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「僕の心のヤバイやつ」が余りにも心に突き刺さった件

久々に心を突き動かされたラブコメ

筆者は結構ラブコメを見る 最近だと「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」やら「トモちゃんは女の子!」やら「夫婦以上、恋人未満」やら、「その着せ替え人形は恋をする」やら、色々見てきた。
そのたびに
(いやなかなかええやん・・・)
(あぁ・・・こういうラブコメも新鮮でおもろいやん)
(いや何このインスタントとらドラ)
(いや雛人形に一人で話しかけてる男に話しかけねぇだろそっとドア閉めるだろ)
(いやエロゲやってて男の欲望知ってるはずなのになんで平気で男と部屋に二人っきりでスリーサイズ測らせんだよ)
こんな感じで心の中で後方彼氏面で褒めたり、突っ込みどころを指摘したりして楽しんできた。
そんな筆者が久々に後方彼氏面をやめ、前方オタク面で「素晴らし過ぎる・・・・」と涙を流さざるを得なかったアニメ それが「僕の心のヤバイやつ」通称「僕ヤバ」である。

導入

このアニメ、タイトルだけ見たら「厨二病患者の織り成すギャグアニメ」程度だと思うだろう。もしくは、この作品がラブコメで、ある程度の知識があったなら「中二恋」の逆バージョンかぁ・・・程度に思うかもしれない。というか私は少なくともそう思っていた。劣化「中二恋」程度なんだろうとそう思っていた。大した期待もしていなかった。
しかし実態は全然違ったのである。
この作品は「陰キャ」と括られる人と「陽キャ」と括られる人、そんな二人の心が少しずつ縮まっていく様を繊細に描いた、そんなとても美しくて「リアル」なラブコメである。

このアニメの良いところ

このアニメの良いところを一言で言おう
「エモい」
正直これで終わりである これ以上説明するとしたら「エモい」を因数分解することしか出来ない。ただひたすらにこのアニメはエモに特化している。個人的には「僕らはみんな河合荘」という作品にテイストは近いかなと思う。ところどころブレイクタイムとして笑いどころを挟みつつ、要所のエモで視聴者を一刀に伏す。その太刀筋が余りにも鮮やかなのが、この作品の素晴らしさだ。筆者はもうアニメ全12話を視聴し終えた時点で斬られ尽くしていたのだが、終わった後原作を即全巻購入し、読了後にはみじん切りになっていた。ハンバーグに入れてこねれるくらいの大きさである
「君もみじん切りになりたくないか?」
私ならこの作品の帯に書くキャッチコピーをこれにすると思う。
そんな「エモい」に特化した作品に対して、これ以上の表現をするのは無粋だとも思うのだが、それではその他の「エモい」と区別もつかないので、折角なのでなぜこんなに「エモい」のかの因数分解に挑戦したいと思う。

  • 人の「異常さ」の「リアル」さ

今作の主人公は少し異常な「陰キャ」、ヒロインは少し異常な「陽キャ」として描かれている。しかし、その異常さが、とてもちょうど良いのである。
「殺人鬼」や「狂気」を孕んだ本を好み、人と話せないコミュ障な陰キャの主人公
距離感がバグっていて、色んなお菓子がとてつもなく好きで、学校で食べる陽キャのヒロイン
そんなデフォルメされていて、ちょっとあり得ない二人の特性が
とても人間的で繊細な二人の心情を丁寧に描くことによって
(そのくらい変わった人もいるのかもしれない)
というリアルになってくるのだ
元来、人は1点か2点、変わった点を持っている生き物だ
私にも、自分の楽しそうな姿を見るのが好きで、ヒトカラを録画し自分で見るというクソ気持ち悪い趣味があったりする。
・・・まぁ私の例は少し気持ち悪すぎるのだが、そういう人に理解されないちょっと変わったところを持っていたりするのが本来のリアルな人間だ。

  • 「悪意」による「リアル」の描き方

先ほども軽く触れたがこの作品に登場してくる人々は基本的にキャラ付けがデフォルメされてわかりやすくなっている(まぁエンタメとして当たり前なんだけど)「ギャル」はより言動が「ギャル」っぽいし、友達の「男子中学生」はより言動が「男子中学生」っぽい。そして、この作品に出てくる人達の直接的な悪意はあまり登場してこない 「人を貶めたい」という感情はかなり一般的な感情だし、それらを描いてエグみを演出し、リアリティを生み出す作品も多いが、本作ではそれら「現実的な悪意」はあまり登場してこない。そういう意味でもデフォルメされているわけだ。これでは作品にリアリティが欠如してしまう。そんな中でこの作品にリアリティを与えているのは、実際には存在しない悪意、「空想的な悪意」だ。
この人に馬鹿にされているかもしれない。今の発言で嫌われているかもしれない。何気ない一言で人は憶測したり、傷ついたり、落ち込んだりする。
そういった感情のすれ違いや思い込み、それによる「空想的な悪意」が作品をよりリアルにし、二人の感情の発展により説得力を与えるのだ。

  • みーんな「良い子」

これは上記「悪意が登場しない」に関係することのなのだが、全員「良い子」なのだ。
みんな誰かをちゃんと思いやって考えて、行動ができる。ちゃんと出てくる人たちみんなを「好きになれる」ように作られている。ずっとヒロインである杏奈をナンパし続ける先輩もいるが、最終的にはちゃんとその先輩も好きになれるように描かれている。
私は明確に「嫌われ役」がいるような作品も嫌いではない。そういったエグみのスパイスも面白いと思う。(パッと思いつく有名な作品だと「五等分の花嫁」の一花等が近いかもしれない)ただそれは、ひたすらに涙を流しながら「良い・・・」と言うには少し邪魔なものなのなのかな、と個人的に思った。良い子たちの葛藤と思ってる気持ちを前面に出すことが、エモのすべてなのかもしれないと思った。

まとめ

軽く無粋な因数分解を行ったが、こういったエモ作品は「1話を見る」これが一番早い。かの将軍徳川家光公も「いや1話見りゃ良いじゃん 合わなきゃそっから見なきゃ良くね?」と言っている。ちなみに筆者はこのアニメを1話ずつ4回くらい見返している。一話24分程度なので、24×12×4で1152分くらい、大体20時間このアニメに費やしたことになる。カップ麺が400個できるし、スプラトゥーンだったらバンカラマッチに潜れるようになるくらいの時間だ。
しかしその価値は間違いなくあった。この20時間自分はずっと幸せだったからである。人生に疲れ、エモを供給したい迷える子羊は皆、このアニメから栄養分を補給してほしい。 円盤の1巻も発売中なので是非検討いただきたい。



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