映画『ボイリング・ポイント/沸騰』
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『ボイリング・ポイント/沸騰』
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監督 : フィリップ・バランティーニ
出演 : スティーヴン・グレアム、
ヴィネット・ロビンソン
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現オールタイムベスト中、No. 1。
驚異的な恐さが詰まった作品。
ただの日常の一頁を類稀な精度で切り取る事が
これ程恐ろしく圧倒的な作品と化すとは。
一流レストランの忙しい一日を
ワンカット・編集無し・CG無しで90分に
収めた作品。
何が恐ろしいって、
所謂怖いものなんて何も登場していない。
ただ生活の一頁を観ているだけ。
事件も起きているようで実は起きていない。
日常の延長。この位の、否、これ程の苦悩は
私たちの日常だから。
息つく暇も無い仕事に追われる毎日は、
互いに絡み合うようで絡み合わず
救われるようで救いがない。
さらに、レストランの人数分の生き様が
観客に降り掛かるから、どっと疲れたくない人は
観るべきではないとすら思う。
考えてみて。一番大変な”私の一日”を追体験させられる事を。本作はそれ。
押し潰されそうになることも、
世界に翻弄される”社会問題”なんて言われて
遠ざけられる”私”の問題も
全部ごった煮にされて前も後ろも分からない。
『1917』の進化系とも言えるし、
『14歳の栞』の進化系とも言えるし、
はたまたリアルな『セッション』か。
観終えたら鬱っぽくなるかもしれない。
でも、貴方はあの映画の中にはいない。
だから、頑張ろう。
私も貴方も頑張ろう。
そう思うしかない筈だから。
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“奇跡の一皿”は本当に”奇跡の一皿”で、
私たちの身の回りにある、そんな”奇跡の一皿”を
大切に大切にしていこうよ。
あって当たり前のものなんてない。
大切にしていきたいよ。
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