私の中の元祖チャーシュー麺
※3月の中旬に書いて、投稿せぬまま放置してたエッセイです。
続きも後日書こうと思います。
久しぶりに、私の思い出の食べ物を語りたい。
それは、栃木の祖母の家から10分ほど離れた場所にある、昔ながらの小さな中華料理店の、チャーシュー麺だ。
初めてそのお店に食べに行ったのは多分、幼稚園くらいの頃。
その当時、祖母の住む田舎町に新しくできた中華料理屋さんで、ご夫婦で経営されている。
あの頃は父も一緒で、家族4人で母の実家に遊びに行ってた。
今じゃ父は全く行きたがらず、そのくせ自分の実家には来いと母に言うク…とんでもないワガママ父ちゃんですが…。
(オブラートに包んだ)
その時に食べたのは、確か普通のラーメンだ。
何せまだ5歳のお子ちゃまなもので、普通は肉が多めのチャーシュー麺なんて食べられないと考えるだろう(その頃から大食いだったけど)
お客さん少ないし、小さい子がいるからと、明るくて気のいいおばちゃんは、おばちゃん達の自宅と繋がっているお座敷に通してくれた。
ラーメンなんて、塩や醤油、味噌とんこつ……どの味が好きで、カップ麺と袋のインスタントと、お店のラーメンの違いもよくわからない子供だったけど、ただ「おいしい」というのはわかってて、あつあつのラーメンを一生懸命食べてた気がする。
そしてそれからしばらくして、栃木の祖父母の家にて。
お昼ご飯の時間が近付くと、母がラーメン「ラーメン何にする?」と聞いた。
ラーメンはラーメンじゃないのか??と意味が理解できずにいたけど、ラーメンに入ってたお肉が柔らかくて特に美味しかった気がして、そしたら母は普通のラーメンを一つと、チャーシュー麺を祖母に注文してもらい、お肉は妹とわけっこして食べた。
その時に、私はお肉がたくさん乗ったラーメンがあることを知り、今度はそれを一人で食べたいとおねだりし、名前も覚えた。
チャーシュー麺。
チャーシューという名前のお肉がたくさん乗ったラーメン。
幼児はそう覚えたのだった。
その後。
栃木に滞在中、必ず一回は食べないと気が済まないというくらい、私はこのお店のチャーシュー麺の虜になっていた。
祖母もそれをよくわかっているから、私達が遊びに行くと必ず出前をとってくれて、配達に来るおばちゃんも、
「あら、今年もお孫さん来たのね〜!」
と、夏休み期間にラーメンがたくさん注文入ると、この家に孫が遊びに来ていると思うようになったらしい。
少食で、普通のラーメンすら食べきれなかった妹も、成長につれてチャーシュー麺を食べ切れるようになり、2人してラーメンどんぶりを見つめながら、どちらのお肉の方が大きいか……と、静かに争うほどだった。
そりゃ太るはずである(反省)
ある程度大きくなってくると、おばちゃんがこんなことを言った。
「あなた達、たまにはお店に食べに来てよ。出前だと麺伸びちゃうし、出来立て食べてもらいたいな!」
多分高校生くらいだろうか?
私は初めて妹と、当時まだ小学生だった小さな従弟2人を連れて、お店に食べに行った。
おばちゃんのいう通り、出来立てのチャーシュー麺はさらに美味しく、いつもは祖母に遠慮して食べたことのなかったチャーハンも頼んでみたが、こりゃまた美味しい!
作っているのはおじさんがメインで、配達にはたまにしか来なくてあまり知らなかったけど、「◯◯家の孫」と知ると軽く挨拶してくれた気がする。
それからまた数年後。7月。
私は初めて一人で栃木に遊びに行った。
大学時代は病気でどこかに遠出なんて余裕が無く、何もかも母に手助けしてもらわないといけない状態だったため、アルバイトだが自分でお金を稼げるようになり、自分一人で旅をしてみたいと思ったからだった。
東京で好きなアニメのイベントを楽しんだ後、栃木の家へ。
その道中にある、中華料理店に寄り道し、「おばちゃん、お久しぶりです!」と挨拶すれば、年に一回しか会わない町内の家の孫の顔を覚えてくれていたおばちゃんは、「あらぁ、〇〇さんちの孫!いつ来たの〜?」と明るく出迎えてくれた。
おばちゃんは、今日来たばかりでこれからばーちゃんちに行くことと、今回は一人で遊びに来たんだと告げると、それまた喜んでくれて、「なんにする?チャーシュー麺?」と、メニューを言わずともわかってくれてた。
そして、初めてのお土産を渡しながら、どうしても行く前におばちゃんとこのチャーシュー麺が食べたかったと告げる。
食べながら色々おしゃべりをして、おばちゃんはこんなことを言ってくれた。
「あたしらもね〜!お孫ちゃんが来ると夏が来た〜って気がするの!孫ちゃん来ないと夏が来た気がしないのよ〜!」と。
夏生まれで、HNに『夏穂』を名乗り、夏好きな私としては、これほど最高に嬉しい言葉は無かった( ´▽`)
コロナ禍になり、4年も栃木に行けていない。
だが今年はついに、一泊という短い期間だが、栃木に行けることになった。
今月の終わりの方で、残念ながら夏を届けることはできないけれども。
すでに80を超えたご夫婦。
コロナ禍が終わるまでに、お店が閉店したらどうしようかと思っていたが、3月中旬時点では、まだ営業していることがわかり、ホッとした。
あの味と、優しいおじちゃんおばちゃんの笑顔に会いに行く。