コロナウイルス連作短編その147「悲しい町」
それからベッドの端に座り、間藤麻は部屋の窓から雪が降っているのを見る。だが実際見ているのは、窓のそばに立ち、雪が降っているのを見る高槻園子の背中だった。
「雪、降ってるね」
園子が言った。だらんと垂れた右腕、その先で小指がかすかに揺れる。
「そうだね」
麻はそう言った。他に何か言いたいが、何も思い浮かばない。自分の右の小指を見る。痙攣していた。
枕の傍らにタブレットがある、園子のものだった。戯れに手に取り、開いてみる。壁紙はラッセンの絵画のように禍々しい色をしていた。