サトウキビ畑は〜
砂糖の無い世界を想像してみよう。甘くないケーキ、苦い飲み物しか置いてないスターバックス、甘さを加えられないジャム。最近、甘党の気持ちが分かり始めてきた身分としては、甘さがなくても困らないとは思うが少し寂しい。甘党の人には生きていくのが厳しい世界と変貌するであろう。
強壮剤として嗜まれてきた紅茶、コーヒー、ココアなどには苦味物質のカフェインが含まれていた。それらに砂糖を入れた事がきっかけで、最初は上流階級に広まり、その後ヨーロッパ中に広がった。17世紀の事だ。一般市民にも砂糖が広がり、後にスウィーツが開発されていく。甘いお菓子と言えば苦いコーヒーや紅茶との相性が良い。芋づる式とでも言うのか、需要が爆発的に大きくなり、砂糖が嗜好品から必需品に変わるまでにそんなに時間はかからなかったのではないかと思う。
需要は比較的シンプルだ。娯楽だろうが嗜好品だろうが必要品であろうが、人の欲求やニーズに目を向ければいい。問題は供給のほうだ。国や会社、また人は供給を満たすためになんでもする。恐ろしい話だが、歴史がそう語っている。SDGSなどの新しいものさしが歴史を変えてくれる事を祈るばかりである。では供給の話に移ろう。
もともと熱帯地方で栽培されていたサトウキビは蒸し暑い場所でよく育つ。日本でいえば沖縄、種子島、鹿児島などで栽培されている。しかしこの『世界史を大きく動かした植物』には自然の豊かな場所では食べ物が豊富にあり農業が発展しにくいと書かれている。
農業が発展しない事は悪いことだろうか?農業が発展していないというのは、逆に言えば農業をしなくても食べていけるほど豊かな自然があると言うことだ。
希少な胡椒の話は以前にしたが、それを一生懸命探していたのは、かのコロンブスである。金と同等の価値のあった胡椒を探し当てられなかったコロンブスだったが、色々な植物をアメリカ大陸に持ち込み、栽培という名の実験を行っていたようだ。その内の一つがサトウキビだったという事だ。
サトウキビがアメリカ大陸で育ち始めると、大量の労働力が必要となった。有名なのがキューバのサトウキビではないだろうか?そこには約25%ほどのアフリカ系の人々が住んでいるし、混血という言い方は好きではないが、そういう人が多くいるようだ。簡単に言えば奴隷という暗黒時代のことである。17世紀の世界人口が訳10億人だと言われている。その内の約1000万人がアフリカから奴隷としてアメリカ大陸に連れて行かれた。怖い話である。当時の世界人口で見て100人に1人の割合だ。
私たちが甘い飲み物を飲めるのも、美味しいデザートを食べれるのも、経済の流れが背景にあったのだ。砂糖は無くても生きていけるけど、嗜好品として世界中に広まったのだ。そしてそれは未だに人を魅了し続けている。