ランベルトのW関数
ランベルトのW関数はヨハン・ハインリヒ・ランベルト$${^※}$$にちなんで名づけられた関数である。ω関数、対数積ともいう。
※ Johan Heinrich Lambert:W関数のほかに、Lambert-Beer law(光の
吸収の法則)や地図投影法、円周率の無理性の証明など多彩な分野
で活躍した科学者・数学者として知られている。
定義1:$${x e^x}$$の逆関数である。
$${W^{-1}(x)=x e^x}$$ (1)
すなわち $${x=W(x)e^{W(x)}}$$ (1)'
または $${x=W(xe^x)}$$ (1)"
$${f(x)=W^{-1}(x)=xe^x}$$は、$${x=-1}$$のとき$${f(x)}$$は$${-\dfrac{1}{e}}$$をとり
$${\displaystyle\lim_{n\to -\infty}f(x)=0, \lim_{n\to \infty}f(x)=\infty}$$となるが、
逆関数$${f^{-1}(x)=W(x)}$$は$${- \dfrac{1}{e}< x<\infty}$$の範囲で2つの値が存在する
多価関数である。
なので$${x}$$の範囲によって以下のように定めている。
定義2:$${f^{-1}(x)=W_0(-1 \leqq x )}$$ 主枝と呼ぶ
$${f^{-1}(x)=W_{-1}(x \leqq -1 )}$$ 分枝と呼ぶ
W関数の特殊値・等式
$${W^{-1}(x)=xe^x}$$ ← 定義(1)
$${W(e)=1}$$ ← $${W^{-1}(1)=1\times e^1=e}$$
$${W(0)=0}$$ ← $${W^{-1}(0)=0\times e^0=0}$$
$${W\Big(- \dfrac{1}{e}\Big)=-1}$$ ← $${W^{-1}(-1)=-1\times e^{-1}=- \dfrac{1}{e}}$$
$${W(1)=\Omega}$$ ← $${W^{-1}(\Omega)=\Omega e^\Omega=1}$$となる$${\Omega}$$を定義する
$${\Omega\approx0.56714 …}$$(オメガ定数)
$${W(x)e^{W(x)}=x}$$ ← 定義(1)'
$${W(xe^x)=x}$$ ← 定義(1)"
$${W(xe^x)=W(x)e^{W(x)}}$$ ← 定義(1)'と(1)"
W関数の値
上の特殊値の他にも$${x=}$$$${\ln}$$や$${\pi}$$の値が知られているが、$${x}$$がその他
一般の値のときはどうか。
テイラー展開やニュートン法による近似の値を求める方法があるようだ。
$${W^{-1}(x)=xe^x}$$を逆に辿るマクロをエクセルVBAで自作できそうである。
だが、ここでは深入りしない。
LambertのW関数 (第k解) by casio
【主枝W0のみ】ランベルトW関数の計算VBA(標準モジュール)
具体例
1)$${x^a=b^x}$$
両辺の対数をとる $${a\ln |x|=x\ln b}$$ ←$${x}$$の符号で場合分け
$${x > 0}$$のとき
$${a\ln x=x\ln b}$$、 $${x^{-1}\ln x=\dfrac{1}{a}\ln b=\ln\sqrt[a]{x}}$$ ← $${x^{-1}=e^{ \ln x^{-1}}}$$
$${e^{ \ln x^{-1}}\ln x=\dfrac{1}{a}\ln b=\ln\sqrt[a]{x}}$$、 $${e^{-\ln x}\ln x=\ln\sqrt[a]{x}}$$ ← $${\times -1}$$
$${-\ln x\times e^{-\ln x }=-\ln\sqrt[a]{x}}$$ ← W関数に入れる
$${W(\underline{-\ln x}\times e^{\underline{-\ln x }})=W(-\ln\sqrt[a]{x})}$$ ← 定義(1)" $${W(xe^x)=x}$$
$${-\ln x=W(-\ln\sqrt[a]{x})}$$、 $${\ln x=-W(-\ln\sqrt[a]{x})}$$
よって $${x=e^{-W(-\ln\sqrt[a]{x})}}$$
$${x < 0}$$のとき
$${a\ln (-x)=x\ln b}$$、 $${x^{-1}\ln (-x)=\dfrac{1}{a}\ln b=\ln\sqrt[a]{x}}$$
$${-(-x)^{-1}\ln (-x)=\ln\sqrt[a]{x}}$$、 $${(-x)^{-1}\ln (-x)=-\ln\sqrt[a]{x}}$$
↑ $${(-x)^{-1}=e^{ \ln (-x)^{-1}}}$$
$${e^{ \ln (-x)^{-1}}\ln (-x)=-\ln\sqrt[a]{x}}$$、 $${e^{ー\ln (-x)}\ln (-x)=-\ln\sqrt[a]{x}}$$
$${-\ln (-x)\times e^{ー\ln (-x)}=\ln\sqrt[a]{x}}$$ ← W関数に入れる
$${W(\underline{-\ln (-x)}\times e^{\underline{ー\ln (-x)}})=W(\ln\sqrt[a]{x})}$$ ← 定義(1)" $${W(xe^x)=x}$$
$${-\ln (-x)=W(\ln\sqrt[a]{x})}$$ $${\ln (-x)=-W(\ln\sqrt[a]{x})}$$
$${-x=e^{-W(\ln\sqrt[a]{x})}}$$
よって $${x=-e^{-W(\ln\sqrt[a]{x})}}$$
2)$${ax=b^x}$$
両辺$${\times \dfrac{b^{-x}\ln b}{a}}$$
$${\dfrac{b^{-x}\ln b}{a}ax=\dfrac{b^{-x}\ln b}{a}b^x}$$、 $${b^{-x}x\ln b=\dfrac{\ln b}{a}}$$、 $${e^{\ln{b^{-x}}}x\ln b=\dfrac{\ln b}{a}}$$
$${x\ln b\times e^{\ln{b^{-x}}}=\dfrac{\ln b}{a}}$$、 $${-x\ln b\times e^{-x\ln{b}}=-\dfrac{\ln b}{a}}$$ ← W関数に入れる
$${W(\underline{-x\ln b}\times e^{\underline{-x\ln{b}}})=W\Big(-\dfrac{\ln b}{a}\Big)}$$ ← 定義(1)" $${W(xe^x)=x}$$
$${-x\ln b=W\Big(-\dfrac{\ln b}{a}\Big)}$$
よって $${x=-\dfrac{W\Big(-\dfrac{\ln b}{a}\Big)}{\ln b}}$$