コロナウイルス連作短編その66「今日は帰るよ」
間宮城星は日比谷公園の入り口に立っている。ポケットのなかに突っこんだ両手は凍てつきに苦しみ、孤独な氷柱と化している。そこにルース・レオポルドがやってきた。日本の灰色の冬で、短い髪が黄金の輝きを放っている。星の姿を認めると、彼女はマスクを外して手を振ってくる。クリームつきのプリンさながら柔らかな笑顔は無邪気で、とても可愛いと思える。
「はじめまして」
覚束ない日本語でそう言った。オランダ人は背が高いと聞いていたが、事前に言っていた通り彼女は150cmしかなく頗る小さい。むし