【レビュー】GOGO PENGUIN /GOGO PENGUIN (2020.6.5 発売)
波の間を通り抜けながら、流暢に歩いているような音
時には大波、または細波。
どんな波も自分たちと共鳴させて、揺らいだ美しい音を生み出しているようだ。
音の抜き差しや音の流れが強く感じられる。
ダイナミズムも随所にあるが、それらは数十秒ほど長い時間をかけてじわじわと盛り上がっていくものだ。
これまでの作品よりも、余裕と威厳が感じられる。大人の余裕というべきか、セルフタイトルをつけるだけあって、一音一音に意志があるようである。
複雑に作り込まれた音構成と、それにも関わらずトリオの音のみで組み立てているところにこだわりを感じ、自分たちの美学が極限まで表れている。
とはいえ、自分たちの音楽を聴者に一方的に押し付けているようには全く感じられず、寧ろ、聴者への寄り添いを感じられて、懐の深さを感じる。
一聴して、「映画を見終わったような感覚」と感じるよりも、「その意図が体験者側に細部にまで丹念に伝わる、美しいインスタレーションを見終わったような感覚」と感じた。
そして彼らの音楽は、ジャス、ロック、ハウス、エレクトロニカといったジャンルを超えた、一つのアートジャンルとして捉えた方が良いのかもしれない。
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