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Lagrange の未定乗数法

関数$${f(\{q_i\})}$$が停滞値を持つとき
 $${\delta f=\displaystyle\sum_{i=1}^n\dfrac{\partial{f}}{\partial q_i}\delta{q_i}=0}$$ (1) (ただし$${q_i}$$は互いに独立) 
任意の$${\delta{q_i}}$$について成り立つには
 $${\dfrac{\partial{f}}{\partial q_i}=0}$$  (2)
ところがもし変数$${q_i}$$が互いに独立でない(束縛条件がある)ときには
(2)は必ずしも成り立たない。(束縛条件は拘束条件ともいう)
m個の束縛条件を関数$${g_j(\{q_i\})}$$として定義する。
 $${g_j(\{q_i\})=0  (j=1,  …  ,m)}$$ ($${m<{n}}$$) (3)
m個の変数($${\lambda_j  (j=1,  …  ,m)}$$を用意し、(1)と(3)をあわせた関数$${F(\{q_i\})}$$を定義する。
 $${F(\{q_i\})=f(\{q_i\})-\displaystyle\sum_{j=1}^m\lambda_jg_j(\{q_i\})}$$ (4)
この関数$${F}$$が停滞値を持つ条件は(1)と同様
 $${\delta F=\displaystyle\sum_{i=1}^n\dfrac{\partial F}{\partial q_i}\delta q_1=\displaystyle\sum_{i=1}^n\Big(\dfrac{\partial f}{\partial q_i}-\displaystyle\sum_{j=1}^m\lambda_j\dfrac{\partial g_j}{\partial q_i}\Big)\delta q_i=0}$$
(2)と同様、任意の$${\delta{q_i}}$$について成り立つには
 $${\dfrac{\partial F}{\partial q_i}=\dfrac{\partial f}{\partial q_i}-\displaystyle\sum_{j=1}^m\lambda_j\dfrac{\partial g_j}{\partial q_i}=0}$$
求めた$${\lambda_j}$$を含んだ式を連立させ$${\lambda_j}$$を消去し、停滞値を持つ条件を得る。
ちなみに
 $${\dfrac{\partial F}{\partial\lambda_j}=0}$$ から得られるのは、元の拘束条件 $${g_j=0}$$ である。

以下に具体例を示す
束縛条件$${x+y-2=0}$$の下での$${f=x^2+y^2}$$の極値を求める。
 $${g=x+y-2}$$である
 $${F=f+\lambda g=x^2+y^3-\lambda(x+y-2)}$$とすると$${\delta F=0}$$のとき停滞値を持つ。
 $${\delta F=\dfrac{\partial F}{\partial x}\delta x+\dfrac{\partial F}{\partial y}\delta y=(2x-\lambda)\delta x+(2y-\lambda)\delta y=0}$$
任意の$${\delta x}$$、$${\delta y}$$について成り立つには
 $${2x-\lambda=0}$$、$${2y-\lambda=0}$$
$${\lambda}$$を消去すると $${x=y}$$
束縛条件$${x+y-2=0}$$に代入して
 $${(x,y)=(1,1)}$$のとき$${f=x^2+y^2=2}$$の極値を持つ。
束縛条件を満たす別の$${(x,y)=(2,0)}$$のとき、$${f(2,0)=4>2=f(1,1)}$$なので最小値である。

原点中心、半径√f の円が直線g=0と交わる時の半径の最小値

この問題は、束縛条件$${y=-x+2}$$を$${f=x^2+y^2}$$に代入し$${f}$$を含む2次方程式を作り、判別式=0 としても解ける。
 $${f=x^2+(-x+2)^2}$$  → $${2x^2-4x+(4-f)=0}$$
 $${D/4=(-2)^2-2(4-f)= … =2(f-2)=0}$$ よって$${f=2}$$
しかし、束縛条件が陰関数のときには$${f}$$に組み込むことは出来ない。そのときはこの未定乗数法が力を発揮する。
仮想仕事の原理やHamiltonの変分原理を使う場面で重宝する方法である。

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