#毎週ショートショートnote 【鋭利なチクワ】
「チクワの穴にチクワを入れたいだと?」
商品開発部に配属された新人の提案に部長は聞き返した。
「厳密に言いますと、すり身で鉛筆の芯のような棒を成型しまして先端を鋭利にとがらせて、おまけとして付けます」「何のために?」
「チクワの穴にそれを突っ込むんですよ」「だから、何のために?」
「穴があったら埋めたいでしょ?部長も」「わ、わからんでもないが、買うのは主婦だぞ?」「そうです。主婦も埋めたいはずです。棒はちくわより少し長くして下さい。穴に根元まできっちり埋め込んで、飛び出た先端は包丁で切り落としてもらいます」「何のために?」「つまみ食いのためですよ」「妻だけに?」「さすが部長、お上手です」
新人におだてられ新商品が開発されて売れ行きは倍増だそうだ。
【鋭利なチクワの穴埋め棒】は何故ウケる? 穴埋めに苦心惨憺した暁に与えられる達成感とご褒美の小さな幸せが待っているから。
貴方も挑戦してみます? 結構ですって? 充分幸せな人ですね。
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