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薬局薬剤師のお仕事① 処方監査
「薬局薬剤師のお仕事」シリーズ。
記念すべき第一回は「処方監査」です。
一回目から聞き慣れない言葉を出してしまいました。
「え?調剤じゃないの?」という声が聞こえてきそうです。
でも、私は処方監査は薬剤師の最重要な責務だと考えているので、どうしても最初に持ってきたかったのです。
薬剤師の仕事の本質は「間違い探し」です。
業務中、ひたすらに、延々と、間違い探しをし続けます。
そのうちの一つが「処方監査」なのです。
「処方監査」の意味
処方監査。あるいは 処方鑑査 と書く場合もあります。
これはすなわち、
医師が作成した処方せんの内容が、医学的または薬学的に妥当か判断する。
ことを指します。
つまり「処方せんの間違いを探す」という業務です。
薬剤師法には、以下のルールがあります。
薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。
この問い合わせを「疑義照会」と呼びます。
(この疑義照会がメッチャ大変なんですよ…)
つまり処方監査は処方せんの中から疑義を探す行為だと言っていいですね。
なぜ重要なのか?
ではなぜ私が処方監査を「薬剤師の最重要な責務」と考えるのか。
それは薬剤師が「最後の砦」と呼ばれるためです。
患者さんを看護師がサポートし、医師が診断し、薬剤師が調剤します。
そのあとは、患者さん本人が薬を服用するだけです。
裏を返せば、薬剤師がGOサインを出してしまったら、もう止まりません。
「薬剤師が処方の誤りを見逃すこと」は、患者さんが間違った薬を服用することとイコールです。
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「処方せんの間違い」なんてあるの?
「でも、処方せんの間違いなんて、めったに起こらないでしょ?」
と思われますよね?
めちゃくちゃあります。
おそらく、薬剤師なら深くうなずいてもらえると思いますが、
疑義、ありまくりです。
一日5件とか、ザラにあります。
これは必ずしも医師が悪いわけではなく、様々なパターンがあります。
例えば、
「7歳からしか使えない薬が6歳の子に出た」
「粉砕できない薬に粉砕指示が出た」
「単純に処方せんを打ち間違えてる」
とかですね。
だからいつも薬剤師は気を張り詰めていないといけません。
処方せんを見た瞬間、目と脳が高速で動きます。
私は、一日に来る患者さんが多くなりすぎると頭痛がします。
それはこの間違い探しループのせいなのです。
処方監査の実例
最後に、実際に処方監査をしてみましょう。
疑義の多い極端な処方せんをあえて作成してみました。
(小児科を想定しています)
薬学生の方はぜひチャレンジしてみて下さい。
「処方」の欄に疑義が4つあります。
薬学生以外の方は、すぐ下に答えを載せてありますので、
なんとなく、雰囲気だけ味わってみてください。
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以下がこの処方せんを監査した結果、発生した疑義です。
医師に処方内容を確認する必要があります。
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このように、小児科の薬剤師は
・粉薬それぞれにおける体重あたりの適正量
・年齢によって使う量が異なる薬
・塗り薬の強さの比較
などをすべて把握(暗記)しておかなければ監査が出来ません。
小児科なのでまだ簡単ですが、これが成人や高齢者になってくると
・他院でもらっている薬との飲み合わせ
・患者さんの腎機能によって減量する薬
・手術が控えているなら中止しないといけない薬
などが出てきてかなり複雑になってきます。
まとめ
と、ここまで監査のことをまとめてきましたが、別に特別な能力が必要なわけではなく、結局は「慣れ」です。
魚屋さんが鮮度の良い魚を見分けられるように、
保育士さんが子どもの不調を見抜くことができるように、
薬剤師は処方せんを毎日、見続けている。というだけの話です。
薬剤師は処方せんを受け取るとき、スキャンするように監査をします。
結構楽しいので、私は気に入っている業務です。
(ちなみに監査をし続けているせいなのか、私は読書中に本の誤植をかなりの確率で見つけます。)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
第二回はコチラ。
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