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椅子とベンチの話。どっちを置けばいい?プレイスメイキングに迷った時に考えたいこと。

まちづくりという文脈の中で、これは大事だよね、という共通認識をみんながなんとなく持っている事のひとつに、「座る場所」がある。

私も、まちのなかに人が居られる場所としての「座る場所」は、都市ならではの体験とまちへの愛着を高める上でとても重要なファクターだと考えている。

座れる場所をつくることは、プレイスメイキングでも重要なことだ。でも、プレイスメイキング=座る場所を置けば完了、ではない。大事なのは、それぞれの場所や取り巻く環境に合ったプレイスメイキングを考えることだ。空間づくりをするときに考える、「椅子」と「ベンチ」の道具としての使い分けや、意味について今日は書いていきたい。

「居場所」をつくる椅子

椅子は、生活にもっとも身近な道具のひとつだ。例えば現代で、1日椅子に座らない人のほうが少ないだろう。デスクワークの人は、起きている時間のうち椅子に座っている時間の方がむしろ長いかもしれない。

椅子の特徴は、1人が座ることを基本とした座る道具であること。それから自由に動かし、場所や向きを変えて使う人の好みに応じた座り方が可能であること。

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椅子が1脚あれば、誰もが自分の好きな場所・その時の気分に合わせた向きで座ることができる。もし2脚あれば、脚を乗せてリラックスして座ることもできるし、親しい人と隣り合わせで座ることもできる。自分の側に1脚を引き寄せて、コーヒーをそこに置いて本を読むことだってできる。もちろん、仲間集まっておしゃべりすることだってできる。

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時には場の状況に合わせて、しまう事もできる。
つまり、使い方が変幻自在なのだ。椅子はそんな可変性が一番の魅力であり、誰もがそれぞれ使いたい形で、シチュエーションにフィットする「居場所」をつくれる道具であると思う。

まちづくりでは交流が重視されがちだが、1人でゆっくりと過ごしたい人だっている。そんな人も、椅子が1脚あれば自分の居場所を設えることができる。プレイスメイキングでは、人が自分らしくいられる「交流しない居場所づくり」も大事だ。

もともと、椅子はインテリアとして室内に置かれることのほうが多い。そしてパブリックな場所よりも、プライベート空間に好んで置かれる傾向がある、パーソナルな道具だ。

だからなのか、日本のまちなかで椅子やテーブルセットを単品で置いても、人がすぐには座らない傾向にある。誰かの物かもしれない、お金を払わないと座ってはいけないのかもしれないと思うのだろうか。

それだけまちなかに椅子が置かれることは、まだ日本に馴染んでいない。自由に椅子を使いこなすまちの風景が当たり前になってほしい。

「コミュニケーション」をつくるベンチ

ベンチの特徴は、ふたり以上が腰掛けられる道具であること。だから、たとえ1人が端に座っていたとしても、他の誰かがとなりに座ることがベンチという形状から許されている。(あえて荷物を置いて、他の人が座れなくする人もいる)

ふたり以上が座ると、知り合い同士ならおしゃべりをする場になるだろうし、知らない人同士だと座る時には軽く目配せをするだろう。子どもがふたりで登って一緒に遊ぶこともできるし、親子連れなら親は隣に荷物を置いて休憩しつつ、遊んでいる子どもを眺めることもできる。これも、座面の広いベンチだからこそできるする居方だ。

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ベンチは形態も様々だ。ロングベンチならたくさんの人が座れるし、背もたれのないベンチには互い違いにも座れる。「ちょっと座ろうか」と気軽に思える親しみやすさと、直接的・間接的なコミュニケーションが生まれることがベンチの魅力だ。

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また、プレイスメイキングの観点でいうと屋外/パブリックな場所に置かれているベンチは、その場所に座ってほしいから置かれているのだと捉えていい。それはつまり、「どうぞここに座ってください」という、置いた人からのわかりやすいメッセージであり、置く人とまちのコミュニケーションなのだ。

その証拠に、いまは様々な地域や場所で、でまちの居場所としてベンチを設置しようという取り組みがある。友人夫婦が家の前に置いたベンチがメロンに変わった、というこの記事がとても好き。こんな偶発的な出会いが生まれるのも、ベンチならではかもしれない。

椅子とベンチ、どっち置く?その場所にフィットする空間のあり方を考えよう。

椅子は「自由な居場所」、ベンチは「コミュニケーション」が特徴と書いたが、紋切り型にどちらかの機能しかないわけではなく、どちらも居場所・コミュニケーションを生み出す道具だ。

とりあえず一度置いてみるのもOK。ただそれではもったいないので、置く前に、あなたがつくるそのプレイスで「どんな光景が生まれてほしいのか」考えてみてほしい。人のどんな振る舞いや、まち・人がつながるアクティビティが眼に浮かぶか。誰のためにその空間をつくりたいのか。一緒に取り組むチームの人たちとそんな話をしてみると、よりイメージ/アイデアも膨らむ。

置く場所のスペース上の制約もあるだろうし、そのプレイスの目の前にある施設用途(スーパーなのか、カフェなのか、駐車場なのか等)によっても人々が求める「座る場所」のニーズは変わってくる。

まずそんな仮説を立てて、置いてみて、観察してより良くする。その場所にフィットしたプレイスメイキングのありかたを見つけていってもらいたい。


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