アドバンスト・ファイティング・ファンタジー第2版 ADVENTURE CREATION SYSTEM の紹介とファーストインプレッション
実際に遊んでみた記事も書きました👇
よかったらこちらもどうぞ。
2024年6月、AFF2eの新モジュールである『ADVENTURE CREATION SYSTEM』がKICKSTERTERの支援者に配信されました。個人的にはリリースの予定がアナウンスされてから心待ちにしていたモジュールです。
まだ邦訳されていませんので興味があっても読みすすめられていないという方もいらっしゃるかと思いますので、自分もまだ斜め読み段階ではありますが、紹介させていただきたいと思います。
製品版はDriveThruRPGで販売開始!
https://www.drivethrurpg.com/en/product/483969/AFF-Adventure-Creator
そもそも何のモジュール?
『ADVENTURE CREATION SYSTEM』は、本来、ディレクターが必須であるAFF2eをソロで遊んだり、ディレクターのシナリオ構築を支援したりするための、いわゆるGM engineの一つで、440ページを超えるAFF2eモジュール史上屈指の大作です。本文の目次を追いながら具体的にみていきます。
『ADVENTURE CREATION SYSTEM』の目次
1)INTRODUCTION/序文
著者であるダニエル・クィンラン氏による序文です。
このモジュールのターゲットは
と書かれています。
よくよく考えるとこれは「AFF2eを楽しむすべてのひと」ですね。
2)USING THIS BOOK/この本の使い方
各章要約、クイックスタートガイドなどが書かれています。
印象的な記載は、
という部分で、このメッセージは実際、表現をかえて全編にわたり繰り返し強調されています。
これはこのシステムの一貫した方針であり、同時にAFF2e全体でも重視されている思想ですね。
3)GENERAL GUIDANCE/全般ガイド
AFF2eの基本ルールも含む運用に関する全般的な指針です。
・ダイスとアイディアのどちらを優先するか
・技能判定、戦闘、魔法、モンスター運用、死、難易度などの指針
など、ゲーム全体にかかわりのある処理や判断について丁寧に解説されています。特に技能判定の処理はかなりのページが割かれていて、通常のセッションでも指針として役立ちそうな内容になっています。
この章の後半は実際にこのシステム全体を使ったソロプレイ例になっており、キャラクターに肉付けし、ミッションやクエストを受け、作成した街をさまよって、悪役と戦い、次の冒険へという内容になっています。
本書で提案されるシステムの全体像を知るために真っ先に読みたいパートかもしれません。
最後にゲームで使用される用語の整理があります。
4)SETTLEMENT/都市・町・村
この章からいよいよコアなシステム部分の解説になります。
最初は都市・町・村(以下、便宜上まとめて都市と表記)を冒険の舞台とした場合のルールです。ちなみにこの章だけで100ページを超えます(!)。
主に以下のルールが説明されます。
・生成
都市のマップ、各施設(宿屋や市場、寺院など)、起源、支配的な種族、都市の背景、現在の支配者などを決定します。
一部任意に設定するものもありますが、基本的にはランダムに決定できます。
・遭遇
施設別/昼夜別に発生するイベントの解説です。
施設を訪れるとイベントが発生します。
また、各遭遇(イベント)については、表で示すだけでなく、それぞれしっかりしたイベント詳細の解説ページが用意されています。
ほかにストリートファイトになった場合の状況表や、不法行為をした場合のイベント表など多数の表があります。
5)DUNGEONS/ダンジョン
ダンジョンも4)都市と同様、冒険の舞台となりますので基本的な構成は都市と同じように生成とイベントを中心とした章となります。
ダンジョンの属性(地下水道なのか、なにかの巣なのかなど)や、状況(崩れそう、じめじめしているなど)、部屋の状態(雑然としている、傾斜しているなど)、登場モンスター、罠、秘密のドアなどが解説されます。
ダンジョン生成にももちろんサンプル解説があり、2階層にわたる生成例が示されています。
ルールブックおよび各モンスター事典にランダム表があるほか、
本書にも以下3冊を使用したモンスター表があります。
・モンスター事典
・超モンスター事典
・真モンスター事典
各事典への参照になっているため個々の解説は省かれています。
後続の6)野外の表も利用できるとのこと。
6)WILDERNESS/野外
この章も冒険の舞台となる骨格となる章ですから、生成と遭遇が中心となります。
野外のマップ生成については
1)自分で描く、2)素材を借りてくる、3)ダイスドロップ式
に加えて
4)物語主導
も提案されています。
物語主導とは目的地までのみちのりやその経過日数をどういう舞台ですすめたいかで地図を構成する方法です。
また、
完全にランダムに生成する方法
としてヘックス(六角形マス)か四角マスの紙上でスタート地点から時計回りにランダムにエリア(森なのか草原なのか)を決定する方法や、方向自体もランダムに決定する方法が解説されています。
野外については都市やダンジョンとは時間の流れがかわりますので、時間に関する考え方が解説されているほか、狩りや採餌のルール、乗馬した場合の考え方なども紹介されています。
各エリア(草原や森など)別に環境表(天候、過酷さ)や昼夜別の遭遇表(たまに若いドラゴンがとんでいるらしい・・・)があります。
また、かなり特殊なエリア(ゴブリンの集落や現世とはいえないような環境)の解説もあるようです。
7)POLITICAL,RELIGIOUS AND SOCIAL FACTORS/政治・宗教・社会的要因
ある地域や都市についての政治・宗教的な背景を決定したり、ヒーローや悪役の社会的背景を肉付けするための章です。
ある地域は善良なのか悪にそまっているのか、どの神を信仰しているのか。また、支配力はどれほどか。
ヒーロー/悪役はどれほどの社会的地位と資産をもっているか。組織的なつながりはどうか。誕生月(星座に近いもの。アランシアとクールで異なる)、人生経験(それぞれちょっとした特性が付与される)や、因縁の憎むべき種族、性格的なこだわりなどなど、ゲーム上の彩りやストーリー的な動機付けなどを膨らませるための表が多数あります。
8)RUMOURS AND EVENTS/噂と出来事
この章は冒険の噂や出来事をランダムに生成するオプションの章で、「魔力の奔流」や「神の怒り」といった6つのカテゴリから、さらにより具体的なイベントをランダムに決定できます。イメージとしては冒険中に適用される継続的な環境効果に近いものです。
このオプションは、そのイベントならではのペナルティやボーナスを発生させ、ゲーム世界の現在の状態を反映する独立したスパイスのようなもの、という見立てもできますし、自己実現的に現在のミッションと直接的に連動させたり、伏線として活用することもできそうです。
9)VILLANS/悪役
冒険のターゲットとして欠かせない悪役を具現化するための章です。
続く10章のミッションとも連動したサンプルの悪役が揃えられていますし、ランダムに生成するためのルールも備えていて、悪役のステータス、動機、手下、報復方法、戦闘時の戦術などを決定するための表があります。
10)MISSION, QUESTS AND ADVENTURES/ミッション、クエスト、冒険
4)都市~6)野外の冒険の舞台が本システムの外骨格だとすると本章や8章、9章は心臓部にあたります。
なお、ミッション、クエスト、冒険は呼び方がいろいろあることを示しているだけで、ルール的な違いはないようです。
4つのカテゴリーによる24のサンプルミッションが都市、野外、ダンジョンそれぞれが舞台の場合の運用方法とともに示されるほか、ミッション生成ルールが解説されています。
ミッション生成は以下のような表で行います。
・フック(きっかけとなる出来事)
・ヒーローにとっての動機となる理由
・目標や目的
・タスク
・やっかいごと
・時間制限
など
タスクはミッションの攻略に必要な課題で、戦闘をはじめ、例えば「登攀が必要」、「敵が群れであらわれる」、「交渉が必要」、「釣りが必要(!?)」、「情報収集が必要」、など主に成否判定を要求します。
やっかいごとは戦闘やミッションを構成する障害(ときには良い効果も)となる状況のことで、ミッションに彩りを与えます。
例えば「不意打ちが発生する」、「子供を保護しなければならない」など。
時間制限は、特にない場合もありますし、「休憩するたびに敵が有利になる」、「ゲーム時間内に攻略しないとミッション失敗」など。
11)ADVENTURERS GUILD/冒険者ギルド
冒険者ギルドのオプションルールです。1日に1度申し込めるギルドの課題をクリアすると特典があります。いわゆるサブクエストですね。
(2024.6.25 意味を取り違えていたため説明を修正)
課題をクリアするとレア商品を購入できたり、冒険者ギルドのネットワークで情報を収集できたりするようです。知識ロールなどで失敗した際のリカバリなどにもつかえそうですね。
課題の表や特典として取引できるものの情報が掲載されています。
12)ADVENTURE CONSEQUENCES AND REWARDS/冒険の結果と報酬
冒険に成功した場合に得られる社会的な報酬(君主からの褒美など)や、失敗時のペナルティ(神の怒りを買って運点が下がるなど)、経験点の処理についての章です。
13)TREASURE/宝物
モンスターや悪役から奪取できる宝物などの一覧表です。
宝物の状態(隠されている、ちらばっている)などを決定するための表や、効果(良い効果、呪いなど)の決定表もあります。
マジックアイテムの生成方法も掲載されています。
APPENDEXⅠ- LIST OF TABLES/付表1- 表索引
ならんでます。とてもたくさん。表ではなく索引ですが。
APPENDIXⅡ- LIST OF CODES/付表2- 略号一覧
(IN)はINN(宿屋)、(MP)はMarketPlace(市場)などの主に本書で使われている略号の一覧です。
APPENDIXⅢ- SOLO FLOWCHART/ソロ用フローチャート
3章のプレイ例と合わせて早い段階で目を通しておきたいチャートです。
面白いのは「単に世界をぶらつく」がフローの一つになっているところ。都市や野外といった冒険の舞台を生成したら単にぶらついてみるという遊び方です。確かにこれでも無数のイベントが発生します。ロードムービー的にただひたすら旅をするということもできそうですね。
◆ファーストインプレッション◆
現在、GM不在システム(GM engineなど)はルール汎用のものも含めて多数リリースされていますが、AFF2eではどのような形態を取るか非常に関心がありました。
現状のGM不在システムはOracleシステムとも呼ばれるように『問いかけに対するYES/NO』や『抽象的なキーワード連想』による物語主導のプレイスタイルのものがほとんどです。
このスタイル自体はゲーム性よりも、ナラティブ方向にシフトした現代らしい提案であり、これもまた素晴らしいものですが、このスタイルはAFF2eになじむかどうかという期待と不安がありました。
しかし、実際にリリースされた本作は「これぞAFF2e」といってもよい古典的テーブル(表)参照によるエンジンでした。
AFFシリーズは伝統的に多数のテーブルを使ったルールを多く提示してきました。AFF1e時代には「橋の材質と幅」を決定する表まであったほどです。
本書はまさしく伝統を堅持してやってくれたという印象です。たまげる量の表が本書にはつまっています。
シナリオジェネレートはアナログゲームに限らずずっと以前から取り組まれてきました。「永久に遊べる」はゲームというメディアが普遍的にもつ究極の目標です(遊ぶ側にとっては、ですが)が、その試みはなかなかうまくいきませんでした。扱う情報量が膨大になるわりに生成結果が単調になってしまうためです。
AI時代の今なら、デジタル分野ではあるいは成功する(既にしている)かもしれませんが、それを本作ではアナログでやってのけた。
しかも古臭いわけではなく、「ルールは拘束衣ではなく楽しむためのものだ」というAFF2eの思想を基盤にして膨大なデータとともに、いつでもそれらを取捨選択しながら、遊び手が自由に改変しながら遊べるよう「やわらかく」配慮して作り上げたことがうかがえました。この配慮と、イベントやタスクの「適度な具体性」が発想のひろがりに寄与するため、提示されてみるとAFF2eらしさを強く感じられるとともに、物語主導の現代的なRPGのあり方にブッ刺さっている気がしました。
本書をあちらこちら参照しながらこのノート記事を書く過程で、「これは実際、永久にあそべるのではないか」と思うにいたりました。力作だと思います。
またあらためてテストプレイなどしたら記事にしようかと思います。
記事におかしなところがありましたら教えていただけると幸いです。
本記事を読んでくれた方、ありがとうございました。
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