【ライブレポ】かつしかトリオ『ウチュウノアバレンボー(仮)』
憧れの3人
CASIOPEAというバンドが好きで、幼稚園の頃から20年近くファンとして聴いている。
F1のテーマとしておなじみ、『TRUTH』を生み出したT-SQUAREと同じインストゥルメンタルバンドで、1979年のデビュー以来、第一線で活動してきた彼らは、2006年からの活動休止を挟んで、2012年からはCASIOPEA 3rd、さらにドラマーの交代を経て2022年からはCASIOPEA P-4の名前で活動している。
80年代から90年代にかけてテレビ出演やCM曲での起用なども多かったので、その頃をご記憶の方もいらっしゃるかもしれない。
かつてここで、サブスク配信を記念してこんな記事を書いたこともあるので、気になった方はぜひ読んでみて欲しい。
2021年、そのCASIOPEAの80年代に鉄壁のアンサンブルとしてバンドを支えた元メンバー3人
(キーボード:向谷実さん、ベース:櫻井哲夫さん、ドラムス:神保彰さん)が『かつしかトリオ』として再結集。
今回、2ndアルバム『ウチュウノアバレンボー』リリースを記念したライブツアーが開催されることになった。
このnoteをご覧になっていただいている方にはもう周知の事実かもしれないが、わたしはずっとCASIOPEAに憧れ、さらに言えばキーボーディストの向谷実さんに憧れを抱いてきた。
弾けると言えないものの、打ち込みでシンセをメインに使う人として、向谷さんのように、向谷さんのような音で弾きたいと何度思ったか分からない。
というかそもそもシンセ弾きになったきっかけでもあるし、音楽をここまで好きになったきっかけの人だ。
わたしの機材だって、曲だって影響を多大に受けている。
もちろん、その超絶技巧から千手観音と称され、ドラム1台だけで全てのパートを担う『ワンマンオーケストラ』なるライブもこなす世界的ドラマーの神保さんにも、タイトなスラップが特徴のベーシスト、櫻井さんの音にもずっと憧れてきた。
自分で曲を打ち込む時はやはり『ああいう音』にしたい、と思う自分がいる。
そんな3人が目の前でこれからライブを、と思うと胸が高鳴った。
憧れの3人、憧れの音の数々、もうたまらない。
気づくとチケットを買っていて、秋のライブだったのに、夏にはライブへ向かうことが決まっていた。
11月26日、東京国際フォーラム ホールC。
思ったより当日は早く来て、そして寒かった。
千秋楽、東京国際フォーラムは満席。
アルバムタイトルの通り、宇宙とか銀河をテーマにした映像が流れるなか、3人がステージへ。
1曲目はアルバムタイトル曲、ウチュウノアバレンボーでスタート。
とにかくテンポが速い。さらにベースとシンセの複雑怪奇なユニゾンがあったり、なかなかすごい曲だ。
CASIOPEA時代にもかなり速いテンポのユニゾンをこなしていただけあって、余裕で弾きこなしているように見えるがきっと大変である。
その1曲目の勢いのまま2曲目、banana express。
個人的には今回のアルバムのなかでいちばん王道という感じの疾走感がお気に入り。
ストレートな16ビートのドラムと、サビのコード進行が爽快で気持ちいい。
3曲目、Spaceman's Shuffleはその名の通りシャッフルビート、ファンキーなノれる曲。
この曲は特にベースがファンキーですごくよいんだけれど、このライブではそれに加えて向谷さんのエレピソロが最高だった。
燃えているというか、ライブ特有のテンションがあがって弾き倒しているあの感じ。
向谷さんが30分くらいあのまま弾いててもよかった(!?)、みたいなことを直後のMCで語っておられたけども、それはそれで見てみたかった。
ところでイントロのドラムのハイハットの刻み方はどうなってるんでしょうねコレ。
毎度おなじみ向谷さんの軽妙なMC(分かりやすくお伝えすると一生どうでしょうします!的なことをおっしゃられてました、今後にも大いに期待しています……)を挟んで、始まった4曲目はBrand new morning。
ピアノがメインメロディをとる爽やかな曲。
今回のアルバムだと一番好きかもしれない。
途中の間奏に入るクラップは会場全体で一緒にやるのがまた楽しい。
5曲目、Moon Linerは主張が普段よりも控えめなシンプルなエレクトリック・ピアノが主旋律。
落ち着いた雰囲気かなと思っているとそんなことはなくて、ベースもバキバキのスラップソロがあるし、ドラムも縦横無尽にソロではね回っている。
こういうのが作ってみたいんだよなあ。
6曲目はアルバムのラストに入っていたLiving in the Universe。
てっきりアルバムツアーだし、ラスト曲はセトリのラストに持ってくると思っていたので、割と早いお出ましに少しびっくりした。
少しサイバーというか未来感も感じるようなイントロからラテンのような軽快なリズムに続く少し楽しい曲。
イントロのボイスに合わせてコーレスがあるのでそれも会場全体で歌った。
この曲にもシンセとベースのユニゾンがあるが、個人的にはドラムがすごいなと思う。
MCと楽しいメンバー紹介を挟んで、
『我々はまだまだ新人バンド(※CASIOPEAは1979年デビュー)。やはりこうしてライブができているのはデビューアルバムからずっと応援してくださっている皆様のおかげですので』と、続いて演奏されたのはデビューアルバム『M.R.I.-ミライ』から3曲。
これもシャッフルビートのBright Lifeと、ラテン調のa la moda、そして結成の地である葛飾の地名が入った柴又トワイライト。
このアルバムの頃の向谷さんの機材には、YAMAHA MONTAGEのほかに、赤いボディが特徴的なシンセサイザー、Nord Stage 3が乗っかっていたけれども、今回のアルバムとライブのセットはYAMAHAのフラッグシップ『Montage M』を上下2段にセット。
機材が変わったことによって、少し音の印象が変わったような気がした。
こういうのもライブならではというか、次のアルバムあるいはライブではどうなるかな、という楽しみになるのでわたしは好きだ。
MCを挟んだ10曲目はサビのメロディがキャッチーなOsaka Romantica。
この曲のメロディは1度聴くとしばらく口ずさんでしまう。
続いてシンセの音色を使わず、ピアノ音色だけで演奏されるジャジーな曲、ピンクの仔象。
ちょっと大人の感じというか、渋いイメージの1曲。
そして12曲目に演奏された天ノ川はバラード曲。
イントロ前にピアノソロが入り、幻想的な映像とともにメロディアスなピアノ、ベースソロが楽しめた。
さてここから一気にラストスパート。
お次はファーストアルバムに戻って軽快なスカのリズムに乗せたKatsushika de Ska。
この曲ではキーボードの向谷さんが肩にかけるタイプのキーボードで立って演奏、ベースの櫻井さんと共にステージから降りてくる演出も。
楽しそうにキーボードでソロをとる向谷さんの姿が現地で見られたのは幸せ以外の何物でもなかった。
白熱して曲の尺が日によって違う、とも仰っていたけれども……w
そして14曲目、今回のアルバムからは最後の曲、Zero G。
これもまたファンキーな曲。
シンセが主旋律なんだけれど、普通のシンセの音色と共にトランペットの音が混ざっているのが、ちょっと不思議な感じがして面白いなと思っている。
そして最後はファーストアルバムのリード曲、M.R.I.-ミライ。
とにかく疾走感とテクニックの詰め合わせみたいなこの曲がラストか!と意表をつかれたような気持ちになりながら、最後を噛み締める。
そうしてセトリは終幕。
しかしライブといえば、アンコール。
拍手に応え、ステージに戻ってきた3人。
そして、デビューアルバムからの先行シングルだったRED EXPRESSがスタート。
まるで丸ごと始動からの歴史を振り返るみたいなセトリ。
でももうアンコール、これで終わってしまうなあと考えていたのだが、演奏のエンディングを迎えてもステージのライトがそのまま。
お?なんだ?と思ったその時、始まったのはなんとCASIOPEA時代に3人が演奏していたmid-manhattanという曲。作曲はドラムの神保さん。
まさかのダブルアンコール。
さすがに撃ち抜かれた。
ただでさえ憧れていた人たちが、憧れた音を、曲をやっている。
聴けると思っていなかったし、尚更びっくりした。
あの瞬間はきっとずっと忘れないと思う。
なんか毎回言ってる気がするが、どうだい昔の僕、すごいぞ今日。
しかし、アンコールはこれで終わらず、続けてCASIOPEA時代に初めてバンドとして共作した、HALLEという曲も続けて演奏。
セトリ上はダブルアンコールだったが、曲数的には3曲の大盤振る舞いで会場は総立ちに。
おかげで最後は全くステージも見えなかったが、このライブ参戦に一片の悔いなし。
──こうして、わたしのあこがれに触れる一夜はあっという間に終わった。
成人してからそれなりにたって、色んなライブに行くことが増え、ついに憧れの人のステージも見られたのは、本当にああ大人になったんだなぁと感じた瞬間だった。
きっと昔のわたしに見に行くことを伝えたら大喜びだろう。
ライブが終わって外に出ると、ホールの熱気とは対照的に、すっかり空気は冬だった。
とりあえず暖かいものを食べよう……とお店を求めて車いすでぶらぶらしたはいいが、この日ライブ以外のことが全然上手くいかず、心が折れかけたのは別の話である。なんだったんだ本当に。
ということでライブレポ、ここまで。
お粗末さまでした。