仮想仕事の原理、d'Lambertの原理
ほとんどの解析力学のテキストはここから始まる。
仮想変位。英語では virtual displacement という。(そのままだ)
または infinitesimal variation ともいう。無限小の変化。
わかるようなわからないような言葉だが、これが大きな力を発する。
仮想変位
・十分小さい変位
・力を変化させないようような無限小の変位
・実際には動かさないが少しだけ動かす変位
・動くことのできる方向に動かす変位
など、いろいろないい方がされている。
値を$${\delta q}$$で表す。(仮想でない実際の変位のときは$${dq}$$で表す)
仮想仕事の原理
ある系がつり合っているとき$${\bm{F_i}}$$を加えられる力とすると
$${\displaystyle\sum_{i=1}^f\bm{Q_i}=\bm{0}}$$ (1)
この系に対する変位$${\delta q_i}$$の仮想仕事は上式よりその値は0である。
$${\delta W=\displaystyle\sum_{i=1}^{f}\bm{Q_i}×\delta\bm{q_i}=0}$$ (2)
これを仮想仕事の原理(または仮想変位の原理)という。
($${\bm{Q_i}}$$、$${\delta\bm{q_i}}$$はベクトルであるが、$${\delta W}$$は外積なのでスカラーである)
$${\bm{Q_i}}$$が保存力のときは$${{Q_i}=ー\dfrac{\partial U}{\partial q_i}}$$なので
$${\delta W=-\displaystyle\sum_{i=1}^{f} \dfrac{\partial U}{\partial q_i}\delta{q_i}=-\delta U=0}$$
すなわち、ポテンシャルエネルギーについて
$${\delta U=0}$$ (3)
ダランベール(d'Lambert)の原理
簡単にいえば、仮想仕事の原理を加速度運動している系に拡張したものである。
$${m_i\ddot{q_i}=Q_i}$$ Newton's 2nd law
外力$${Q_i}$$に対して$${-m_i\ddot{q_i}}$$の力がかかってつり合った状態であると考える。
(1)のようにつり合いの式に変形すると
$${\displaystyle\sum_{i=1}^{f}(Q_i-m_i\ddot{q_i})=0}$$
(2)仮想仕事の原理にあてはめると
$${\delta W=\displaystyle\sum_{i=1}^{f}(m_i\ddot{q_i}-Q_i)\delta{q_i}=0}$$ (4)
これをダランベール(d'Lambert)の原理という。
例えば、単振り子の場合は
重りに働く力
重力 $${mg}$$、接線方向の分力は$${mg\sin\theta}$$
重りの加速度運動による力 $${m\alpha=ml\ddot{\theta}}$$
これらの力の接線方向への仮想仕事の和=0
$${mg\sin\theta×l\delta\theta+ml\ddot{\theta}×l\delta\theta=0}$$
よって
$${g\sin\theta+l\ddot{\theta}=0}$$ $${\ddot{\theta}=-\dfrac{g}{l}\sin\theta}$$