
【店づくり相談室 vol.23】桃太郎はあなた
節分の鬼
2月の話題と言えば、節分を思い浮かべる人も多いだろう。節分というと2月3日のことが多いが、2025年は暦の関係で2月2日が節分になった。節分とは、もともと「季節を分ける」という意味で、春夏秋冬の4回あったのだが、旧暦の1月(現在の2月)の節分が一年の始まりとして最も大切であると考えられてきたことから、現代に定着したもののようだ。
古来より季節の変わり目には、邪気が家の中や人の心の中に入ってくると信じられており、それらの邪気を鬼に見立てて追い払い、幸運を呼び込むために豆まきが行われるようになった。
節分の鬼と言えば、赤鬼を思い浮かべがちだが、節分の鬼の色は「赤鬼」「青鬼」「黄(白)鬼」「緑鬼」「黒鬼」の5種類がある。これは人間の5つの悪心を「5つの鬼」に例えて色分けしている。赤鬼は欲望や渇望。青鬼は悪意や憎しみ、怒り。黄(白)鬼は後悔や我執。緑鬼は怠惰や過食、不真面目。黒鬼は、疑心や愚痴を示している。
5色の鬼の集結か!?
中居正広氏と女性とのトラブルをめぐり、フジテレビに激震が走っている。動画撮影を禁じた閉鎖的な記者会見を受けて、CMスポンサーが雪崩を打ったように撤退。その後、一転してフルオープンで10時間超という異例の謝罪会見に踏み切ったが、依然として騒動が収まる兆しは見えない。トラブルの真相は本人しか知り得ない。
米国アカデミー賞候補映画「Black Box Diaries」
映像ジャーナリストである伊藤詩織監督の「Black Box Diaries」。自身が被害にあった性的暴行への調査に乗り出していく姿を自ら記録したドキュメンタリー映画だ。2015年当時26才だった伊藤詩織さんがTBSテレビのプロデューサーに性的暴行を受け、民事訴訟で損害賠償を訴えた事件。性被害に遭った女性自身が記録して、映画化されるという事例は映画史上にないだけに注目度が高い。
この映画のテーマ曲は、ディスコサウンドの名曲グロリア・ゲイナーによる恋のサヴァイバル。「最初にそれが起こった時、私は凍りついて死んでしまおうと思った」「それでも生きていかなくちゃいけないの」という歌詞が被害者の心を映す。
事件後、彼女は警察に訴え、逮捕状も発行されたが容疑者が逮捕されることはなかった。彼女は受け入れることができないまま民事訴訟を起こした。しかし、世間からは「売名行為だ」と激しく非難された。加害者からも同意があったと反論され裁判になる。
映画の核心部分は、彼女は、完全に酩酊状態で意識がなかったということがわかる映像が使われている点だ。裁判で証拠として提出された映像には、意識がなく立つこともできない被害者を無理やりタクシーから引き降ろす加害者の姿をホテルの監視カメラが捉えていた。さらに、タクシーの運転手は、二人に行先を聞いた際、「ホテルへ」と言う加害者に対し、「いや、駅で降ろしてください」と被害者が繰り返していたと証言をしている。
映画のタイトルにもなっている”ブラックボックス”というのは、担当の刑事が被害者に言った言葉。「貴方は加害者とお酒を飲んで、そのお店で意識を失ってしまった。気が付いたら被害に遭っていた。そうなると何があったかということは、わからないということだ。だからブラックボックスなんですよ」。真相解明の難しさを物語る象徴的なフレーズだ。
この事件では、加害者は不起訴処分になり、その後の警察審議会でも不起訴相当となった。事件当時は同意がない行為であっても、被害者が徹底的に抵抗しない限り暴行と認められなかった。この事件を契機に2017年に刑法が改正され、以降同意がない限り強制性交等罪は成立する。しかし、事件当時の法律では、被害者は酩酊状態で意識を失っていたために、抵抗することもできなかったため強制性交等罪は成立しなかった。
それでも警察の担当刑事は動いてくれた。しかし、警察の上層部から圧力がかかり、逮捕も起訴もされなかった。その理由を、被害者は後に知ることになる。気の毒に思う担当刑事からの電話によって。それによると、ある力によって担当刑事は事件から外される。「上の方からストップがかかった」という映像も確認できる。では、なぜストップがかかったのか。加害者とされる人間が当時の内閣総理大臣 安倍晋三に最も近い男といわれていたからだ。そこを通して圧力がかかったのではないかと国会でも質問があったので記憶に残っている方もいるだろう。
国家を巻き込んだ被害者の戦いを描く映画のように感じられるが、この映画は日記なのだ。被害者は、記者会見でも、毅然とした態度でも涙を見せたり、上ずったり、感情的になることもなく、はっきりと事実関係を述べている。それによって被害者らしくないという評価を受けた。淡々とした態度に事実関係を疑問視する向きもあったが、記録では、被害者がスマホで自撮りしている映像が多々見られる。そこでの彼女は泣いている。決して外では見せなかった顔だ。一番味方して欲しい両親からも恥を晒すからと止められる。しかし、彼女は負けなかった。孤立無援で自分に対する攻撃のすべてに対して訴訟を起こし戦っている。何度もくじけそうになり、何度も涙を流している。
その後の裁判では加害者に332万円の賠償が命じられ、最高裁での上告が退けられ、判決が確定した。この事件は、性被害を告発する「#Me Too」運動の高まりに大きな影響を与えたと言える。
この映画が日本で公開される予定はない。裁判で重要な証拠となった映像の許可が下りないからだ。裁判で使用するために借りた映像を映画に使ったことで、担当弁護士や証拠映像の提供者に迷惑がかかる。今後同様のことが起こると証拠映像を提供してもらえなくなる。だが、この映像が無ければこの映画は成り立たないし、彼女はいつまでも叩かれ続ける。だから使わざるを得ない。だが、映画で使うという前提では、ホテルの証拠映像は提供してもらえない。戦うための武器として映像は必要だった。
自らを律するということ
彼女の告発が無ければ、その後の同じような告発は出てこなかっただろう。この映画でこのようなある意味強引なやり方をとらざるを得なくなった背景を考える必要がある。
法は誰のものか。そして、取材の根幹やSNSを含めた発信の在り方、人としての品格が問われる。誰もが情報発信できる時代だからこそ、一人ひとりが自分の行動に対する責任と真の自律が必要だ。さもなければ知らぬ間に人を貶めることにもなりかねない。
鬼は人間の心の中にいる。心の中の鬼は、豆や落花生で外に追い払うことができない。自分の心の中に鬼はいないと思っていても、何かのきっかけで生まれてくるかもしれない。心の中から鬼を追い出すことができるのは、正しくやろう、優しくいよう、正直に生きようとする前向きな気持ちだけだ。心の中に鬼が生まれないように、また、鬼が生まれてもすぐに退治できるように、自分を律し、他者に寄り添うことで、日頃から自分の中の鬼退治を心がけたい。
~About us~
今後の予定と振り返り
https://note.com/gri902/m/mf7ae5c36aee9
会員募集中!!
企画型共創コミュニティに参加しませんか?
会員同士一緒になってギフトの価値を創り出していく場です。
