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観光都市京都「ビフォーアフター」


中井治郎(2020)『観光は滅びない 99.9%減からの復活が京都からはじまる』星海社

 2020年春には、私たちがこれまで慣れ親しんだ街の景色は変わってしまったのではないだろうか。それは間違いなくコロナの影響だと考える。観光都市である京都でも景色が一変し、観光客がいなくなったというニュースを見た人もいると考える。コロナ直前は人類が歴史史上もっとも世界を移動したと言われている。世界の国際観光客が「2000年には7億人足らずに過ぎなかった」が、2018年では14億、2019年度は過去最大を記録したという(p.6)。
 私の意識では日本の観光はずっと栄えているという認識であったが、日本はもともと観光産業の立ち遅れが問題だった。日本政府が本格的にインバウンド誘致に乗り出したのは、小泉政権下の2003年に日本の魅力をアピールする「ビジット・ジャパン・キャンペーン」からであるといわれている(p.65)。爆買いが流行語になった2015年を境に、これまでアウトバウンドがインバウンドを上回っていた状態が逆転した。以後は日本の観光産業は「第三の基幹産業」(p.28)となり、日本の観光産業のGDP寄与額は米中に次いで第3位で世界水準に達した (p.32) 。2020年はオリンピックのインバウンドを活かし、「勝負の年」(p.31)と呼ばれていた。人口減少時代に突入した崖っぷち国家日本にとって観光産業は「最後の希望」(p.31)と呼ばれていた。
 特にその影響を受けているのが京都であった。京都ブームにより、外国人観光客は2012年と2018年を比べると宿泊客は5倍に増加した(p.4)。オーバーツーリズムという言葉が自然発生的に流布する用語となった(p.29)。京都は市中に無数の観光スポットがあり、他の観光スポットには逃げ場があるが京都にはない。オーバーツーリズムが市民生活まで圧迫し問題となっていた。
 しかし、その問題が突然解消した。古都税をめぐって京都市と京都の寺社が対立、抗議のために拝観者に対して門戸を閉ざした「固都税騒動」(p.111)以来、実に35年ぶりに京都の街から観光客が消えたことで、ポスターでしか見られない京都が現れることになったのである(p.4)。京都ブランドには底力があった(p.116)。コロナ禍で観光客が減るものの、日本の潜在的京都ファンが空いている京都の噂を聞きつけてやってきた。コロナ禍で改めて国内旅行者の中にも京都への憧れは生きていた。
 僕は地域社会を研究テーマにする予定だ。元来、地域社会では観光業が浮いた存在だったが、地域の課題を解決するために観光は地域社会にとって「なくてはならないもの」となった(p.182)。コロナ禍における観光業の停滞は新しい展開をもたらし、住民との関係を築き、地元市民の支持を得た「強い観光業」として生まれ変わりつつある(p.182)。本書での京都の事例を参考に、地域社会の今を研究したいと思う。

(ヤス)

#読書案内 #京都観光 #コロナ #大学生

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