枠組みで片付けるのではなく、多様な視点から捉える重要性を教えてくれる一冊です。本書を読んで感じたのは、現代社会の複雑さに真正面から向き合うためには、冷静さと柔軟な思考が不可欠であるということです。

特に印象的だったのは、「正義」を過信することで、逆に視野を狭めてしまう危険性への警鐘です。SNSやメディアにおいて「正しい情報」を消費しているつもりでも、その背景にある複雑な事情や対立を理解する努力を怠れば、対立を助長するだけで終わる可能性が高いと気づきました。

本書を通じて、問題に向き合うときに「どちらかが100%正しい」という結論を出すのではなく、「両者の立場を理解し、対話の余地を見出す」姿勢を持つことが大切だと感じました。個人の日常から国際的な問題まで、この思考法を活かせる場面は多岐にわたると実感しました。


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