守り続けたい料理店 茶処 真壁ちなー
沖縄の茶処 真壁ちなーは本島最南端、糸満市真壁にある沖縄そばと沖縄料理のお店。
のどかという表現が、これほどしっくりくる場所は日本中探しても少ないのでは、と思う。
穏やかで微かに潮の香りがする風が心地よい。
沖縄らしい石垣を抜けると、だいだい色が鮮やかな瓦屋根と木造の民家が見えてくる。
屋根の上にはちょこんと佇むシーサーが、大きな口を開けてお出迎え。
青と白の、はためく暖簾をくぐり、引き戸を開けるとカランコロンと竹でできたウィンドチャイムの優しい音色が響く。
店内はまるで、おばあちゃんの家に帰ってきたような懐かしさ。
窓際の席に案内され、お冷を飲んでほっと一息つく。
メニューには沖縄ならではの料理が並んでいて、見ているだけでも楽しい。
私は豚の塩漬けがメインの「スーチカー御膳」をいただくことにした。
料理を待つ間、緑がまぶしいお庭を見て、「なんて平和なんだ」と思う。
およそ80年前、ここは日米両軍が住民を巻き込んだ地上戦を行った場所だった。
ふと、近くにあるひめゆりの塔で知った凄惨な場面が目に浮かぶ。
店内はところどころに大戦当時の弾や、日本兵が斬りつけた跡が残る柱を確認することができる。
この料理店はその戦火をくぐり抜けた沖縄の家でもある。
料理が到着した。
彩り豊かな見た目と、ふわっと美味しそうな香り。
しっかり出汁がきいて麺はなめらかな沖縄そば、豚の脂身までおいしいスーチカー、酸味の効いたもずく酢、野菜たっぷりのジューシー(鶏の炊き込みご飯)など、一品一品が心のこもった優しい味付けになっている。
島唐辛子を使ったコーレーグースなど沖縄ならではの調味料も置いてあるため、味変も楽しめる。
一口頬張るごとに身も心も満たされていく。
ここは、この平和な時間が当たり前ではないことを思い出させてくれる場所。
たくさんの方の想いが、人生があったから、私は今こうしてこの場所にたどり着き、愛のこもった手料理をいただくことができている。
これからもここに、あり続けてほしいと願ってしまう、そんな料理店だった。