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シード期に特化した税理士事務所はスタートアップにどんな価値を提供できるのか?
はじめまして、シードスタートアップ特化の税理士事務所であるグローブ税理士事務所の茅根(ちのね)と申します。
シード特化の税理士事務所は全国でも珍しく、その役割や提供価値がわかりにくいと思います。この記事では、シード特化の税理士って何をやってるの?ということ具体的に記すことで、その提供価値についてお伝えできればと考えています。
シード特化は普通の税理士事務所とどう違うのか?
簡潔に言うと、普通の税理士事務所が税務・会計のアウトソーシング先(※1)であるのに対し、グローブ税理士事務所はリソースのない創業初期にビジネスサイドのメンバー的な立ち位置で事業の加速に貢献します。
具体的には、
・事業計画や収支計画の策定支援
・シードファイナンス成功に向けた全般支援
・資本政策の策定支援
・会社設計(発行株式数や資本金、取締役任期など)の策定支援
・フェーズごとの必要メンバー設計支援
などなど、羅列すると味気ないですが、創業初期は考えなければいけない論点や解決すべき課題がいくらでも湧いてくるので、そういう領域を一緒に考える、というのがわかりやすいかなと思います。
創業期に代表者が一人で事業計画や数字周りのことを考えるのは大変です。プロダクトやサービスのことに向き合うリソースも必要なのに、ビジネスサイドにリソースも割かなければいけない。そんな創業初期フェーズでビジネスサイドを支援するのがグローブ税理士事務所です。
支援する、というのはわかりやすく言えば一緒に作ったり一緒に考える、ということなのですが、意思決定に必要な材料やアイディアを提供し、スタートアップの外側からではなく内側から同じ方向を向いて歩みを進めていくことをイメージしています。
例えば、資本政策や他社との協業条件にしても、ある程度の相場が分かったうえで交渉するのか、知識ゼロで交渉するのかでは大分変わってくると思いますし(※2)、多少経験のある人間がそばにいて気軽に相談できるという状況を作りたいと考えています。
また、創業したての起業家は風当たりが強く、VCや営業先から強い言葉で事業を否定されたり、無下な対応をされることも珍しくありません。
その状況で、味方としてこの事業を大きくするために尽力したいと思う人間が一人でもいるということは、起業家を勇気づけ、奮い立たせ、前を向くエネルギーを少しでも供給できるのではないかと思っています。
では具体的に関与する場合どんなイメージになるのか、創業前から一緒にやるパターンで見ていきたいと思います。
具体的な関与イメージ
創業前~会社設立
■収支計画、資本政策の策定
✓必要なコストはどれくらいか
✓シードファイナンスでいくら必要か
✓エクイティでいくのか、デットでいくのか、組み合わせるのか
■ピッチ資料のレビュー、フィードバック、調査・分析
✓抜け漏れのチェック
✓必要に応じて市場調査や分析
✓VC・CVCからのコメント・フィードバックの検討
■会社設計
✓資本金はいくらにするのか
✓株式発行数と最大発行可能数はどれくらいにするのか
✓役員任期は何年にするのか
✓発起人(創業時の株主)は誰にするのか
✓決算期はいつがいいのか?
■業務ツールの選定
✓会計ソフトはどうするのか(freee or マネーフォワード)
✓コミュニケーションツールはどうするのか(slack、Chatwork…ここは会社が使いやすいものをお任せで)
✓タスク管理ツールは何を使うのか
■会社設立手続き
✓どういうスケジュールで何をすればいいのか
✓定款作成はどうすればいい?定款の認証はどうやってやればいい?
✓登記の書類はどうやって作成するの?
創業後
■会計記帳、給与計算、請求書周り
データを共有してもらえればそれで終わりです。バックオフィスに転がってきたボールはグローブ税理士事務所が拾います。
財務数値について経営陣が知っておくことも大事なので、随時肝になる部分をお伝えしていきます。創業初期はとにかくキャッシュフロー、バーンレート、ランウェイが重要なので、毎月注視します。給与計算も初期は役員だけかもしれませんが、従業員やインターンが増えてくると経費精算、時給計算など細かい作業が必要になってきます。業務委託の方が増えてくると請求書業務も意外とリソースを取られてしまいます。請求書を見ながら一件一件振り込むなどということは絶対に避けるべきです。
グローブのバックオフィスサービスでは、請求書データをもらえればこちらで銀行にアップできるFBデータを作成しますので、ネットバンクでポチポチそのデータをアップすれば支払予約完了です。
■随時MTG(大小関わらず相談ごと)
創業初期のスタートアップは毎週のように何かしらのトラブルや問題が起こります。こちらで解決できるものは対応し、対応策がありそうなものは提案し、解決が難しい場合は別の専門家を一緒に探します。
■資本政策
創業初期に間違えてしまうとその後の影響が大きすぎるので、じっくりと吟味します。
■収支計画の策定
意外と一人で作ると大変なのがこの収支計画。特にスタートアップは先の見えない中の目標数値、見込数値なので説得力のある収支計画を作るには時間がかかるし気も使います。まずは確定的なコストの算出から、想定するビジネスモデルにおけるマネタイズでの収益などを算出していきます。ベストパターン、ワーストパターン(これを下回れば継続不可)、の2パターンは最低でも作りたいところです。
■バックオフィス周り
▼銀行口座
VCから投資が決定しても、銀行口座がなければ入金を受けられません。意外と落とし穴なのですが、スタートアップが銀行口座を作るのって意外と大変なんです。マネロン規制などもあり、審査が厳しくなっています。私の場合は審査面、スピード面、当面の使いやすさからファースト口座はGMOあおぞらネット銀行一択です。
▼クレジットカード
サブスクの支払や消耗品の購入など、クレジットカードも事業初期から必須です。クレジットカードも創業初期に作りやすいカード、バックオフィスとの連動性が高いカードがあるので、このあたりもお伝えします。
シードファイナンス後~シリーズA
事業が軌道に乗ってきた後は、ビジネスサイドメンバーとしてのGROVEの濃度はどんどん薄まっていくのが理想です。ビジネスサイドから徐々にバックオフィスとしての存在感が大きくなっていきます。
というのも、会社が拡大するにつれて、従業員が増え、取引量も増えてくると、バックオフィス関連の業務量が増大するからです。検討すべき会計上、税務上の論点も少しずつ多くなってきます。
ここでバックオフィスがゆるい会社だと内部がぐちゃぐちゃになってろくに試算表も出せなくなります。グローブ税理士事務所が関与することで、盤石のバックオフィス体制を構築します。
スタートアップが普通の会計事務所と契約してしまった時に起こってしまう残念な事
多くの会計事務所は下記のような特徴を持っています。
面談回数に応じて料金が変わる
記帳代行は別料金
給与計算はやらない
このような料金体系の会計事務所を契約すると、できるだけコストを抑えたい起業家は自分で会計記帳や給与計算をする意思決定をするかもしれません。
あなたがfreeeでポチポチやっている間、他の起業家はプロダクトのブラッシュアップに時間を使ったり、営業をしたり、顧客ヒアリングを実施したりしています。創業初期の貴重な起業家のリソースをこのような事務作業に充ててしまうのは事業加速のスピードを鈍らせます。
また、スタートアップに知見のある税理士は全体数からするとかなり少ないです。スモールビジネスなどの中小企業をメインにやっている会計事務所からするとスタートアップのビジネスは理解しがたく、起業家側から見てコミュニケーションコストが高くつく可能性が高いです。面談回数も契約で定められているため関係性も成熟せずに、「ただ記帳と申告をやってもらっているだけ」という関係になってしまいがちです。
記帳代行やバックオフィスに対するGROVEの考え方
一方でグローブ税理士事務所では記帳代行の有無によって料金は変わりません。シード期の会計記帳は必ず当事務所でやります。創業初期の貴重なリソースを細かい事務作業に割いてほしくないからです。その時間を事業の加速・拡大に使ってほしいと考えています。
当事務所ではバックオフィスサービスにも力を入れていて、給与計算や請求書の支払業務など事務作業系に創業メンバーのリソースを割かれないようにサービスを提供しています。
どうしたって創業者は事業と向き合いたいため、バックオフィスを見る人が全くいない状況だと放置されたままとんでもない状況になってしまったりします。試算表も作れないと、次のファイナンスラウンドでも苦しい状況になりかねません。
シード特化税理士をやっていて嬉しい事
創業初期のスタートアップを支援していてやりがいがあると思うのは、お客様の進歩や成長を一緒に喜べるところです。
会社設計を考えて、会社を設立した時。一緒に事業計画を作り上げて、そのピッチ資料でVCから投資を受けることが決定した時。優秀なメンバーがジョインした時。苦労して開発したプロダクトをリリースできた時。プロダクトを使った顧客からポジティブなフィードバックをもらった時。初めて売上が上がった時…。
これらすべての瞬間に立ち会えるのはとてもエキサイティングだし、何度立ち会ってもめちゃくちゃ嬉しいです。
これからも多くのスタートアップを支援して、日本のスタートアップエコシステムに貢献し、活力のある生き生きとした日本社会の実現に少しでも貢献していきたいと考えています。
Q:シードステージしか支援できないの?
A:NOです。シリーズA以降もしっかりと支援させていただきます。
補足すると、シードステージとシリーズA以降では関わり方が徐々に変化していくと思っておりまして、シード期ではリソースのない中でのビジネスサイドメンバーとして、ファイナンスや事業計画含めたビジネス全般に深く関わっていく一方で、シリーズA以降のPMFを終えて拡大していく場面では、主に取引量増大に伴うバックオフィス負荷の受け皿として貢献する側面が大きくなっていきます。
シリーズA以降になると優秀なビジネスサイドメンバーもジョインしてきくるはずで、GROVEの存在感が薄まっていくのが理想であり、あるべき姿だと考えています。
シードステージ特化と謡っているのは、シードステージではほかの税理士事務所では提供できない付加価値を提供できている自負と、シードステージから関与していきたいという想い、の両面があります。
資本政策を考えないままにシードファイナンスを実行してしまうと、非常に不利な投資条件で契約してしまっていたとしても時間を巻き戻すことはできません。バックオフィスを整備しないまま手遅れ状態でお声がけいただき、その整備にものすごい経営リソースが取られてしまう懸念もあります。
創業時から当事務所が関与していれば…と思う事もあり、プレシード(起業前)からお声がけいただくのが当事務所としてはもっとも提供価値を感じていただけるのではないかと思っています。
その他Q&A
Q:報酬はどれくらい?
お問い合わせください。プレシード段階では優遇プランもあります。
Q:対応エリアは?
全国対応です。
Q:どうやって連絡を取ればいい?
各種SNSのDMでもHPからのお問い合わせでもどちらでも大丈夫です。とりあえず一回話してみたい、程度でもお気軽にご連絡ください。
X:https://x.com/grove_tcf
facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100091968662941
HP:https://grove-tf.co.jp/contact/
事務所概要資料
https://grove-tf.co.jp/overview/
お問い合わせ
https://grove-tf.co.jp/contact/
Appendix:代表茅根幸祐の自己紹介
蛇足ですが自己紹介をさせてください。
私は大学時代にライブドアやサイバーエージェントなどIT系スタートアップの躍進を目の当たりにして、安直に「起業をしよう」と決意しました。まずIT系スタートアップに入社し、数年経験して起業するつもりでした。そこでは主にインターネットマーケティングの仕事をしていたのですが、実際にスタートアップで働いてみて、ビジネス全般の知識や戦闘力、胆力みたいなものが不足していると感じ、加えて解決すべき課題や成し遂げたいビジョンも見つからず、挫折してしまいました。
今後何をするのか方向性を見失っていたところに、国税職員だった祖父から国税局の採用パンフレットをもらい、税理士として専門性を身に着けて独立する道を見つけました。将来独立することを見据え、経験を積むために国税局に入局し、12年のキャリアを積みました。
国税局での仕事は現在の自分の構成要素の中でもかなり大きなものであり、特に税務調査を100件以上担当したことは大きな経験であると感じます。
税務調査というのは税務や会計の調査だけではなく、調査の冒頭で社長から会社の概要やビジネスモデルについて詳しくヒアリングをし、会社のビジネスをかなり深く理解することからスタートします。
100件以上この工程を繰り返すと、規模を拡大している経営者がどんなマインドなのか、会社がどういう強みを持っているのか、どんな戦略なのか、というのが体内に蓄積されていきます。
一方で、税務調査は赤字の会社にも入るので、経営がうまくいっていない会社の経営者の考え方や、ビジネスの状況も深く理解することができます。
さらにそのようなヒアリングを実施した後、会計の数字を見ていくとさらに理解が深まっていきます。税務調査は依頼した書類やデータについては基本的に何でも見れる(質問検査権)権力を持っているので、会社の重要な経営データも当然見ることができました。
大量のケーススタディ、ナレッジ蓄積によって、経営について幾ばくかの価値あるアドバイザリー能力が少しでも備わったと感じています。
税務調査を行う中で感じたのが、経営者と税理士の関係性における構造上の課題です。
経営者に税理士の印象を聞くことがあったのですが、大抵は不満を持っていました。その不満は「経営に対するアドバイスがない」という類のものでした。一方で税理士側の話を聞くと、「経営まで見てる余裕はない」「税金の専門家なので経営のことはわからない」という主張を持っているようでした。
どちらの言う事もそれぞれの立場では正しいのかもしれませんが、私の印象としては、経営アドバイスができる税理士が求められていると感じました。
税理士という外部専門家の中で最も企業経営に近いポジションが経営に関与しないのはもったいない、社会的損失である、とも感じていました。
そして自分は経営のわかる税理士として独立しようと思いました。
税理士として独立する時期に目処が立ってきたところで、これまで実務や独学で学んできた経営を体系的に学習したいと考え、一橋大学のMBAに入学しました。ここでは、戦略やファイナンスやマーケティングを中心に経営全般知識のブラッシュアップをするとともに、スタートアップエコシステム、特にアクセラレーターの研究をしました。
この背景には、税理士としての開業を見据え国税局で働く中で、いつの間にか自分の生活が米国企業の製品やサービスでほとんど構成されていることに問題意識を持っていたということがあります。
iPhoneを使ってAmazonで買い物をし、Gmailでコミュニケーション、仕事ではwindowsのPCでofficeソフトを使って、余暇はNetflix…
このような状況に大きな危機感を覚え、なぜ日本ではGAFAMのようなスタートアップが育たなかったのかを紐解くと、スタートアップエコシステムの成熟度の違いを強く認識しました。
特にシリコンバレーにおいてはヒトモノカネの経営リソースが物理的に集積しており、スタートアップへの支援も充実しています。M&AによるExitも活発なので、バイアウト経験のある先輩起業家がエンジェルになって資金と知見を若手に提供したり、再度スタートアップを立ち上げることも珍しくありません。
その中で私は創業初期のスタートアップの事業加速を支援するアクセラレーターに着目しました。特に世界一の実績を誇るY mbinatorが与える影響について定量研究を実施し、いくつかのポジティブな影響を実証することができました。
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Y combinatorの支援プログラムについては割愛しますが、日本でもこのような創業初期のスタートアップに対する支援が必要だと強く感じました。
リソースが本当に何もない中で事業を軌道に乗せていくのは本当に大変です。だからこそ、私はそのステージに特化して支援をすることで、日本のスタートアップエコシステムの隆盛へ部分的にでも貢献したいと思い、グローブ税理士事務所を立上げ、日々活動しています。
参考記事:グローブ税理士事務所がシード・アーリー期のスタートアップを支援する背景について
※1 わかりやすく対比させるために税務・会計のアウトソーシング先と定義しているだけであって、すべての税理士事務所・会計事務所がこうであるわけではありません。高い付加価値業務を提供している税理士事務所・会計事務所もたくさんあります
※2 実際の投資条件を詰める段階では当然弁護士の方に入ってもらいます
事務所概要資料
https://grove-tf.co.jp/overview/