推しが解散することになった。
年度末と言われる3月の終わり。
有名人のグループ脱退や事務所からの独立といったニュースで、ネットは埋め尽くされていた。
まあ毎年のことなので慣れているが、それでもこの日を乗り切るまではピリピリする。
エンタメ系の誰かを推している人なら、この気持ちはきっと理解して頂けるだろう。「俺の推しは辞めないでくれるかな…」というアレ。
逆に契約更新のこの時期さえ乗り切れば、当分の間は余程なことがない限り大丈夫という一つの基準にもなる。
私は推しがとにかく多い。が、今回の年度末は特に何事もなく終わっていた。
それに安堵しきっていた4月3日。
年度末からたった4日のことであった。
「年度末を乗り切れば一旦大丈夫」というのは、単なるおとぎ話であった。
推しが解散することになった。
たった1年の猶予を残して。
このバンドのことは結構真面目に追いかけてきたつもりだ。
ファンクラブには毎年加入し、近郊で開催されるライブがあれば出来る限り行くタイプの、そこそこ熱心なファンだった。今年度分のファンクラブももちろんきっちり更新した。
ファンクラブを更新するということは、未来を信じるということだと思っている。一緒に見たい未来へのお布施であり、希望であり、片道切符だ。
そんな私が手に入れた片道切符には、あと1年足らずで終着点が来るらしい。
そんなことあるんか?今自分で書いてて改めてびっくりしているが、どうやら事実らしい。
「お疲れ様でした」
「残念だけど、これからの個々の活躍に期待!」
「この曲好きだったな〜また聴きたかった〜」
みたいなことをサラッと語って、大人しく全てを過去に出来るタイプの人間にはなれそうにない。
どうやら世間的に求められがちな「良いファン」像に、全く追いつけそうにないらしい。
だって解散しないでほしいもん。
明日にでも解散を撤回してほしい。
解散した次の日に再結成してほしい(解散とは?)。
まだ一緒に未来を見たい。ライブ行きたい。
新曲のリリースにわくわくしたい。
君達の描く未来を一緒に追いかけたい。
武道館立ちたいって言ってたじゃん。解散しない、続けたいってあれほど言ってたじゃん。
個人活動はバンドに吸収するためじゃなかったの?バンドのために頑張るとか言ってたのは?
私はまだ何も諦めていないよ、貴方達は私より先に諦めるの?
出てくるのはそんな言葉ばかりだった。
しかし、ここ最近の社会情勢やバンドを取り巻いた環境も知っていて、解散という考えに至る過程も理解できてしまうのがファンというもので。
全く、どこまでも悲しい運命の生き物だ。
苦しい。こんなことなら深い背景まで理解出来ない程度のゆるいファンの方が幸せだったかもしれない。
でも仮に今流行りの転生チャレンジがあったとして、このバンドを知らない未来は多分選ばない。
だから苦しいのだ。
解散を選ぶ推しと、解散を望まない私。
でもここで「彼らの判断だから解散もしょうがないよね」と受け入れることは、良いファンに当てはまるのだろうか?
解散を受け入れることが良いファンなのだとしたら、私は悪いファンのままでいい。
だってどこまでも好きなんだから。
その気持ちに嘘をつくくらいなら、私は最後まで求められない悪いファンのままでいい。
今はそんな言葉しか出てこない。散ってしまう桜と共に、解散の話ごと無くなってしまえばいい。
次に桜が咲く頃には、彼らはもういないのだ。
受け入れることは出来ないと思う。だから悪足掻きをしてしまうと思う。許してほしい。
最後まで嫌なファンで申し訳ないが、それ以外でバンドを好きな気持ちを表す方法を私は知らないのだ。
これを受け入れることは、終わりの一つだから。
何かの間違いで片道切符の延長がしたくなったら、いつでも言ってくれていいんだよ。迷惑でもなんでもないよ。
切符の通過点で少し休むとかはどう?何年だって待てると思うよ。今の情勢で2年近く待てたんだから。自分達のファンはその辺待てないと思ってるんだったら大間違いだよ。考え直してくれ。
これで終わりなんて、もったいないよ