ただただ長いだけの話
先週寝付けない日があって、ただ長いだけの退屈な話を書いた。暇ができるとすぐメモ帳を開いて頭に浮かんだことを書き留める癖がある。疲れるし目は冴えるしで良いことなど何もないがどうにもやめられない。こんなゲロみたいなものを投げつけることについて確かな抵抗はあるが出来てしまったものは仕方ない。どんなひどい出来の料理であっても調理してしまったなら口にしなければならないということと似ている。ゲロっぽい料理を好む人もいるかもしれない[1]。ここで問題なのは、もういい無理をするなと止めてくれる人が周りにいないことだ。
はいじゃあ始めますね。オエー
最近せん妄の話をよく見る。僕が単にある話を見聞きすると言った時、それはTwitterで見かけるという話であり、より普遍的な大衆メディアから得た情報ではないことに注意されたい。Twitterは非常に情報指向性の高い構造をしており、僕の選択したフォロイーとそれに類似する人物ないし媒体の発する情報が集約され、さも社会的ドミナントであるかの如くに振る舞う。しかしそれは嘘で、ユーザによって選びとられた情報を元に同一ベクトルの情報ソースばかりが蒐集されて流されているのがTwitterのTLというものであり、Twitterを「する」というのはある意味で自分の思想に最適化されたプロパガンダラジオを作るみたいなことである。君だけの独裁国家を作れ!
さて、僕のプロパガンダTLでは日夜 研究者・大学院生・20代後半の東北地方関係者・エロ漫画家などによる偏った思想・信条・性癖があつめられて最上川並みの爆速スピードで流れている。芭蕉もこんなことに引用されるとは思わなかっただろうし、東北人がこれほどクソ最悪な感性の持ち主だと分かっていたら後世にクソ田舎の川だの寺だのを賛美する歌など残さなかっただろう。芭蕉は既に死んでいるし、著作を俺に知られた時点でこっちの勝ちだが(この時義務教育は敗北している。いっつも負けてんな義務教育)。とにかく僕のTLには医者も時々混ざっていて、彼らが術後せん妄について色々言っているのを頻回に見たのが数日前のことだった。同じことが数ヶ月前にもあったと思う。同じ事件が話題の火元になっていて、多分今回話題に上がったのは上告されて高裁判決が出たからだ。法律的な部分について思うところはあっても知識がないので言及を避ける。では何故松尾芭蕉には言及したのかというと、当事者なのでと言う他ない。アフリカ系アメリカ人が永久に奴隷制について当事者として言及するのと同じように、我々もまた蝦夷系日本人として征夷大将軍や物見遊山の旅行者(松尾芭蕉とルビが振られる)にうんこを投げ続けるのだ。どうかこの蛮行を理性的に止めないでほしい。我々は訓練された八木山のゴリラです。
僕が興味を示したのはせん妄という現象の方だ。実際に体験したという方によれば一定以上のリアリティのある意識体験が生じているらしいが、これは夢とどのくらいの解像度の差があるのだろう。夢の中で再生される色や音には相当なリアリティがあるが、一方で匂いや強い痛みなどの一部の触覚(痛覚)はあまり顕在的でないように思う。僕は少数の明晰夢体験があり、その中で自分の頬を抓るというステレオティピックなやつをやったが、ぶにりと頬が変形するばかりで痛みはなく、これは夢だと認識できた。古の漫画には事実しか描かれていないと分かる。一方、夢の中で受けた深い切り傷や銃創に対してさえ現実感のある痛みを感じ得たことはない[2]。
つまり視覚・聴覚情報は容易にハックされる=感覚器官を介さない入力を脳内で高い精度で生成できると考えられる一方で、触覚や嗅覚・味覚に関わる記憶は少なくとも夢の中では正確に再生されない。せん妄は夢とどの程度違うのかということを考える際に、こうした感覚情報の生成の正確さを比較したいと考えた。件の裁判では医師に胸部を舐められたと主張しているらしいが、これは視覚的エピソードなのか触覚的エピソードなのか大変気になる。検察はどの程度掘り下げて証拠検討をしたのだろうか。さすがに俺の興味を満たすためにしっかり働けとは言えないが、医師の皆さんが言うように仕事が適当過ぎて反知性主義的な判例を生み出してはまずかろう。とにかく僕が知りたいのはせん妄の現実感がどのような脳活動に裏打ちされたものであり、それは他の状態とどのように異なるのかである。感覚情報の再生という点で夢を上回る現実感が得られているならば、せん妄時の神経活動で相対的に活動的な部分、或いは逆にサプレスされている部分を知れば高い没入感を得られる仮想現実体験をある種の神経活動操作によって可能になる未来が見えてくる。没入感を評価する上でどういう要素を計測すべきなのか、逆を言えばどういう刺激を入れてどのような神経活動が示されれば“十分な”リアリティをもった意識体験となるのかを知りたい。
まぁこれは半分冗談で言っているからあまりマジにとらなくていい。せん妄は夢と同じようにその瞬間は高いリアリティをもって体験しているかのように錯覚しているが、実際には支離滅裂で曖昧な情報の再生を正当化バイアスによって受容した結果生まれた偽の記憶に基づいて述懐したものに過ぎないという可能性を排し切れない面がある。もっとつまらないことを言うと、特に「どこを抑えれば現実の矛盾を無視した妄信的状態に陥るか」というのは洗脳への応用が近過ぎて危険だから国内ではそう簡単に予算がつけられないだろう。他所ではDARPAあたりがもう大金を出していると思うし[3]。
せん妄は持続的な痛みの信号をマスクするためとか、ある種の信号の混線のような現象によって生じているという見方もできそうだ。大抵長時間の麻酔後に生じる現象であり、長時間の麻酔では気管挿管を伴うので術後に喉頭に出血が生じる場合が多いらしい。これが持続的な痛みを生じ、慢性疼痛が別の異常の原因となることは自然なように思える。
ところでよく分からないのだがカフが触れている部分が炎症を起こして出血するのだろうか?僕はこの話を聞いてあんまり全身麻酔をされたいと言わなくなった。喉が血塗れで息苦しいというのはしっかり怖い。好奇心は猫をも殺すと言うが、猫も一瞬で死ぬのではなくただしばらく痛いだけのことには躊躇するんじゃないかと思う。要するに好奇心は別に誰も殺しちゃいない。なにかを殺しているのはいつもお前達自身の誤った判断である。そしてやはりここでも義務教育は詭弁に敗北している。一体何になら勝てるんだろうなお前は。
[1] ゲロを食らえと言う意味ではないし、ここでは月島や栃木県の名物に触れるつもりもない。
[2] この件についてフロイト的な診断を加えることを固辞するが、刃物だの銃だのが出てくる夢を時々見ていることは事実として認める。最近はあまりそういう夢見てないからDMとか送って来るなよ。俺は「ネコ」ではない。
[3] ちなみにDARPAの基金には他国からも応募できるらしい。通った時にどんな誓約書を書かされるのか気になるのでいつか出してみたいけど、怖いから多分やらないだろうな。俺は愚かな「イヌ」でもない。