アーケード
寂れている街だけど、それが逆にノスタルジックな雰囲気を醸し出している。そんな街を歩いていた。
アーケードを歩いていると、シャッターで閉まっているお店が多く、なんとも寂しい感じもするのだが、
どうやら時間が来たらシャッターは上がって、お店が出現するようだ。
店も空いていない中、ランチをしているお店を発見した。お店は2階にあり見上げると、2階からアーケードを見渡せる作りになっている。
お腹も減っていたので、
ここでランチをとる事に決めた。
細い階段を上がっていくとお店に通じている。
お昼も早い時間に入ったせいか、店内には誰もいなかったのでアーケードを見下ろせる窓際の席に座った。
2階から見るアーケードは、また違う顔を見せる。アーケードの通りの向かいにある建物も、何かのお店なのかそれとも何もない空室なのか。
このお店のおすすめのハンバーグを頼んで、2階からアーケードを見下ろしていた。
人通りが少ない通りを、自転車が通った後に若いカップルらしき二人を発見した。
男性の方の足取りは早く、女性は少し距離を置き、うつむきながら後ろを歩いている。
男性は僕の真下で立ち止まった。
少し間を置いて、さっき見た二人組の男女が入ってきた。
二人は僕から少し離れたところに座った。
二人から流れ出る空気は明らかに澱んでいた。
メニューを渡されても二人は無言。
彼氏であろう男は、無言でメニューを見て、彼女であろう女は、うつむいている。
彼女が小さい声で
「ごめんなさい」と言った。
今にも泣き出しそうな声だった。
「とにかく何か頼んだら」
と彼氏がそっけなく言ったが返事はなかったようだ。
あまり聞き耳を立ててはいけないと思いつつも、ついつい聞き耳を立ててしまった。
結局、彼氏がコーヒーを二杯頼んでいた。
僕の前に、美味しそうなハンバーグが運ばれてきた。
肉汁が溢れ出していてジュージューと音をならしているハンバーグを頬張る。
肉肉しいとても美味しいハンバーグを食べながら、自分の若い頃を思い出していた。
当時は彼女とよくケンカをしていたし、意地を張って無駄にケンカを長引かせたりもしたことがあった。
付き合いも長くなると、ケンカすることの無駄なことにだんだん気づいてくる。
ケンカをするには、気力と体力がいる。おまけに二人の大切なはずの時間が奪われてしまう。
そんな事に気づくまで何度ケンカしただろうか。
しかしそんなケンカも今では笑い話になるから、何事も無駄な事ではないのかもしれない。
若い二人は出て行った。
好奇心に駆られ(野次馬根性かもしれない)2階から見ていると、二人は肩を並べてアーケードを歩いて行った。
視線を感じてふっと向かいの2階を見ると、女性が笑顔で会釈して開店の準備をしているところだった。
このアーケードの日常が始まるようだ。
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