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装丁とか②
久しぶりに本を作りました。前回の本とその後にもう一冊(これはnoteには載せてません)出してからいつの間にか1年経ってしまいましたがWEB再録を兼ねて本にしました。今回もやってみたかった印刷を行ったので備忘録として書いてみます。
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インク:4色(Kaleido®)+白インキ
箔:ブラック
今回も見た感じそんなに色数がないように見えますが、それは私自身がカラー絵が不得意なのと、単色でパキっとさせたデザインが好きだからです。無理はしない。できることでかっこよく見せる方法を探そうの前向きな思考です。けれど、色数が絞られると通常の掛け合わせ印刷での単色ベタ塗りにはシビアな部分が出てきます。それはインキの発色です。
CMYKとRGBの発色の違い
言わずもがな、印刷は基本的に「CMYK」のデータを使います。印刷プランでは「フルカラー」「プロセスカラー」「4C」と表記されます。CMYKの色は光が反射した状態で見る色なので感覚として「美術館で絵画を見る色」と思ってください。印刷では「シアン+マゼンタ+イエロー+ブラック」のインキを掛け合わせて色を表現します。この4色は混ぜれば混ぜるほど暗く濁っていく(黒くなる)もので「減法混色」と呼ばれます。
これとは逆に、混ぜると明るくなる(白になる)「加法混色」というものがあります。それが「RGB」です。「レッド+グリーン+ブルー」の色で構成され、スマホやテレビなどのモニターで見るときの色になります。
その他にも、色を数値化するために用いられるカラースペースはLAB、LRV、HEXという概念がありますが、印刷では上記の2つを理解していれば大丈夫!もちろん、私も全て把握しているわけではありません。カラースペースについては以下のページがとてもわかりやすかったです。
一般的な印刷はオフセットでもオンデマンドでもCMYKを使用しますが、RGBでも印刷を受け付けてくれるところもあります。同人印刷は特に多いかも。RGBデータを印刷する方法は2つあります。
ひとつは印刷所でRGBデータをCMYKに変換してくれるサービスを使う方法。ふたつめは「RGB印刷」を使う方法です。
4色+2色の6色印刷でRGBを再現!
CMYKの4色にビビッドグリーン(VG)・ビビッドピンク(VP)の2色を加えることで、より鮮やかな表現が可能です。ピンク系、グリーン系の絵柄が、より効果を実感しやすくなります。
私はこれまでRGB印刷を使用した経験はありません。デジタルフルカラーイラストや写真を全面に使う印刷物のときはRGB印刷は効果を発揮しますが「まあそこまでしなくてもいいかな」という感じ。CMYKでも色を鮮やかに見せる方法はたくさんありますし、手っ取り早く「この色だけは鮮やかに見せたい」という箇所がある場合はCMYK +特色を使えば良いので、CMYK印刷を選択することが多かったです。今回も当初はその予定でしたが、いざ仕様を確認したときに問題に気づきました。
あれ?6色に収まらなくない?
印刷に適した色数
先程も書きましたがCMYK印刷とは4つの色を使います。これが基本です。ですが、より高度な印刷表現を必要とする場合6色や8色の印刷機を使うことがあります。今回は6色まで。
※インクジェットプリンターなら8色以上での印刷が可能ですが少部数向き。ポスターなどの1枚刷りで使います。
今回の装丁で使う紙は「バルキーボール(灰)」紙自体が灰色です。その紙色を背景色にしたいので、部分的に白インキを使おうと考えていました。これで1色埋まります。しかしその他に赤と青を特色にする予定が、これではどう考えても7色…
※少しビビットな色味の赤と青にしたかったのでCMYKでの再現は難しいと思ったからです。
折角久しぶりに作る本、なんとかイメージに近い形にしたいので特色をやめて、RGB印刷を試してみようかなと思ったのですが、また違う方法を見つけました。
広い色域を再現できるカレイド印刷
広演色プロセスインキKaleido®の特長
4色プロセスインキでありながらAdobeRGBの色再現領域をほぼカバーできるKaleido®は、従来インキによる印刷ではできなかった鮮やかな色彩と滑らかな階調を再現します。
RGB印刷に切り替えて入稿データを作る際、色々調べた中でカレイド印刷の文字を見つけました。これもやったことない。気になる。しかも「AdobeRGBの色再現が〜」と描かれているので普段PhotoshopやIllustratorを使用しているAdobeユーザーとしてなんとなく安心感がありました。カレイド印刷に関しての詳細はこちらにわかりやすくまとめられています。色域が広がることでブラックにも深みがでるそうです。なんて素晴らしい!
印刷データの版分け
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という事で、Illustratorで作っていた表紙データを版ごとにレイヤー分けし、カレイド印刷のところだけをpsdデータにしてリンク配置にします。
細かい話しですがpsdデータやjpegの画像リンクデータは100%配置を心がけると必要最低限のデータ容量に抑える事ができます。
今回のような色紙を使う時に気をつけるのは、印刷は「乗算」で色が乗るということ。そのまま印刷すると紙色を拾ってせっかくのカラーが沈んでしまいます。それを避けるためにも白インキはマストでした。赤と青の部分は鮮やかに仕上がるよう先に白インキを刷ってから色を乗せています。
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このように白インキを使った印刷は身近にたくさんあります。1番わかりやすいのはスナック菓子の袋です。紙媒体とは異なる印刷物ですが、スナック菓子の袋は銀色のフィルムがベースなので「白版」と呼ばれるものを必ず作ります。これが白インキです。効果を狙ってあえて白版を使わない箇所を作ると、そこだけフィルムの色を拾い、特色や箔押しをせずにメタリックな質感を作ることができます。
その他にも透明フィルム表紙の本を作るときも白版は作ります。(あえて透けさせるのも可愛いです。)白インキをギミックに使うとおもしろいものがたくさんできます。
その他
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前回に引き続き、今回もタイトル部分だけ箔押しを使いました。ザラっとした質感が際立つ用紙に使う箔押しは本当にかっこいいです。満足!
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カード印刷であればボール紙は良く見かけるんですが、装丁に使うには一般的なボール紙は厚すぎる…似た雰囲気の紙でファーストヴィンテージも見ていましたが、紙サンプルを原寸で見たときにどうも青みを強く感じてしまい、イメージとは違うかなあと悩んでいたときに見つけたバルキーボール。個人的に好きな装丁デザイナーの方が開発に関わった紙だそうで、とてもお気に入りの紙になりました。かわいい!また使いたい!
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イベントで使ったポスターも表紙をちょっとアレンジしたものを使っていました。タイトルをはじめ、この本を作るにあたり筆文字をたくさん書きましたが、上手くはないにしろ自分のイメージの形に作れたのが楽しかったです。
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めちゃくちゃ長くなってしまいました。
漫画も自分的には頑張って描いたなあ、と思えるお話を本にできたのでとても気に入っています。
お手にとって頂いた方々、本当にありがとうございます!ここまでお読みいただきありがとうございました。
(印刷:西村謄写堂さま)