散逸関数
減衰振動の位相空間でのトラジェクトリーを考えようとしたら、抵抗力の扱いが分からない。遡っていくと、散逸関数というものに突き当たった。
以下に示す。
非保存力を扱うには散逸関数(dissipation function)を導入する。
保存力と非保存力
力$${f}$$には保存力$${f_c}$$と非保存力$${f_d}$$がある。
$${f=f_c+f_d}$$
保存力$${f_c}$$は仕事Wが経路に依存しない。
例として重力、ばねの力、電気力などがあげられる。
$${W_c=\displaystyle\int_{P_1}^{P_2}f_c dq=const}$$
そのため保存力のみが働くときは力学的エネルギーは保存される。
非保存力$${f_d}$$はそのなす仕事によって時間と共に系の力学的エネルギーが失われていく。
例として空気抵抗や摩擦などがあげられる。
散逸関数の定義
質点の速度$${v}$$に比例した抵抗力$${f=−bv (b>0)}$$について,
ある関数$${D(v)}$$から
$${f=-\dfrac{dD}{dv}=-bv}$$ と求まるように書くことができる。
これを積分して得られる関数が散逸関数である。
$${D(v)=\displaystyle\int_0^vbv dv=b\Big[\dfrac{v^2}{2 }\Big]_0^v=b\dfrac{1}{2}v^2=\dfrac{1}{2}b\dot{q}^2}$$ (1)
エネルギーの減損
例えば、ばね(ばね定数$${c}$$)の単振動を考えるとき、重り(質量$${m}$$)に対してその速度$${v}$$に比例する抵抗$${-bv}$$があるとすると
運動方程式は
$${m\ddot{q}+cq+bv=0}$$ (2)
力学的エネルギーは
$${T=\dfrac{1}{2}mv^2}$$、$${U=\displaystyle\int_0^xcq dq=c\Big[\dfrac{q^2}{2 }\Big]_0^q=\dfrac{1}{2}cq^2}$$
$${E=T+U=\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}cq^2}$$
これを時間で微分すると
$${\dfrac{dE}{dt}=\dfrac{1}{2}m2v\dfrac{dv}{dt}+\dfrac{1}{2}c2q\dfrac{dq}{dt}=m\dot{q}\ddot{q}+cq\dot{q}=\dot{q}(m\ddot{q}+cq)}$$ ←(2)を代入
$${=\dot{q}(-bv)=-b\dot{q}^2}$$ (1)を代入
$${=-2D}$$ (3)
よって、力学的エネルギー$${E}$$は散逸関数$${D}$$の2倍で減損していく。
Lagrange's eq
非保存力は$${\mathscr{L}(=T-U)}$$に組み込むことが出来ない。
Lagrange's eq を以下のように修正して扱う。
$${\dfrac{d}{dt}\Big(\dfrac{\partial\mathscr{L}}{\partial \dot{q}}\Big)-\dfrac{\partial\mathscr{L}}{\partial q}+\dfrac{\partial D}{\partial q}=0}$$ (4)
上の例では
$${\mathscr{L}=T-U=\dfrac{1}{2}mv^2ー\dfrac{1}{2}cq^2=\dfrac{1}{2}m\dot{q}^2ー\dfrac{1}{2}cq^2}$$ (5)
(1)(5)を(4)に代入
$${\dfrac{d}{dt}(m\dot{q})-(-cq)+b\dot{q}=0}$$、 $${m\ddot{q}+b\dot{q}+cq=0}$$ (6)
よって (2)と同じ式が得られる。