コロナウイルス連作短編その128「ドーナツの入ってる箱みたいな」
松嘉良三好は児童館の前で来客を待つ。三好は人類学を学ぶ大学生で、今年からここで時々ボランティアとして働いている。ある女性から電話を受けたのは1週間前だ。何でも彼女の姉がこの児童館をリノベーションしたそうで、一度伺ってみたいのだという。電話を受けたという縁から、三好が彼女の応対を行うことになったんだった。
午後2時、待ち合わせの時間ぴったりに女性が現れた。ふくよかな体型で、おそらく脂肪で目元が細まり、常に柔らかな慈愛の笑みを浮かべている風に見える。穏やかな黄土色のコートを身