毎週ショートショートnote【逢いたい菜】
「なんて素敵な色なんだ」
モンシロチョウがモンキチョウに恋をした。追いかけていった先は、シロツメ草がグランドカバーになっている邸宅の庭。そこには、たくさんのモンキチョウが舞っていた。
「よそ者が来たぜ」
モンシロチョウはいっせいに取り囲まれた。
「何しに来た」
「君達の羽の色が素敵だから恋しちゃった」
「気持ち悪いやつ」「よく言われる」
「あなた、もしかしてゲイなの?」
「どっちもOKだけど、それが何か?」
「あんた、私達に恋しても子孫は残せないよ?」
「そんなことは知ってる。そもそも種が違うからね」
「それなら、ここで遊んでてもいいぞ」
ボスにお墨付きをもらったモンシロチョウは、しばしモンキチョウ達の舞を一緒に舞いながらうっとりと眺めていたが、どうにもお腹がすいてきた。シロツメ草の花の蜜は口に合わない。体力があるうちに帰ることにした。
「あたいに逢いたくなったら、向こうのキャベツ畑に来てよ」
「わかった。そのうちにな」
モンキチョウの世界では、農薬だらけのキャベツ畑が立ち入り禁止なのをモンシロチョウはまだ知らない。モンシロチョウの世界でも、もうすぐ禁止令が出るらしい。除草剤がまかれたシロツメ草には近づくなと。
種の保存努力は、人知れず続いている。
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