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組織のルール設計を失敗させる7つの方法

組織におけるルール策定は難しい。でもルール策定失敗に法則性はある

組織で良いとされる行動を推奨したい、悪い行いを罰したいと言うときに、我々はルールを策定する。
直感的には、良い行いを直接褒めて悪い行いを罰すればいいだろうと簡単に考えがちだが、実際問題ルール策定は難しい。
ルールを策定したことによる副作用を考えて、組織という一つの小さな国の法律を策定する行為になってる。

幸いルール策定というのは律令国家が生まれてから長い歴史のある行為であって、ベスト(バッド)プラクティスが多くまとまっている分野である。
ルール策定の成功例はルールを執行する環境依存なのでそのまま真似しにくい。だが失敗パターンには法則があり、よく本でまとめられている。

そこで今回はRULE DESIGNで整理されている情報を参考に、ルール策定を「失敗させる」7つの方法を見ていこうと思う。


1. 因果関係が不明なのに、イメージだけでルールを設定する

「児童に収監施設を見学させれば犯罪が減る」という前提のもと、犯罪率を下げる施策として、児童に収監所を見せる施策がアメリカで行われていた。
見学が「犯罪を減らす」ことに直接繋がる根拠が曖昧であり、実際には犯罪抑止には効果がなかったことが後になって分かった。
これだけ聞くとなんと間抜けなことをと感じるかもしれないが、我々が


2. 目的にそぐわないものを指標に設定する

指標づくりを失敗すると、目的にそぐわない行動を引き起こす。
本質的な問題を解決しなくても、別の方法で達成できてしまう。

例としてはコブラ効果が有名。
コブラが増えて困っている街において、コブラの死骸を役所に持ち込めば報酬を与えるという、「コブラを持ち込んだ数」を指標とした。
その結果コブラを養殖して持ち込むのが褒賞を最大化する最適解になり、養殖業者が大量に発生した。
その様子を見て報酬制度を廃止になったが、養殖業者が放棄したコブラでむしろコブラが増えたという指標の失敗である。
目的に沿った指標を設定するなら、「その町でのコブラ数の減少数」に応じて、責任者にインセンティブの方が良い。


3. 罰を与えて、むしろ免罪符を与える

「遅刻をしたら罰金にすれば、罰金を避けるために頑張るだろう」と考えて罰を設定すると、むしろ逆効果になってしまうことが多い。

幼稚園でのお迎えの遅刻を減らすために、遅刻に罰金が課されたケースがあった。その結果、罰金を支払えば遅れてもいいという考えが広がり、遅刻する家庭が増加した。
罰金が「遅刻の免罪符」として機能してしまい、罰則本来の目的が失われている。罰は、行動の抑制ではなく、逆に行動を正当化するリスクがある。


4. 自発的にやっている行動にインセンティブをつける

ゴミ拾いや献血など自発的なモチベーションでやっていることに金銭報酬をつけると、むしろ参加者が減る。
これらの行為は自発的な動機(内的動機付け)でやっているのに、外からのインセンティブ(外的動機付け)を与えることで元々の動機が薄れてしまう。
プロダクトの失敗の例で言うと、楽天がcookpadのようなレシピサイトに参入した際、レシピ投稿に対しポイントを付与した。
レシピを投稿する行為が内的動機付けで動いているのに、外的動機付けで動かそうとしたことがうまくはまらなかった要素があった。
ルールを策定する際金銭インセンティブにすぐ走りがちだが、
「推奨したい行為は内的動機付けで動いているものではないか」
「インセンティブを付与した場合に、むしろ動機が損なわれないか」

を立ち止まって考えてみるのが良い。


5. 守ると罰せられるルールを設定する

いじめの件数を報告するルールを策定したとする。
しかし報告者個人はいじめがあったことを報告すると問題を看過したとして罰せられてされてしまうので、出来るだけ隠す動機が生まれてしまう。
報告しても罰しないことを強く明言した上でルールを策定する必要がある。
これは航空業界における事故の報告義務

事故調査の目的は事故やインシデントの再発を防止することであり、責任や賠償のために行うものではないことを明言

することで機能していることからも伺える。


6. 従うのが難しいルールを設定する

最たる例が仕事量調整のための「残業禁止」ルール
仕事量の調整なしに残業禁止ルールを発令しても、仕事を回しながらルールを遵守することはできない。
仕事が終わらないまま無理に定時で退社させられ、裏で「闇稼働」が発生する。現場での実情を無視したルールは守られないばかりか、従業員の不満やストレスを増幅させる結果となる。


7. 運用コストが高すぎるルールを設定する

大学で経費不正防止のために、ボールペン一本から申請書が必要にするなどが該当する。

不正を防ごうとするあまり、運用コストが高くなりすぎるのは本末転倒になる。一方で運用がザルすぎるのも問題になる。


良いルールは環境によって変わるが、悪いルールには共通項がある

業界や環境によって上手く行ったルールの例は様々であり、なぜ上手く行ったのかを正しく理解するのは難しい。
環境によって違うで言えば、ルールが未整備な途上国で導入したらうまく行ったものを、制約が多い先進国では上手くいかないということはざらにある。(これをリープフロッグ現象と呼ぶ)

一方でルールデザインが上手くいかないパターンは一定体系化されて世の中に出ており、コブラ効果のように代表的な失敗例も豊富にある。

ルールを策定する際は失敗例と策定中のルールを照らし合わせて、典型的なミスを踏んでいないか確認して行くのが良い。


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