見出し画像

金沢大学KUGS入試の出願に見る高大接続への対応

KUGS入試定員割れの衝撃!

11月20日に金沢大学が新しくスタートした入学試験の志願状況が確定した。総合型選抜と学校推薦型選抜の出願状況は以下のとおりである。

※金沢大学ホームページより

スクリーンショット 2020-11-22 195631

字が小さくて見にくいかもしれないが、全体の状況としては総合型選抜は若干の定員割れの状況で、ほぼ1倍。学校推薦型選抜においては0,8倍と定員を下回っている。

もう少し細かく見てみると、総合型選抜においては人間社会学域(文系学部)において定員を上回る学類もあるものの、理工学域(理系学部)においては全ての学類において定員割れの状況だ。
これは学校推薦型選抜においても同様の状況である。こちらの方にだけ準備されている医薬保健学域は本来であれば人気のある学部学科であるが放射線技術学科を除けばほぼ定員を下回る出願状況となった。

この出願状況を金沢大学のアドミッションオフィスがどのようにとらえているかは定かではないが、私としては予想をかなり下回る出願という認識だ。私の予想倍率は1,5倍から2倍の間だろうと考えていたので、若干の衝撃をもってこの数字を受け止めることになった。

なぜ出願が伸び悩んだのか?

私としては金沢大学のKUGS入試はこれからの高大接続の一つの形式として非常に魅力的だと感じている。しかしその一方で出願者が少なかったのは、高校側のほうがこの形式の入試に生徒をチャレンジさせることに二の足を踏んだ結果なのではないだろうか。

当然のことながら、新型コロナの影響で今年はいつも以上に教育現場が混乱しており、新たに始まる大学入学共通テストへの対応もある中で、生徒の背中を押すことが難しかったという面はあるだろう。実際にこの入試に出願することはこれまでの推薦入試に比べるとハードルは高い。

金沢大学のホームページから出願のチャート図を見てみよう。

スクリーンショット 2020-11-22 195445

図のタイトルにあるように、この推薦入試を受けるためには大学から「出願資格」を獲得せねばならず、そのためにはKUGS高大接続プログラムに参加し、さらに二種類のレポートの提出が必要だ。
さらに場合によっては共通テストを受験し、そこで必要な最低点数が明示されている受験形式もある。

こうした受験形式に対して、これまでのような護送船団方式で入試対策を行ってきた進学校においてサポート体制を構築するのは容易ではないと考えられる。したがって、来年度以降に急激に出願者が増える可能性についてもそう高くは無いと私は予想する。

高校での学びをアップデートしなければならない

私自身も高大接続で入試が変わると言われても正直なところこれまで半信半疑であったが、KUGS入試のような取り組みを特に国公立大学が本気で作り込んでくるとなると、大きなうねりが起きるのは間違いない。

私は約30年前に慶応大学SFCのAO入試を受験しているが、KUGS入試はその進化版と言えるのではないだろうか。実際にKUGS高大接続プログラムを見たわけではないので、そこでどのようなことが行われているのかはわからないものの、スケジュールを見る限りにおいては高3の夏休みに大学のプログラムを受講してレポート提出をするというのは非常に魅力的な取り組みではないだろうか。

現段階では入学時の学力レベルを担保するために、最終的には共通テストを全教科受験させる形式も存在するものの、今後は英語+1科目のように科目を絞って勉強させる代わりに合格者に対して入学前カリキュラムを設定するような流れになっていくであろう。

受験の在り方を変えることによって、高校での学びと大学での学びがシームレスに繋がる。そして大学は早い段階から入学予定者に対して準備運動をさせつつ、高校での学習内容が大学での学びにどのようにリンクしているかを意識させることができる。こうしたつながりは大学生のレベルアップにつながり日本の大学の国際競争力の向上へと向かう。おそらくKUGS入試はそういうことを見据えているはずだ。

日本政府は現在様々な分野のデジタル化を推進しようとしているが、これがなかなか進まないのは日本という国が世界最高のアナログシステムを完成したからに他ならない。そしてアナログシステムを支えるのは人海戦術であり、それを支えるために膨大な(紙の)資料を処理できる事務処理能力の高い人間を登用してきたのだ。
したがって、日本の教育はアナログシステムを支える人海戦術にマッチする人材を育成するために構築されてきたと言っていい。

そうなると懸念が生じる。GIGAスクール構想で学校教育にITを導入することに反対はしないが、ITを導入することで効率よくアナログ人材を育成しようとする逆説的な取り組みになるのではないかという不安をぬぐうことができないのだ。当たり前のことだが、プログラム教育をすればデジタル人材が育成できるというわけではない。

学びの方向性を決めるのは「出口戦略」である。出口で求められる能力を身に着けるために学ぶのが基本だからだ。ITを導入しても大学入試が変わらなければ高校での学びは変わらないが、ITの導入が無くても大学入試が変われば高校での学びは変化を強いられる。目的と手段は常に分けて考えなければならない。

大学が変わるためには自身の変化のみならず、高校生の学びをアップデートすることも必要だ。この流れは必ず主流となる。そうならなければ日本の教育はさらに国際的に遅れていくに違いない。

大学は変わろうとしている。次は高校だ。
これまでのカリキュラム、部活動、教材、クラス編成などすべてを疑うことができる学校こそ求められている。

塾もまたアップデートが必要だ

詳しくは次回のNeGLLaで書こうと思うが、われわれ塾もまた変化を求められている。むしろ高校に先んじてこうした新しい入試への対応をしていかなければならない。教科学習にとどまらないどんな学びを提供できるかが今後の塾の個性となりうるだろう。

アフターコロナのニューノーマル、高大接続対応など塾もまたアップデートしていかなければ生き残ることは出来ない。

進学塾GRIPもさらに進化していきます!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!