装丁とか①
今回の新刊について、やってみたかったことをやったので折角なのでまとめてみました。とはいえ、私もめちゃくちゃ印刷を熟知している人ではないので知らないことはまだまだ沢山あります…長いので途中で飽きるかもです。
ぱっと見2色ですが黒の表現を広げる為に4色使っています。
特色以外のブラックの使い方としては
●リッチブラック(C:60 M:40 Y:40 K:100)
●スミ(K:100)
+箔のブラックです。
※場所によってC:1 K:100のところもあります。
印刷指定として「スミノセ(オーバープリント)」という方法で刷ってもらっていますがつまりレイヤーで言う「乗算」ということです。これは指定がない限り印刷所では基本的に重なる部分は「ヌキ」で印刷するため黒と色の間に細い白線が出てしまいます。
スミノセは自身のデータで指定するため印刷所が行う作業ではありません。自分でやります。
紙種ヴァンヌーボについて
高級紙枠ですが比較的安価。インクの乗った部分にだけツヤが出て元の紙部分との質感の違いを楽しめる紙です。風合いが素晴らしいのでPP加工を加えるのが勿体ないくらい素敵な紙です。そしてインクの発色もとても良いです。詳しいことは竹尾のページをみてください。
特色の指定について
本刷りをする前に「簡易校正(簡易では特色使用不可なのでCMYK印刷、紙は実際に使うものを指定)」を行い、色の乗り方は事前に確認しました。というのも今回の表紙は「赤を鮮やかにしたい」というのがあったためCMYKでの表現に限界があると思ったからです。「本機校正」では特色使用可能です。
校正を見て予想通りCMYKではだいぶくすみました。特にトーン表現(網点)の部分は細かいのでCMYKで刷るとどうしても(ごく僅かですが)版ズレが起きます。これはインクを4回乗せるために起こることで不備ではなく当たり前の現象です。ヴァンヌーボが上質紙系統の紙ということもあり発色は良い方ですがコート紙に比べると色は沈むそうです。版ズレした網点が集まったこと+目の錯覚もあり、くすみがより浮いて見える…という気がしました。
全面カラーイラストや写真ではあまり気になりませんが今回のような色数が少ないものでは目につくので個人的な判断から本刷りではやはり赤は特色を指定しました。
特色とはCMYKで見せる色ではなく、使いたい色に調色され用意されたインクなので版ズレが起こる心配もなく鮮やかです。
DIC、パントーン、その他にも会社ありますが大体この2社がメイン。各社カラーチップを販売しているのでそこから選んで指定します。カラーチップは個人的に持ってる方は少ないと思います。webでCMYKから近い特色を探す方法もあります。(私はあまり信用していないので実際に見ます)
リッチブラックについて
「スミより真っ黒」がリッチブラックです。
リッチブラックのCMYKの各インク量については印刷所によって推奨があったりなかったりです。使う場合は必ず各印刷所のサイトで調べてから自分でデータを作りましょう。でも大体総インク量約300に収まる数値で指定します。「とにかく真っ黒にしたい」という理由でCMYK各数値をすべて100にしては駄目ということです。300〜330を越すとインク量が多く不備にあたります。
インクの乗せる順番について
特色を使うにあたり刷る順番を指定します。指定の仕方は印刷所の方が理解しやすいようにお伝えすれば良いのでこれと言ったルールはありません。私は上記のような図を送ってご説明しました。(仮段階のものなので実際に刷られたものとは異なりますし、このときはエンボス仕様で考えてました)
インクの乗せる順番で表現方法はだいぶ変わります。今回は特色先刷り→CMYKでお願いしました。この指示は必須ではありません。仕上がり見本に合わせて印刷所で検討するのが主です。彼らのがプロなので…
けれど自分でもこの刷る順番を理解しとくと仕上がりの発色や効果を狙ったデータを作ることができると思っています。
リッチブラック使用場所の選択について
基本的に白の上に乗る黒はK:100で問題ないですが、黒の下に色や画像がある場合、スミノセだと上記の画像のように透けます。これを回避するためにリッチブラックを使用します。
しかし、リッチブラックの上に文字や線が入る場合はインク量が多いため潰れます。潰れを防ぐには文字を微妙に太らせるか、1番安全なのはリッチブラックにしないこと。黒の下に絵があり、どうしても透けるのは嫌だ!という場合は「毛抜き」という処理をします。私の場合、これは本の背で行っています。
箔について
上記で使い分けした黒だけでも十分な表現は可能ですが、フレーム状に組んだ文字達をより立たせるために箔を使用しています。
色だけでなく質感で見せる印刷物として手に取る楽しみが増えるので箔押し、好きです。
質感で見せるならエンボスと言う手法もありますがなかなか高額になってくるため断念しました…
最後にデザインについて
今回やりたかったのは組まれたデザインの中にある違和感的なものを表現しようと思い、1つのフォントだけどセリフ、サンセリフの2タイプがあるフォントを使い、組み合わせた文字を作っています。
タイトルで使ったあの曲の中にも夫婦の間にある違和感のような(悪い違和感ではないです、個人的な解釈です。)ものが楽しいメロディーの中に組み込まれているため、そこを少しデザインに組み込めたらと思いました。
そして、今回のは自分のなかでできる範囲で仕上がりが更に楽しみになる印刷をしようと思い、地味なところにこだわりました。
通常印刷でも細かい所をしっかり作れば印刷はよりキレイに出ますし、仕上がりも楽しみになります。やりたいことがやれるのはやはり楽しいです。しかし、納期に余裕をもってやることを強くおすすめします。大変なのは印刷会社さまなので…
まあ、
色々考えて作ってみましたが受け取り方は見てくださった方々、それぞれで良いと思っているのであまり気にせず私のぼやきは流し見して頂きたいのも本音です。
漫画も、色々考えましたがうまいこと表現しきれてないので、ほんとになんとなくでお読みくだされば幸いです…でも愛はある(強火)
印刷見るの好きなので折角なので書いてみました。読んでくださった方、ありがとうございました。
(印刷:STARBOOKSさま)
余談すぎるもの
本に合わせた+αとしてノベルティ的なコーヒーギフトも作りました。文字と赤ベタだけ刷ったトレペ封筒にイラスト入りのドリップコーヒーを入れることで表紙と同じデザインになります。
表紙作ってるときにギミックありのもの、なんか作れそうだな〜と思ったので試さずにいられませんでした…
ギフトについては特に販売も何もしていないため、本当に自己満のグッズですが、このときも赤に特色を使用したため色の合わせができて良かったです。同じ数値、同じ紙で入稿しても印刷所によって仕上がりが異なるのは仕方のないことなので、そのような場合でも特色は有効です!でも封筒は紙が違うので発色の差異はやはりあります…!そういうものです。
並ぶと可愛い!ヤッター!
おわりです。