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ポリコレは労働者階級を分断する陰謀である
以前、アイデンティティポリティクスについての私見をざっと述べた。
このアイデンティティポリティクスは、人種別の入学試験(アファーマティブアクション)、議員のクォータ制、フェミニズムなどが該当する。
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私が家父長制の打破に同情的であることを隠すつもりはないし、SNSで伸長するアンチフェミニズムに共感する点は一切ない。
しかし、搾取家階級の「左翼は労働者の味方を放棄して、LGBTsみたいな問題にばかり腐心していますよ~」という甘言に共感する労働者階級には合理的な理由がある。つまり、マイノリティポリティクスは、労働者階級というアイデンティティの拒絶の上に成立しているからだ。
われわれは日本人ではない。労働者階級である。われわれは竹中平蔵や豊田章男よりも、中国やアメリカの労働者のほうに多く共通点を持つのだ。
われわれの敵は白人でも、異性でも、外国でもない。資本家である。
例えば、女性の家父長制の解放を旗印に女性も営業に邁進するようになり、結果的にその競争の結果資本家が富むなら逆効果である。女性は家父長制だけでなく、産業の寄生虫からも解放されなければならないのだ。
産業の寄生虫の被害者は女性だけにとどまらない。性的マイノリティや少数民族もそうである。この資本主義下に生きる限り、搾取から逃れれば食い扶持を遮断されるのだ。
議会を通じた漸進的な改良主義では、クォータ制やアファーマティブアクション枠のような対処療法であり、永遠に治らないだろう。
なぜなら家父長制やホモフォビアは個々人の病理ではなく、資本主義の病理だからだ。かつての村落共同体を奪って工業化と都市化を重ねた結果、相互扶助は忘れさせられ、貧富によって上下を規定するようになった。これを直すには、駆虫薬を飲み下すほかない。
寄生虫のシンパが議席を独占する議会ではなく、地下組織化と指揮系統の確立された武装化こそ、労働者階級が生産手段と祖国の全権利を奪還する唯一の方法なのである。
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マルクスは『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』でこの職業はルンペンプロレタリアートに陥りやすいと指弾した。
しかし蓋を開けてみれば、プロレタリア階級そのものがもともとは保守的だったのである。自分は就職当時すぐ残業せず帰宅したいと思っていたが、10年も働けば残業しない新入社員を疎ましく思うようになる人間が多かったのだ。
そして新聞社やテレビ局も、主な顧客である資本家階級のためになる報道に時間を割き、それ以外の番組では労働者階級も搾取家階級も関係なく『日本人』が楽しめることを予期して番組を作った。決してこの世の全てを作り上げた労働者階級のためだけの番組ではない。
この2つの状況により、労働者階級という唯一真実のアイデンティティは崩れ去り、『日本人』なるもののほかは女性とか、そういう小さいアイデンティティに固執するようになった。
そこがまさに資本家階級の狙いである。男が女を、女が男を敵視することで、彼ら共通にして真の敵、寄生虫に見向きもしないのだ。
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YouTubeなどSNSでの左翼の敗北が語られてきて久しい。しかしわれわれ労働者階級はすでに敗北した結果を突き進んできただけだ。つまり、労働者階級という勢力は、もうないのである。そしてすっかり労働者階級というアイデンティティの零落した結果、ではわれわれの姿とは女性ではないか?男ではないか?という意識だけが浮いてきたのだ。
例えアナルコ社会主義体制であれ、労働者階級というアイデンティティの揺るがない、労働者階級のためだけのイデオロギーを持ったアジテータが世論を指揮する必要がある。そうしなければ、労働者階級は自らの真の姿を見つけられず、真の自由を手に入れることはできない。
我々大卒の社会主義者はヘゲモニーを握ることに腐心すべきなのである。そうすれば、労働者階級が寄生虫の人ならざる猿知恵に耳を傾ける必要もなくなるのだ。寄生虫の搾取の弁明など聞くに値しない。資本家の聞くに値する発言は断末魔だけだ。