いらすとやのランダムボタンで出た素材をつなげて新しい物語を紡ぐ。
ご存じじゃない方の方が少ないかもしれないですがご存じでしょうか。
可愛らしくそれでいて場所を選ばない汎用性を持つ
最強のフリー素材サイト「いらすとや」。
あらゆるイベントを網羅し、時にはエキセントリックな飛び道具も用意されているいらすとやですが、素材ページにはそれぞれあるボタンが設置されています。
それがランダムボタンです。
このボタンを押すことで無数に存在するいらすとやの素材ページのいずれかにジャンプできるのです。
数えきれない選択肢…
予想不可能な展開…
オールジャンル…
ランダムに出てくる素材を元に話を作れば
ジャンルを超越した未知のストーリーを作り出すことができるのでは!?
というわけでいらすとやのランダムボタンを押して出てきた素材で物語を作っていきます。上の人物素材は「小説」で検索したら候補の中央に鎮座していた「ラヴクラフトの似顔絵イラスト」です。縁起でもねえ。
なお、以下の内容をルールとして設定します。
スタートページは適当な画像からランダムジャンプした素材にすること。
スタート地点になる画像ページから数えて15枚の素材を使うこと。
素材はランダムで出た順番通りに使用し、その全てを使い切ること。
ひとつの素材に使う文字数は100字以上140字以内に収めること。
1のように開始するページもランダムに決定します。
2は枚数制限、いらすとやはフリー素材を配布していますが一作品の中で
使える枚数は20枚までと定められているので数を限定しました。
3は素材を都合よく入れ替えることも、要らない手札を捨てることも
許しません。運命を全うしましょう。
4は文字制限です。1素材で書ける内容が限られ、いい感じの素材だけで
文字数を稼ぐような真似は出来ません。
完璧なレギュレーションです。Xの感覚でつらつらと書いていけば
稀代の小説家になれてしまいますね。
それでは連続いらすとや小説を執筆開始です。
最後に開いていたのがラブクラフト先生なので
ここからスタートを決定します。頼むからまともなの来てくれ。
いらすとや連続小説
俺は戸棚の中を乱暴にかきわける。埃をかぶった鍋をどかし、不愉快な酸の匂いを纏ったワインボトルに手を伸ばした。コルクはとうに劣化し求める姿ではなくなっていると、頭ではわかっているのに強引にそれをあおり、酷くむせた。──どうしてこうなってしまったんだ。
全てはあの日から始まった。(137)
「いげぇー!根絶やしだぁーー!!」
板召国(いためしのくに)領主官邸に押し寄せる人の波。圧制に苦しむ農民達の怒りが頂点に達した1689年、俺はそこにいた。老鶏のように細くみすぼらしい四肢から想像もつかない力強い進攻。その手の農具を貴族の血で染めんと憎き領主の下へ走り続けていた。(138)
本丸への入り口が見えたが、何か様子がおかしい。逸る若い衆が敷居を前にして立ち止まっている。何事かともう一人が駆け寄るとそいつも並んで止まった。俺は立て看板を見た。【くつをそろえてね】「皆止まれッ!スタンド攻撃だァーッ!!」後続に叫ぶも報復の熱狂に溺れる農民達に届かない。(135)
一人また一人と足を止め、入口に人垣を形成していく。このままでは完全封鎖も時間の問題。万事休すかと思われたそのときピザハットからの通知が閃きを与えた。出前館だ!出前館だけは領主も拒めまい!出前館は玄関から先に入らず、されどピザを送り込む断絶と通過のトランスポーターだ。(133)
入口の作法をすり抜け侵入に成功するも残る手勢は俺と出前館と草鞋売りの大作だけだった。「鼠が罠を潜り抜けたようだね。」髪を片側に流し不敵に笑う男が音もなく現れた。「楽になれる最後のチャンスだったのに。」男に向かい大作が鍬を向けた瞬間、大作の首から鮮血が噴き出した。(131)
足元に落ちた鍬の刃先は砕けて散り、首を抑えるも溢れる血は止まらない。「気をつけろ…奴は…飛び道具を…」最期の言葉を吐き出し、大作は倒れた。こいつは危険だ。男が嘲るような笑みを浮かべた瞬間、指先から鈍く光る無数の何かが弾ける。硬貨だ…急所を狙った硬貨がピザに突き刺さる。(134)
防戦一方、反撃のチャンスは何処に…?迷う俺より先に出前館が動いた。銃撃を避けようともせず相棒の犬の首の樽を外し、投げた。樽は砕け散るも琥珀色の液体が溢れ男の顔を濡らす。「ブランデーだ!よく味わいな!」壁の燭台を投げつけると男は勢いよく燃え上がった。多大な犠牲を払い刺客を仕留めた。(140)
出前館の傷は深い、これはもう…俺は一人最奥へ向かい、部屋の中央で立っている憎き領主その人と対面した。「ごきげん農!奴!」花王のごきげんようのリズムで吐き捨てる。「お前ひとりで何ができる清き一票よ!真実を知らぬ農民が!」真実?この怒りこそが真実だと殴りかかるもその姿が消えた。(137)
瞬間背後から強烈な衝撃が降り注いだ。辛うじて見えたのはマイクを握る大熊。これが領主の正体か。「私だけではない。貴様の友も、家族も、皆この姿だ。お前だけなのだ人間は。」何を言っている。「自分の力だけでたどり着いたと思うか。全てはこの瞬間のため。」部屋の奥の扉が輝き、開かれた。(137)
「えぇ~ここまで辿り着くの~!すごぉ~い!」扉の先にあったのはクリスタル煌めくガールズバーであった。席に導かれ両脇の嬢が手を合わせ俺のこれまでを褒めちぎる。不自然で不気味で不条理な今の状況より、それを受け入れ心地よい己に驚いた。「サービスタイムです!」領主熊は高らかに宣言した。(139)
体操着に着替えさせられたあと場内の嬢が総出で俺という橋をくぐる。かつてない快感に自我が溶けていくのを感じながら目に入ったのは床に落ちたLピザ。出前館の形見だ。そうだ、こうしてはおれない。俺は引き継いだ…領主の首を農民の墓標に添えるために!俺はドンペリを構え、熊の肛門に突き立てた!(140)
熊…領主はドンペリの炭酸で膨張し腐臭をまき散らしながら爆発した。これで終わったんだな…だが勝利の余韻に浸る間もなく官邸は揺れだし、壁に亀裂が走った。領主は死してなお俺に牙を剥こうというのか。必死で逃れた先は鍾乳洞。この水路は外まで繋がっているはずだ。小舟で光指す方へと向かう。(138)
──そして1998年俺は某所の老人ホームで目覚めた。全て思い出したのほうが正しいか。領主の怪しいガールズバー接待により俺は不老不死になってしまっていた。奴は言った、真実と。あの館で起きた一揆の真の目的は選別の儀式だったのではないか?そう思えてならないのだ。皆の決死の戦いも全て…。(140)
寝たきりからのリハビリを終わらせた俺は独りあてもなく彷徨っていた。知っている者は何処にもいない。戦いで死ねなかった俺が、どう生きろというのか。ある日ラ・ムーで訳あり傷野菜を発見する。不揃いなトマト、その生産者の苗字には見覚えがあった。出前館。数百年後の未来にも奴の血は生きている!(140)
出前館の農家に辿り着いた俺を待っていたのはレディースチームの洗礼だった。とっくに畑は他人の手に渡り、経営していたリストランテは不良娘達の溜まり場にされていた。不死身のタフネスにビビって逃げた若者達を一瞥した後、俺は厨房の戸棚を漁る。遅すぎた勝利の美酒をせめて君と分かち合うために。(140)(完)
いかがだったでしょうか。
これで15枚の素材によるいらすとや小説の完成です。
いらすとやの時と場所を選ばない幅の広さのせいで時と場所がぐらぐらと落ち着かないですが、風邪を引いたときの夢ってそういう継ぎ接ぎな展開で進んでいきがちなので大丈夫かもしれません。
もしよかったら同じレギュレーションの中で他の人の小説も見てみたいですね。
それでは後1枚の素材を使えるのでお別れの挨拶とさせていただきます。
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