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コリオリの力
実感の伴わないよくわからない力
高校の地学の授業でコリオリの力というものに出会った。
物体が運動するとき,進行方向に対して北半球では直角右方向に働く。
転向力ともいう。地球の自転が原因である。
高圧側から低圧側へ風が吹くとき、コリオリの力により等圧線に対して垂直低圧側ではなく右寄りに風が吹く。台風(低気圧)の渦も同じ理由で左巻きになる。
大きさは f=2ρωv sinφ 。(ρ:空気の密度、ω:地球の自転速度、v:風速、φ:緯度 つまり、高緯度の地点ほど大きく働く)
というような説明だったが、よくわからなかった。地球上で運動する物体を書いた図で説明も受けたが、いまいちわかった気がしない。まあそうなのだろうが、実感は全く伴わなかった。
今回、古典力学の学習の中でコリオリの力に再会し、少しだけ理解が進んだように思うので以下にまとめてみた。
回転座標系
静止座標系Oxyに対して、それと原点Oを同じでxy平面内を角速度ωでz軸の正の側から見て反時計回りに回転する座標系Ox‘y’を考える。
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このとき回転座標系Ox‘y’からみた運動方程式は以下のようになる。(導出は最後のおまけを参照)
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f‘ = f + fc1 + fc2 ‥‥(d‘)
ここで注意すべきは、座標系Oxyは(ニュートンの第1法則に従う)慣性系であるが、回転座標系Ox‘y’は慣性系ではないということである。
つまり、回転座標系Ox‘y’で質点Pに働く力 f‘ には、慣性系で働く力 f (右辺第1項)の他に見かけ上の力(慣性力)として、遠心力 fc1 (第2項)とコリオリの力 fc2 (第3項)が加わる。
遠心力 fc1
回転座標系で運動するしないに関わらず働く。(回転していればω≠0)
回転座標系からは物体は回転しているように見えないが、物体が位置 r‘=[x‘,y’]にあるとき,ベクトル r‘ と同じ向きにこの力が働く。つまり、中心Oから外向きに遠心力が働く。
コリオリの力 fc2
回転座標系の中で運動している時だけに働く。(x‘、y‘の微分≠0の時のみで、運動していない時は働かない)
この項を3次元で表すと,ベクトル fc2 =2m[ω dy‘/dt ,– ω dx‘/dt,0 ]になる。
一方、ベクトル v‘ =[dx‘/dt,dy‘/dt,0]、ベクトル ω=[0,0,ω]なので
fc2 =2m[ω dy‘/dt ,– ω dx‘/dt,0 ] ‥‥(A)
=2m[dx‘/dt,dy‘/dt,0]×[0,0,ω]
=2m v‘ × ω(速度と角速度の外積) ‥‥(B)
直角右向き
(A)より ベクトル fc2 のx成分はv‘のy成分、y成分はv‘のx成分のマイナスなので、その向きはベクトルv‘の直角右向きということになるが、これは以下でも説明できる。
(B)式 fc2 =2m v‘ × ω を図に書くと
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であり、v‘ と ω の外積は、v‘ → ω となる右ネジ方向なので、ベクトル v‘ の方向に対して直角右方向である。つまり、コリオリの力が物体の進行方向に対して直角右方向に働く。
以下に北半球と赤道上でのコリオリの力が働く様子のモデルを作ってみた。
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というわけで、コリオリの力が右向きに働くのはわかった。
では、大きさはどうか。
(A)式を見ると
fc2 =2m[ω dy‘/dt ,– ω dx‘/dt,0 ] なので
加速度成分はこれをmで割って
x‘方向:2*ω*dy‘/dt。角速度に速度のy‘成分を掛けて2倍したもの
y‘方向:2*ω*dx‘/dt。角速度に速度のx‘成分を掛けて2倍したものである。
仮に物体が赤道上をx‘方向に時速100kmで運動するとき
ω=2π/24/60/60=7.26^(ー5) [/sec](自転速度)
dx‘/dt=100*1000/60/60=27.7m/sec
y‘方向の加速度=2*ω*dx‘/dt=0.004m/sec2 となる。
これは重力加速度9.8m/sec2 と比べると遥かに小さい。
コリオリの力は大気や海水の循環、大陸間弾道ミサイル、ロケット、フーコーの振り子などの大規模なスケールや超高速の運動や超長時間の運動でないと効いてこない。洗面台の排水の渦の向きをコリオリの力とする動画が時々あがっているが、他の因子のほうが大きいと思われる。かなり怪しい。
キャッチボールをして球が右に外れてもそれはコリオリの力ではなく、単に投げ方に問題があっただけである。
動画
以上が直角右向きの理屈だが、ネット上に動画がないか探すと大量に出て来た。一例を示す。
一目瞭然だ。便利な世の中になったものだ。
おまけ(導出)
書籍、ネットで調べた中でわたしにとってわかりやすいと思った導出を以下に記す。
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更におまけ
Lagrange’s eq を使った導出
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