目指すはスタートアップマーケター版「トキワ荘」。完全招待制コミュニティー「GrowthHub」始動。
事業成長をリードするマーケターを輩出していきたい──そんな想いのもと、マーケターとして事業成長に向き合ってきた山代真啓と大前宏輔の2人が共同発起人となり、新たな完全招待制コミュニティを立ち上げました。その名も「Growth Hub」。
プレイブックがない環境でも事業をグロースさせるノウハウやマインドを伝えるべく、半年間で合計7つのセッションを開催。また、スタートアップでグロースを担う、35歳以下の若手マーケターたちが交流できる場も用意します。
「ロールモデルとなる存在がいたから、今の自分がいる」と語る山代と大前。なぜ、Growth Hubを立ち上げることにしたのでしょうか。このコミュニティに懸ける想いを聞きました。
「ロールモデルいない問題」を解決し、学びを得る場をつくりたい
──Growth Hubを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。
大前:僕自身がマーケターのキャリアを積んでいく過程で、山代さんがロールモデルのような存在になってくれたことは、すごくポジティブな出来事のひとつでした。メルペイで一緒に働いた2年間でさまざまなことを教えてもらえましたし、僕がYOUTRUSTのCMOを務めていたときも定期的に1on1をしてもらっていました。これまでのキャリアを振り返ってみても、山代さんがいなければ今の僕はいなかったなと思います。
一方で、僕はある意味ラッキーだったなと思っていて。スタートアップで働くマーケターの方々を見ていると、ロールモデルと言えるような人が周りにおらず、学びを得る機会や場所がなかなかないんですよね。それが成長を阻害する要因になってしまい、結果的にスタートアップが思ったように事業成長せずに終わってしまうことも多くあります。
社内にロールモデルがおらず、事業成長に関する知見やノウハウが得づらい。こうした課題にアプローチする場として、Growth Hubのようなものが必要だと思ったんです。
山代:ロールモデルという点では、僕も上司に恵まれたキャリアを歩んできました。新卒で入社したP&Gでは長谷川晋さん(MOON-X代表)や中筋雅彦さん(ファーストリテイリング グループ執行役員)からマーケティングに関するさまざまな知識を学びました。その後、メルカリでは小泉文明さん(取締役 President)、メルペイでは青柳直樹さん(newmo代表取締役CEO)のもとでグロースに関して学ぶことができました。
ただ、スタートアップに行って同じような知見や経験が得られるかと言われたら、やっぱりそれは難しい現状があります。ひと通りのマーケティングや事業成長を経験した上でCMO(最高マーケティング責任者)を担っている人はまだまだ少ない。スタートアップではマーケティング責任者に“CMO”という肩書きがついていることがほとんどだと思います。
やっぱりマーケティングや事業成長を経験した人たちからしか学べないこともある。僕自身、事業のグロースを支援する「Growth Camp」を立ち上げ、スタートアップの若手マーケターと仕事をする中で、マインドセットや知見、ノウハウをインプットしたことでスキルが大きく成長し、事業グロースに直接的に貢献していく姿を目撃したんです。彼らは急成長スタートアップの屋台骨を支えるメンバーとして頑張っています。この経験から、良いタイミングに仮想の上司のような人と出会うと、とんでもない可能性が生まれるのではないかと思ったんです。
また、大前さんがYOUTRUSTにいた頃に「すごい研修」という企画に出演させていただいたことがあるのですが、その企画がすごく評判が良くて。
僕自身、独立後は直接的な部下の育成などから少し離れていたのですが、そういった経験を通して「次の世代の育成」もやっていかなければいけないな、という考えが強くなっていきました。そんなタイミングで大前さんがYOUTRUSTから独立したので、「一緒にコミュニティや育成の場をつくろう」という話になり、Growth Hubを立ち上げました。
事業成長を志してる人たちに、「グロース」の知見を授ける
──スタートアップを取り巻く環境も変化しており、事業を成長させるためのマーケティングの難易度が上がっているように感じます。
山代:目的がないまま資金を投下するといったことは許されなくなってきてますよね。1円がどれだけ事業の成長につながっているかはシビアに見られるようになっている。
マーケティング部門だけで完結するというよりかは、BtoB事業であればセールスといかに連携するか、BtoC事業であればPMといかに連携するかが求められています。狭義のマーケティングにとどまっていると、おそらくROI(投資対効果)が合わない。
「事業成長をどうつくるか」という視点で他の部署と連携していくマインドを持っていないと、求められているROIにはヒットしていかないと思うんです。そういう意味では、どんどん高度になっていますし、事業家マインドが求められるようになっています。だからこそ、僕らはマーケティングと呼んでおらず、一貫して「グロース」と呼んでいます。Growth Hubには事業成長を志してる人たちに集まってもらいたいと思っています。
大前:バジェットがたくさんあると、実は選択肢って限られてくるんです。「数億円を使っていい」となったら、人気のタレントを使ってテレビCMを実施すればいいという考えになると思います。一方、バジェットがあまりない場合はいろんなHowを組み合わせて、グロースに導くための手段を考えていかなければなりません。
豊富なバジェットがないスタートアップ特有の難しさがあると思っているので、Growth Hubで何かひとつでも事業成長のヒントになるものが提供できたらと思っています。
山代:大きくグロースする前のタイミングだからこそ、何か良質なインプットがあれば事業の成長角度を変えるきっかけが生み出せるんじゃないかと思っています。
だからこそ、事業成長のヒントになりそうな情報を提供するべく、僕たちも半年かけてコンテンツの企画案を考えました。事業成長の角度が変えられる一手みたいなものは、合計8回のセッションの中から見出せるんじゃないかなと思っています。
スタートアップマーケティング版の“トキワ荘”を目指したい
──Growth Hubをどういった場にしていきたいですか。
山代:10年続けたいなと思っています。第1期、第2期、第3期というかたちで10年続けていったら、きっとコミュニティは300〜400人規模になっているはずです。Growth Hubを卒業していったグロース人材が会社の役員になっていたり、起業したりしていたら、すごく良いですね。そういう良い循環が生み出せる場にしていけたらいいなと思います。
あと面白いのは僕が今年40歳で、大前さんが35歳。そしてGrowth Hubの受講者の平均年齢は30歳で5歳ずつ間隔が空いているんですよね。すごく良いバランスと言いますか。僕に相談しづらいことも大前さんになら相談しやすいかもしれない。
大前:僕はメルペイのマーケティングマネージャーやYOUTRUSTのCMOを務めてきましたが、マーケターとして語れることってそんなに多くないと思っています。でも、僕みたいな人が共同発起人として、こういった場を立ち上げる意義はあると思っていて。やっぱり現場に近いからこそ、事業成長に向けた課題感などが分かりやすい。
書籍を出版しなければ、育成できないわけでもない。若手のマーケターと比較的年齢が近い僕だからこそできる育成の場というのもあると思っています。そういう意味で、より現場の課題感を解決できるようなセッションや交流の場などをつくっていきたいです。
山代:横のつながりをつくると、お互いに“ライバル心”も芽生えやすいじゃないですか。「あいつにできたんだから、俺にもできるはずだ」みたいな。こういう健全な競争心ってすごく大事だと思うんですよね。大学の同級生であるANRIの佐俣アンリさんのPodcast『ハートに火をつけろ』にラクスル代表取締役会長・ジョーシス代表取締役社長の松本恭攝さんが出演されていた回ですごく良いことを言っていて。
起業家予備軍が集う“トキワ荘”みたいな場所があると、誰か1人が起業したら、「俺にもできるはずだ」と言ってみんな起業していくみたいなんです。その話を聞いたときに、確かにそういう側面はあるなと思ったんです。そのコミュニティ内で出会った人の影響を受けて、無限のポテンシャルが開花していくみたいなことはあると思います。
10年後に「Growth Hubにいた人たちはみんなイケてたね」と言われるように、スタートアップマーケティング版の“トキワ荘”のような立ち位置を目指していきたいですね。