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薬局薬剤師のお仕事④ 在宅医療
「薬局薬剤師のお仕事」シリーズ。
更新が遅くなりました。第四回は「在宅医療」です。
前回はコチラ。
前回、
「薬剤師は、もはや調剤をしていません」というお話をしました。
理由は、薬剤師が「薬」ではなく「人」と関わるために、でした。
では「人と関わる」とは具体的になにか。
調剤をせずに、浮いた時間で何をしているのか。
その中でも大きなウェイトを占めるのが、
「在宅医療」
です。
いま、薬局の薬剤師は、患者さんの家にいます。
在宅医療とは
在宅医療とは、医療従事者が患者さんの自宅に伺うサービスのことです。
具体的には、医師や看護師、ヘルパー、そして薬剤師がそれぞれ患者の自宅を訪問し、業務を行います。
薬剤師の行うものとしては主に、
自宅での薬の説明
服薬カレンダーのセット
副作用の確認
など。
在宅医療を利用する人には、
通院が困難な方
介護が必要な方
がん末期で余命宣告を受けた方
などがあります。
最近は病院での入院よりも自宅での療養を希望する患者が増えています。
患者側が自分で医療を決められる時代が来たのは、良いことですね。
ちなみに私は、週に2〜3人ぐらいの家に行っています。
薬局に来た患者に薬を渡す「服薬指導」と比べて、実際に薬を飲めているかどうかが見て分かるし、薬以外の総合的な状況が把握できるのが良いですね。
患者と近い関係に
在宅では自然と患者と近い関係性になりますね。
終の棲家である自宅にいる患者さんって一番リラックスした状態なので、薬局では聞き出せない話ができたり、雑談もしやすいです。
一包化やお薬カレンダーの提案や、副作用確認といった薬剤師らしい業務だけでなく、あえて薬剤師「らしくない」ことをするのも大事ですね。
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たとえば私の経験では、
リビングにあるお孫さんの写真を見て雑談したり、
患者さんが昔どんな仕事をしていたかを聞いたりします。
薬剤師らしからぬ頼みごとをされることも結構あります。
お買い物を頼まれることもありますし、
一度だけ「エアコンが動かないから見てほしい」って言われたこともありました。笑
在宅医療を利用する患者さんは、日常生活にも困りごとを抱えているケースが多いんですよね。
移動手段が無いとか、指先がうまく動かせないとか。
だから「仕事の関係」というよりは「お友だち」みたいなスタンスでいることも大事だと思っています。
印象的だった患者さん
最後に、私が今までおこなった在宅業務でいちばん印象的だった患者さんであるA子さんについて触れておきます。
A子さんとの出会い
出会ったのは1年ぐらい前でしょうか。
A子さんは末期がんでした。
余命宣告を受けており、既にその期間は1ヶ月を切っていました。
まだ60代で、90代のお母様と同居していました。
配偶者や、お子様はいませんでした。
私は最初、自分の母親とそう変わらない年齢のA子さんと、どう向き合うか悩みました。
「握手してほしい」
医療用麻薬であるフェントステープを持っていき、輸液とともにベッドサイドに置いて、A子さんと少しお話をする日々が続きました。
最初はあまりうまく話が出来なかったのですが、だんだんと心を開いてもらえるようになりました。
あるとき、私が帰ろうとすると、A子さんから
「握手してほしい」
と言われたのです。
私が手を握ると、A子さんは
「うれしい…」
と言って目を細めました。
私はその手の小ささと冷たさに驚いたのを覚えています。
A子さんの最期
握手から3日後、また輸液を持ってきてA子さんに話しかけました。
「いつものお薬、置いておきますね」
と話しかけると、A子さんから返事がありません。
目は開いていましたが、前方を見つめ、こちらを見てはいません。
直感的に「もう永くない」と感じてしまいました。
お母様が自室から出てきて、
「今日はずっとこんな調子。もうダメだぁねこりゃ」
と。
再度話しかけると、A子さんはゆっくりと目をつぶりました。
それからわずか1時間後、担当医から、A子さんが亡くなられたと薬局に連絡をいただきました。
在宅だからできたこと
A子さんが亡くなられてからお母様と話しました。
お母様からは
「アンタと握手したことを喜んでたよ」
とお言葉をいただきました。
私はただ手を握っただけ。
でもA子さんに必要だったのは、紛れもなく「手を握ってくれる人」の存在だったのでしょう。
自分の過ごした家で、誰かとのつながりを感じながら命を閉じる。
それは「在宅だからできたこと」でした。
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まとめ
今回は薬剤師の業務の中で、近年そのウェイトが高くなっている「在宅業務」について書きました。
患者さんの小さな困りごとを解決するのも、最期を看取るのも、この在宅業務で可能になります。
個人的には、一番やりがいを感じる仕事です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
マガジンへのリンクを貼っておきます。
結構気合を入れて書かないといけないのと、書いてると本業をしている気分になってしまい筆が進みません。
だから更新頻度は高くないのですが、コツコツやっていくので、よろしければマガジンをフォローしてお待ち下さい。
それでは、また。
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