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彩色見本 オベロンを作る

今回はガレキディーラー増田屋さんのガレージキット、FGOオベロンの彩色見本を担当させてもらいました。せっかくの機会ですので購入した方への組み立て説明書の代わりになるような記事を書きたいと思います。

軸打ち

 まずはパーツチェックです。全8パーツ、個人で複製されているそうですが気泡や段差がほとんど無く業者顔負けの綺麗なパーツで驚きました。


全8パーツ、リンゴと右足は小さいので無くさないよう注意。

組み立てに接着剤を使いたくなかったり、壊れないよう補強したい方は軸打ちという作業を行って下さい。やり方は下に書いていきます。今回、軸打ちには1mm真鍮線と0.5mm真鍮線を使用しました。
 このキットはダボがしっかりしているので色を塗らずサクッと組み立てるなら接着剤を使えば軸打ちをしなくても大丈夫そうです。

今回使用した道具


・1mm真鍮線、0.5mm真鍮線
・1mmハンドドリル、0.5mmハンドドリル
・ニッパー(買う場合ホームセンターでしっかりした物を)


1mm真鍮線、大きめのホームセンターやモノタロウで購入可能です。

穴の位置決め

別々のパーツの同じ位置に穴を開ける方法です。
ここでは上半身と下半身のパーツを使って説明します。

上半身パーツ、四角い出っ張りの中心にマスキングゾルを付けています。持っていない人は絵の具など触ると他のものにつくような物で代用してください。


マスキングゾルや絵の具が乾く前に下半身パーツと合体しパーツ同士を押し付けます。


成功すると下半身パーツにゾルや絵の具が付きます。これで同じ位置に印をつけることができました。印の部分に穴を開け、片方に真鍮線を刺せば完成です。


軸打ちの例

下半身パーツ、右足がはまる所が四角く凹んでいます。直打ちをする方はハンドドリルでここに1mmの穴を開けて下さい。
右足パーツ、下半身にはまる四角い出っ張りがあります。軸打ちをする方は出っ張りの中心に1mmの穴を開け真鍮線を刺してニッパーでカットします。


台座との接続部分にも1mm真鍮線で軸打ち
台座部分には1mmの穴を開けています。


左腕パーツ、ここも1mm真鍮線で軸打ち
首にも1mm真鍮線で軸打ち。
頭パーツ、首との接続部分に1mmの穴を開けています。穴が二つあるのは塗装時の持ち手をつける穴なので気にしないで下さい。


羽織パーツは何もしなくても上半身にはまります。襟巻きのリンゴを取り付ける部分が四角くへこんでいるので0.5mmの穴を開けています。
リンゴパーツ。小さいので0.5mmの真鍮線で軸打ちしました。


組み立て後の全体画像、このまま飾っても様になりますね。

磨き・表面処理

組み立てが終わったので次はパーツを磨いていきます。届いたばかりのパーツはバリや気泡などで表面が滑らかではありません、このまま塗装しても表面がガタガタて見栄えが悪いので紙やすり等で磨いていきます。

使用した道具

※編集中です。


調色

次は使用する色を作っていきます。使用する塗料はラッカー塗料とエナメル塗料、2種類の塗料を使用する理由はは後述します。

ラッカー塗料

髪色
ざっくり言うと白っぽいグレー寄りのピンクです。パステルピンクを作って緑を足すと作れます。

白をベースにレッドを少量、イエローで少し黄色味を足しグリーンで彩度を下げています。

着物の裏地
着物の裏地は緑に近い青を黒に近づけた色です。
青緑を作って黒を足していくと作れます。色が強すぎる時は白を足せばおとなしい色になります。

グリーンをベースにシアンを足して青寄りに、彩度が高かったのでクリアオレンジで彩度下げ、仕上げに黒と白で調整しました。

着物、羽織の白
白は少し黄色味がかった明るいグレーにしました。

白ベースに黒を少量足してグレー寄りに、そこへイエローで黄色味を足しました。

着物の影色
影色は青紫寄りの明るいグレーです。

白ベースにバイオレットを少量、クリアイエローで彩度を下げて少し明る過ぎたので黒を少し足してグレー寄りにしました。

着物の帯
帯の色は元イラストを参考に黄色強めの明るい茶色にしました。

白ベースに艦底色を足し明るい茶色に、赤みが強かったのでクリアイエローで黄色寄りに、彩度が高かったのでシアンで彩度を下げました。

羽織の模様
羽織の模様にはパステル寄りの紫を使用しています。

白ベースにパープルを少量、色が明る過ぎたのでイエローで彩度を落としました。

オベロンの金色
オベロン本体に使用した金色はブルーゴールドです。

オベロンの雰囲気に合わせるため落ち着いた雰囲気の青金を選びました。

台座
台座の金色はゴージャス感のあるレッドゴールドです。エナメルのクリアレッドとクリアオレンジでグラデーションもかけています。

本体がおとなしい分台座はゴージャスにしたかったので赤金をチョイス
エナメル塗料でグラデをかけて情報量も増やしました。

エナメル塗料

羽織の黒
黒そのままだと彩度が高過ぎて浮いてしまうので茶色と白を足して穏やかな色味にしてみました。

黒ベースにレッドブラウンを足して茶色寄りに、白を少量足して少しグレー寄りに調整しました。

着物の袖模様
着物の袖にある模様はグレーをそのまま使用しました。

色が強すぎると思ったら少し白を足せば穏やかになります。

羽織のオレンジ模様
羽織の模様はパステル寄りのオレンジです。今回は少し赤みの強いオレンジを使用しました。

色ベースにクリアオレンジを足しパステルオレンジに、クリアレッドで赤みを足しました。

ラッカー塗料とエナメル塗料の違い

 それぞれの塗料の違いですが、一番の違いはエナメル塗料の薄め液ではラッカーは溶けないと言う点です。つまりラッカー塗料で塗装した上からエナメル塗料で塗装すると、やり直したい時にエナメル塗料のみ落とす事ができるのです。
 今回は塗り分けた後の修正に対応するため羽織の模様を中心にエナメル塗料を使用しました。

塗装

 色が決まったので塗装していきます。資料が少なく、元イラストも一枚のみだったのでディーラーさんと相談してイメージを擦り合わせながら塗装しました。
 ここではディーラーさんに確認をしてもらった段階ごとに画像を載せておきます。

1段階
 まずは髪色、着物の白、裏地、帯色を塗った後羽織の黒をエナメル塗料で塗り分けています。この段階で全体のイメージが理想とズレていないか確認してもらいました。

白、黒、青緑の見え方がイメージ通りかの確認
着物の色は白を塗った後明るいグレーで影色を入れ少し白を足した黒で底と肩紐を塗り分けました。
髪色と着物の見え方の確認

2段階目
 羽織や着物の紐を塗り分けて着物の模様を手描きしています。この辺りは筆塗りで塗り分けています。

金色以外はエナメルで色を作って筆塗り、羽織の紐が一部グレーとの事だったのでこの後修正しておきました。
裾の模様、筆でランダムに手描きです。この段階では雰囲気を見るためにザックリと、ここはエナメル塗料なので拭き取って修正可能です。
ディーラーさんも雰囲気はOKとのことだったのでこの後一度拭き取って綺麗に清書しました。

3段階目

 羽織のオレンジや裏地を塗装しました。羽織の模様はこの段階では黄色強め、ディーラーさんと相談し赤よりが良さそうとのことでこの後修正しました。

模様をざっくりと、オレンジはエナメル塗料なので黒い部分にはみ出しても拭き取れます。こういう塗り分けでは修正可能なエナメル塗料が便利です。
裏地は着物と同じ青緑。
全体を確認、肌色が入ったので大分イメージが出てきました。
腰や羽織の紐類やブーツは筆塗りしました。

4段階目
 羽織の模様を赤寄りのオレンジに変更、りんごや台座の金色を塗って大まかな目線を決めました。羽織の模様は見本となるイラストが少ないのでディーラーさんと打ち合わせしながら要望を取り入れる塗り方をしています。

リンゴは鮮やな色を選択、台座に金色も入ってグッと華やかさが出ました。目線はポーズと合わせながら右下に。
羽織のオレンジはディーラーさんと相談して赤寄りのオレンジに。

5段階目
 大体のパーツに色が入ったのでここからは微調整、瞳を修正して台座にクリアオレンジとクリアレッドで色を足しました。

ディーラーさんに監修してもらいながら、まつ毛の色や瞳の大きさ色などを修正。
台座に色味を足して情報量を増やしてます。ついでに肌色にも赤みを足してます。

6段階目
 羽織に模様を追加。りんごの色味が鮮やかすぎたのでこの段階で修正しています。塗料を薄めに希釈して発色を抑えながらちょうど良い色味まで少しずつ塗り重ねていきました。その他に瞳を描き込んで表情をつけています。

羽織に紫寄りのグレーで模様を追加、りんごの色味も変わっています。
瞳を書き込んだので大分表情がついてきました。

7段階目
 完成目前、艶を調節して全体の確認です。
ディーラーさんにOKをもらってから羽織と台座にパールを吹いて完成です。
羽織の裏地も色々と手を加えたのですが写真撮り忘れてしまいました。

全体的には艶消し仕上げ、りんごやブーツは半ツヤ、台座は光沢に仕上げて質感に差をつけました。
羽織の模様、ディーラーさんと何度も打ち合わせをして模様を決めました。この後パールで仕上げます。
顔は小さいのでいつも程は描き込めませんでしたが造形に助けられて良い表情になりました。りんごの色味も良い感じ。

完成

 和装オベロン完成です。参考に資料が少なく、イメージを固めるためにやり取りが多くなってしまいディーラーさんに負担をかけてしまいましたがその分、要望をたくさん取り込めたので良い仕上がりになりました。ライトグレーを基調に華やかな色が入って上手く纏まったと思います。パールが写真に写らないのが残念。


最後に

 このオベロンは2024年10月14日のとなモ6にて展示、販売される予定です。是非見ていただけると嬉しいです。キットもパーツ数が少なく、複製も綺麗なので簡単に組み立てられます。オベロン好きな方にはガレキ未経験でも是非手にとってこの記事を参考に組んでみて欲しいです。
 見本制作を依頼して下さった増田屋さん、とても貴重な経験が出来ました。改めてありがとうございました。
 それでは!

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