「モモ」になれたら、誰かの転機に寄り添うことができる。
世界で一番有名な聞き上手は、「モモ」だと思う。
この、ミヒャエル・エンデが書いた世界中で愛され続けている物語の主人公がやっていたことは、キャリアカウンセリングやコーチングと近いものだと思うのだ。
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物語では、平和な街に突如現れた「時間貯蓄銀行(時間どろぼう)」と称する灰色の男たちによって、大人も子ども”時間”を盗まれて、自分らしく生き生きと過ごすことができなくなり、心から余裕がなくなってしまう。
そんな時間どろぼうに立ち向かったモモができたことというのが、ほかでもない、”話を聞くこと”だったのだ。
「時間どろぼう」と対極にいるモモができることが、「話を聞くこと」だった--。このエピソードは、とても示唆的だな、と思う。
いわば「時間どろぼう」が、人びとから生き生きとした時間を奪うのに対して、モモは生き生きとした時間を与える。
いや、与えるというとちょっと違うな。モモは、生き生きとした時間をとりもどすことに、そっと寄り添っているのだ。相手の話に、じっと耳を傾けることによって。
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今、僕たちのまわりを見ても、「時間どろぼう」に時間を奪われたような働き方をしている方はおおい。
だからこそ、モモのように相手の話にじっと耳を傾けることができる人がもっと身近になるといい、と思う。
残念ながら、僕らが生きる世界にモモはいない。けれど、さいわいぼくもあなたも、誰かの話を聞くことができる。
一人ひとりがだれかにとってのモモになれたら、「時間どろぼう」に時間を奪われる人もすくなくなるんじゃないかな。