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「モモ」になれたら、誰かの転機に寄り添うことができる。

「トランジションコラム」では、グリーンズジョブのメンバーが「トランジション(人生のうつりかわり期)」についてのコラムを掲載していきます。
今回の執筆は、生き方編集者・山中康司 @koji_yamanaka です。


小さなモモにできたこと。それはほかでもありません。あいての話を聞くことでした。
(『モモ』ミヒャエル・エンデ)

世界で一番有名な聞き上手は、「モモ」だと思う。

この、ミヒャエル・エンデが書いた世界中で愛され続けている物語の主人公がやっていたことは、キャリアカウンセリングやコーチングと近いものだと思うのだ。

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物語では、平和な街に突如現れた「時間貯蓄銀行(時間どろぼう)」と称する灰色の男たちによって、大人も子ども”時間”を盗まれて、自分らしく生き生きと過ごすことができなくなり、心から余裕がなくなってしまう。

そんな時間どろぼうに立ち向かったモモができたことというのが、ほかでもない、”話を聞くこと”だったのだ。

なあんだ、そんなこと、とみなさんは言うでしょうね。話を聞くなんて、だれにだってできるじゃないかって。

でも、それはまちがいです。ほんとうに聞くことのできるひとは、めったにいないものです。そしてこのてんでモモは、それこそほかにはれいのないすばらしい才能をもっていたのです。
(引用:『モモ』ミヒャエル・エンデ 岩波少年文庫 23頁)
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「時間どろぼう」と対極にいるモモができることが、「話を聞くこと」だった--。このエピソードは、とても示唆的だな、と思う。

いわば「時間どろぼう」が、人びとから生き生きとした時間を奪うのに対して、モモは生き生きとした時間を与える。

いや、与えるというとちょっと違うな。モモは、生き生きとした時間をとりもどすことに、そっと寄り添っているのだ。相手の話に、じっと耳を傾けることによって。

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今、僕たちのまわりを見ても、「時間どろぼう」に時間を奪われたような働き方をしている方はおおい。

だからこそ、モモのように相手の話にじっと耳を傾けることができる人がもっと身近になるといい、と思う。

残念ながら、僕らが生きる世界にモモはいない。けれど、さいわいぼくもあなたも、誰かの話を聞くことができる。

一人ひとりがだれかにとってのモモになれたら、「時間どろぼう」に時間を奪われる人もすくなくなるんじゃないかな。

執筆:山中康司
生き方編集者。人の生き方に、文章と写真を通して向き合っている。現在の関心領域は家族、パートナーシップ、キャリア、ソーシャル、ナラティブ。関わっているプロジェクトは「グリーンズジョブ」「Proff Magazine」「ほめるBar」など。散歩の合間に仕事をするライフスタイル。
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