イシヅカユウさん×ブルボンヌさんが登壇!『ドゥーム・ジェネレーション』イベントレポート!
鬼才グレッグ・アラキ監督の衝撃作、映画『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』の公開を記念して、11月9日(土)にトークイベントを開催。
音楽への造詣も深く、ファッションモデルや俳優として活動するイシヅカユウ氏と、女装パフォーマーでジェンダーや多様性に関する講演活動でも活躍するブルボンヌ氏をゲストに迎え、作品の魅力について熱く語っていただきました。
ブルボンヌさんは作品の感想について、「多分1割くらいの方は、90年代映画のお洒落な映画を観に来たつもりが、生首が飛ぶシーンから『あれ思ってたのと違った?』と思ったのではないかと。でも、あれこそグレッグ・アラキ監督の魅力。若者たちの今どきを描く映画は多いですが、もっと突き抜けた意味のお洒落さを持っている。私の大好物な展開でした。無茶苦茶で、今まで残虐さもありつつポップだったのが最後に背筋が凍るようなガチな部分も見せつけられる。そういうところも含めて、破壊的でありつつも物凄いメッセージが込められている。また私はリアルタイム世代なので、今再評価されているというのも感慨深い映画でした。好きです」と大絶賛。
今回初めて観たというイシヅカユウさんは「頭を横から殴られたような気持ちになりました」と衝撃を受けたと明かし、「私も最初はポスターを拝見し、“90年代”、“リバイバル”、“お洒落”といった気持ちで観たんですけど、先程も出てきた生首が飛ぶシーンから、ホラー好きの私が好きなやつかも。と思って、観ていたら走り抜けちゃいました」
ブルボンヌさん「80−90年代はこういった『悪魔の毒毒モンスター』(84)みたいなやりすぎスプラッターが多く出た時代だったからそう言ったエッセンスもこの作品は取り込んでいるよね」
と、90年代のスプラッター要素も楽しんだと話していただきました。
「グザヴィエが聖なるものを帯びた存在として登場し、規範を超えた遊びを教えてしまう」
印象に残ってるシーンについて、
ブルボンヌさんは「エロの数々のシーンが好きで。90年代って色んな意味でそういうことも凄かった時代なんですよね。当時はクラブイベントなども突き抜けていたの。ステージ上で、ドラァグクイーンをレズビアンの子がペ●スバンドをつけて、ア●ルをやっつけちゃうみたいなショーをやってた時代だったの。今だったらスマホで撮られて拡散されて色々問題になったりするかもしれないけど、当時はサブカルという言葉で、悪趣味なものも流行っていたし、色々なドギツイことをやれちゃう空気があったの。その中でもこの映画が見せてくれたものって強かったと思う」と当時のリアルも解説。
さらに「グザヴィエがめちゃくちゃセクシー。本当に良かった。多分、彼は一瞬宗教的な看板を見て、思いつく感じでグザヴィエという名前を名乗っていた。グザヴィエって有名な宣教師フランシスコ・サビエル由来の名前なの。それで最初はグザヴィエを毛嫌いしているエイミーが、そそられるものを感じた時に関係を持ってしまうシーンも宗教的な描写がある。ある意味、彼は聖なるものを帯びた存在として登場し、規範を超えた遊びを教えていってしまう面がある」と“規範の外”という意味を持つクィア的な要素が隠されていると説明。
イシヅカユウさんも「エロのシーンは映像として生々しく描いていないのに、凄く生々しかった」のコメント。
ブルボンヌさんは、「ゲイをカミングアウトしているグレッグ・アラキ監督は、それまでゲイ直球の映画を撮っていた。その中でプロデューサーさんから『異性愛映画を撮ったら制作予算をあげよう』という提案が本作のはじまりで、”異性愛映画”と前置きしているけど、どこが異性愛映画なんだっていうくらい、逸脱したものがプンプン匂ってきた」と、グレッグ・アラキ監督の「”史上最もクィアな異性愛映画”を作りたかった」という反骨精神、「真のクィア魂が感じられた」と語りました。
「明日はどうなるかわからないじゃん!好きに生きてやる!というパンクな精神を感じた」
好きなキャラクターについて、「ピチカートファイブが流れているシーンで登場する、カウンターの中に入っているお店の人が凄く好き。お洒落だった」とイシヅカさんが回答すると、「ドラァグクイーンすれすれみたいなビジュアルの人多かった。そして基本パンキッシュな音楽が流れている中で、いきなりピチカート・ファイヴが流れるのも90年代のお洒落さを感じるシーンだった」とブルボンヌさんも個性豊かな登場人物と音楽について言及。
普段モデルとして活動するイシヅカさんはファッションについて、
「ローズ・マッゴーワン演じるエイミーのファッションの中でも特に、古着屋さんで買ったと思われるビニールのコートにピンクを合わせたコーディネートが好きだった。そしてお洒落なんだけど、綺麗じゃないのがかっこいい」と語り、尖ったサングラスにもクィアさが滲み出てているとコメントした。
またブルボンヌさんは「若者文化ってちょっと汚さがあって、その中で足掻く感じがある。描かれているのは90年代の若者の感覚なんだけど、常にこの世代とも通ずるものがあるというのを改めて感じた」と現代との繋がりについても感じたという。
イシヅカさんは「90年代を生きた私は世紀末感というのを、なんとなく肌で感じていて。ノストラダムスも話題になって、他にもホラーブームなどもあり、先が見えない感じが若者の中には常にある感じ。今思うとそんなに考える必要なかったじゃんということなんだけど、ティーンの時代からすると、明日はどうなるかわからないじゃん!好きに生きてやる!というパンクな精神を感じた」
ブルボンヌさん「若さって本当に刹那的。今は懐かしいことと思い出して話すけど、エロいことで羽目を外しちゃう感じも、あの頃の勢いも今はもうできないと寂しくなる。危ないことも含めて、それは若さだし、30年前の生き生きとした世代の刹那的な暴走を見ると、切なくもなるし、掻き立てる感じもある」と若者の全てが詰め込まれた作品だと語っていただきました。
「冷や水を浴びせられるラストが待っているというのがこの映画の肝。今再評価される理由でもあると思う」
ブルボンヌさん「若さの暴走をポップやギャグで見せながらも、最後の最後に冷や水を浴びせられるようなラストが待っているというのがこの映画の肝だと思っていて。それまでに登場する敵はバカっぽくて、『007』シリーズに登場する敵など、多分色々な作品のオマージュが入ってる。また悪役達が必ず不吉な数字666を出してくるのも、神と悪魔のメタファーも見えてきて。性的なボーダーを超える3人のクライマックス、最後のボスが本当に恐ろしくヒヤッとした。"バックラッシュ"と呼ばれる反動のような感じ、大統領選後の今現在のアメリカと重なる部分もあり、今再評価される理由がわかる。」
イシヅカさん「グザヴィエが神的なものとして現れてきて、ラストのボスが神的なものを語る。どっちが神なんだ!というメッセージをバーンとぶつけられてきた感じだった。これからどうなっちゃうんだろう。先が見えない閉塞感というのも感じられた」と語りました。
リアルタイム世代のブルボンヌさんは、「90年代のこういう映画が色々あって、メジャーだとトム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』(93)で80年代のアメリカで起きたエイズ禍を描いた作品があった。その一方で単館系ではパンキッシュなLGBTQのドギツイ世界をアーティスティックに描いたものも出てくるような混沌とした時代で、本作のラストシーンでは“その先には何があるのか”という問いがうまく表現されてた」と説明。
最後にブルボンヌさんは「クィアという”規範の枠外に出る“というのは、多数派側からの何かを押し付けられた側としては、殻を破って、破壊して出ていかなければならない。でも、出た先はそんなにユートピアじゃなくて、荒野やひび割れた道のようなもので。自由というのは自分で切り開いていかなくていけない。厳しさも含めたラストに痺れた。“自分らしく生きる”というのは素敵なことだけじゃなく、厳しさも待っている。そういうことも含めて覚悟しないといけない時代かなと思う」
イシヅカさんも「辛酸を嘗めつつ自分の力で勝ち取っていく、また開拓していく、革命していくというのが自由かもしれない」と、もっと色々なことを挑戦し、自分の中の知らない新しい扉を開いて楽しさを見出して欲しいとメッセージを残していただきました。
また11月15日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国順次公開する『ノーウェア デジタルリマスター版』を一足早く観たイシヅカユウさんは「ずっと音が鳴っているのが印象的だった。蝉の音が鳴っているのが、命の短い蝉の刹那的な部分というのが勝手に繋がっていて。刹那的というのは本作と繋がっていますが、暴力・セックスなど、また違うベクトルのティーンエイジャーの閉塞感を描いていた。ぜひ2作品観ていただけたらと思います」と、若者の叫びが詰まったその内容に太鼓判を押していただきました。
予告編:『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』
予告編:『ノーウェア デジタルリマスター版』
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