コロナウイルス連作短編その98「ルーマニアの大工」
右の人差し指と中指の付け根がいやに乾いている、ヨアキム・ソンステヴォルはそう思う。指を広げると皮膚が、漠砂でできたゴムのように伸びる感覚を味わう。皮膚に目を向けると、マグロの刺身に刻まれる類いの白い筋がうっすらと浮かんでいるように見えた。事あるごとにボディクリームを入念に擦りこむのだが、乾きは癒し難く、ここから去ることはない。命に別状などある訳もなく、範囲は本当に小さなものでありながら、この乾きをふとした瞬間に認識する時、グリッチのような不快感を脳裡によぎる。そんな時、ヨア