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【清水由起のデータから読み解くギフト事情vol.1 】 2023年のギフト総市場サマリー
この記事を書いた人、著者紹介
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清水由起
ギフトアナリスト。
株式会社矢野経済研究所で、ファッション関連の消費財分野や複合商業施設のマーケティングを担当。業界唯一のマーケティング資料「ギフト白書」を統括し多様化するギフト業界を体系的に調査している。
ギフト研究所特別顧問
存在感増すコミュニケーション手段としての「ギフト」
2023年のギフト市場規模は前年比102.7%の10兆8,190億円になるものと推計した。
ギフトには、お祝いやお礼、感謝、挨拶、お詫び等の意味を込めて贈るものがすべて含まれる。贈られた相手が喜ぶモノやコトであればどんなものでもギフトになり得るため、ギフトオケージョン(イベントや機会)、ギフトアイテムの多様化が進んでいる。また、ギフトアイテムの多様化により、ギフトを購入するチャネルの多様化も進んでおり、市場はますます捉えにくくなっている。さらには、ギフトを贈る主体は個人だけでなく法人も存在しており、企業がノベルティやキャンペーン等の景品として贈るもの、株主優待や周年記念等のイベント等で贈るもの、取引先への手土産や季節の挨拶として贈るもの、従業員への福利厚生やインセンティブとして贈るものなど、すべてがギフトに含まれる。
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コロナ禍では、人々が集うことで発生するギフト需要が大きな打撃を受けた。しかし、家族や友人と直接会えない、お盆やお正月に帰省することができないなか、直接会う代わりに気持ちを贈る「ギフト」が活発化した。アフターコロナと言える2023年もその傾向は継続しており、改めてコミュニケーション手段としての「ギフト」の存在価値が高まっているといえる。
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2023年の市場規模はコロナ前を超えて過去最高に
ギフトオケージョンごとの好不調のトレンド、コロナ禍がプラスに作用したもの、マイナスに作用したものなどが存在するものの、ギフト市場全体で見ると、市場規模は2023年にコロナ前の水準を超え、過去最高に達したものと見られる。
冠婚葬祭を中心に贈られ返礼が付きものである「フォーマルギフト」においては、儀礼や人付き合いに対する志向の移り変わりによって縮小傾向にあることに変わりはないが、コロナ禍の影響を大きく受けたブライダル分野と仏事分野の回復分が上乗せされ、長寿祝いや病気見舞いなど、高齢の人に対するギフトの好調は継続すると見込まれる。
シーズンイベントやプレゼント要素の強い「カジュアルギフト」では、近しい間柄でのコミュニケーション手段としてのギフト需要が堅調に推移することに加え、手土産やインバウンド客も含めたお土産の回復が大きいと考えられる。
法人ギフトにおいては、新生活様式に即した販促活動を実施する企業が目立ち始め、配布するアイテムや配布方法の工夫によって、再び需要が高まっている。また、対取引先(BtoB)や、対従業員(BtoE)の分野での法人ギフトシーンも多様化し始め、企業がギフトを利用することの価値が再認識されているといえる。こうした新たなマーケットが継続して伸長していることで、回復傾向にある法人ギフト市場が更なる盛り上がりを見せている。
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