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毎週ショートショートnote【ときめきビザ】
子供のいない老夫婦が、私達をときめかしてくれた人に積み上げてきた財産を無償で譲ろうと決めて早30年。夫はすでに旅立ち、妻はまだ現れない誰かを待っていた。
〈宇宙へのビザを1万円で販売中。このビザで、UFOにさらわれても地球に戻されることなく宇宙を永遠に旅することが出来ます〉
(まじかよ!)
オレは、海岸線の岩場に立つ鳥居の札の色あせた文字を読み解くと賽銭箱に躊躇なく渋沢栄一を入れ、その横に置いてあったサビ付いた金属の板を手に取って鳥居の空を見上げて拝んだ。すると突然けたたましい音がして黒服の男が現れ、連れ去られた。
「本当にときめいて待ったわ。まさか1万円を入れる人が現れるなんて、あなたも好きねぇ。私の夫も宇宙人が人類を作った神だと信じてたのよ」
「じゃあ、このビザは偽物ですか?」「決まってるじゃない。でもあなたのときめきは本物だったでしょ? 私もよ。これで思い残すことなく夫の元へ旅立てるわ」
莫大な財産を相続したオレは俗世間にまみれてその財産を増やしてしまい、ときめきを失った。今、鳥居の再建立を考えている。
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